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花梨の作戦と2つの夢

今回は前回の有香里に対抗して花梨が春馬を意識させようと画策します。そして花梨の"2つ"の夢とは……


私、仲川花梨は春馬に歴史の授業をしていた。


「ナポレオンが制裁の為に遠征した場所は?」


「ロシア」


「正解!春馬もようやく覚えたようね」


「はい」


「まぁ、今日は復習だけにしといてあげるわ」


春馬は机に突っ伏している


やはり歴史は苦手のようだ


(そろそろ作戦を決行しましょうか)


花梨は怪しい笑みを浮かべていた




俺、上条春馬は机に突っ伏していた


(やっぱり歴史は頭が痛くなる)


特に俺は数学、理科、歴史が苦手なのだ


「これくらいで疲れてたら三学期の授業、ついていけないわよ」


「ですよね〜」


俺は力なく言う


「これでもゆっくり教えてる方なんだからね」


花梨が突っ伏している俺の背中に乗ってくる


(ち、ちょ何か柔らかい物を感じるぞ)


そう俺の背中には確かに柔らかい丸みが2つ乗っかっていた。


(花梨のやつ気づいてねぇのか?)


俺は目線を上げて花梨の顔を見るとニヤニヤと笑っている


(わざとなのか?)


そうこれこそが花梨の作戦だったのだ




(どうどう、効いてるかしら?)


流石にここまでしたら春馬も私を意識してくれるはず


まぁ、かなり恥ずかしいけど


「三学期も私が教えてあげるから頑張りなさい」


「はい……分かりました」


「よろしい」


私は立ち上がる


すると春馬も突っ伏すのをやめてこちらを向く


私も振り向く


その時だった


スリン


私の足が有香里から借りたであろう漫画を踏んで滑る


「へ、わあ」 


そのまま私は春馬の方へとこける


そして私が春馬を押し倒すような姿勢になっていた


すぐ目の前には春馬の顔がある


ドキドキ


今までに感じたことの無いくらい胸の鼓動が早い


私は無意識的に顔を春馬に近づけていく


まるでキスをするかのように



「ちょ、ちょおい!」


春馬が起き上がって私は座り込む


(い、今私何をしようとしたの)


自分でも訳が分からなくなっていた


「そ、それじゃまたあとで」


私はそそくさと立ち上がるとテンパったまま部屋を出た



(私、今春馬とキスを……)


私はブンブンと顔を振る


(ダメ、昨日有香里と話してからなんか変になってる)


(でも……何とかして春馬を振り向かせてみせる!)



お昼ご飯を終えて俺は有香里にオススメされた「カッコウの子供たち」と言う漫画を読んでいた。


何と言うか今の俺と状況が似ている気がする。


内容自体は結婚相手、すなわち"許嫁"を決められた主人公とメインヒロイン+主人公の兄弟だが実際は血縁関係の無かった3人によるラブコメだ。


実際俺も父さんにここに居候させられて、家庭教師と言う名の"許嫁"を決められた訳だ。


しかも四人


さらに一人からは告白みたいことされたし


(もし私が、春馬さんの事が好きだって言ったら付き合ってくれまふか?)


「ふわああ」


頭にあの日の有香里の言葉が浮かぶ


あの日以来、有香里を何故か意識している自分が居た。


コンコン


ドアがノックされる


「紗月です、これから皆で買い物に行くんですけど……春馬さんも来ますか?」


紗月がゆっくりで、なおかつ静かな声で言う


「あぁ、行く」


「本当!?」


「あぁ」


「下で待ってるね」 


こうして俺達はお出かけする事になった



『本当もご利用下さいまして誠にありがとうございます、次は平野です』


ガタンゴトンとマルーン色の車両に揺られながら、俺と四人は並んで座っていた。ちなみにおじさんは反対側に座っている。


四人は何やらスマホを見て盛り上がっている


俺は周りを見渡す。


車内の壁はかなり色褪せている。端には製造時期が書いてあり、昭和と言う文字が年代物の車両である事を表している。


そんなこんな俺達は終点まで揺られていた。



「おぉ変わったなぁ」


春馬が周りを見渡して声を出す


私、仲川花梨はそんな春馬の様子を見ていた


「ここって大きな時計なかったか?」


「あったわ。だけど老朽化で撤去されたってお父さんが言ってたわよ」


私はスラスラと答える


「でも、中の鳥は残されたようね」


「そうだな」


ここには元々木をモチーフとしたからくり時計があった。時間になると木から鳥が現れて、歌を奏でるという物だ。


そしてこの時計はドラゴンランドで春馬と遊んだあの日、一緒に見たものだった。


(春馬、何か思い出すかしら)


それから私達は色んな店を回った。


本屋や服屋に雑貨屋など色んな店を全員で見ていると、気付けば日が暮れていて、夕飯を食べることになった。


ただこれこそが私の狙いだった。


夕飯は隣の商業施設のイタリアンの店になった。


そして、私と春馬とお父さんがミートソース、有香里がカルボナーラ、多緖はペンネとドリアと多緖らしくかなりの量を頼んでいた。さらに意外にも紗月はペペロンチーノを頼んでいた。


それから10分くらいで料理が来た


「「「いただきます」」」


みんな一斉に食べていく。


「う、辛い」


紗月がペペロンチーノを食べて涙目になっている。


「そりゃそうでしょ、ペペロンチーノだもの」


私は肩をすくめる。


途端に周りから笑いが起こる。


夕飯の時間はあっという間に過ぎていった。



「「「ごちそうさまでした」」」


手を合わせた後、私は春馬を見る。


すると口の周りにミートソースが付いていた。


私は自分の手元にあったお手拭きを取ると立ち上がる。


「春馬、口汚れてるわよ」


私は春馬の口元をお手拭きで拭く。


(作戦通り)


これはさすがの春馬でも意識せざるを得ないだろう。


「ちょ花梨、自分でやるから」


私は無視して拭く。


春馬は恥ずかしそうにしている。


(あとはこれでどれくらい意識してくれるか、ね)


店を出ると、私達は再び電車に乗るため駅に来ていた。


「ふわーあ」


春馬がからあくびをする。


駅に来る直前から春馬はかなりからあくびをしていた。


「大丈夫?」


紗月が心配そうに聞く。


「大丈夫大丈夫」


春馬はいつものように言った。




『まもなく四番線から電車が発車します、ドアにご注意ください』


この市をモチーフにした曲の発車メロディーが流れてドアが閉まる。


すると電車は夜の街に向けて走り出す。


「そう言えば、花梨って将来の夢とかってあるのか?」


「え、なんで?」


私は思わず聞き返す。


「いや、行きにそんな話してたなって」


「うーん、まぁ一つだけあるとしたら他の三人と一緒に先生になる事かな」


これは半分本心であり、半分嘘だった。


それから直ぐに肩がずっしりと重くなる。


「ちょ、春馬」


私は言葉を途中で止める。


春馬はぐっすりと寝ていた


ドキドキドキ


今までの中で一番鼓動が早い


(ま、いっか)


好きな人に肩を貸すというこちらからすれば嬉しい体験なのだ。


私は最寄り駅までドキドキしながら、なおかつ皆に悟られないように乗っていた



そして家に着いて、春馬がしんどいと言うので熱を測ると、37度の微熱があった



お風呂から上がった私は春馬の部屋に行く。


「入るわよ」


私はドアを開ける


春馬は寝ているようだった


私は春馬の隣に腰掛ける


「春馬、電車の中で将来の夢、聞いたわよね」


私はひとりごとのように言う


「あの時、一つ嘘をついたの」


「一つって言ったけど、本当はもう一つあるの」


「お医者さんになりたい」


「まぁ、私なんかで務まるのか分からないけど」


「でも私と……私の家庭教師の生徒であり、私の好きな人みたいに病気で親を亡くして悲しむ子を少なくしたい」


「他の三人には言えてないけど」


「でも一番大切なのはあなたをちゃんと卒業させる事よね」


私はそおっと春馬の頰に自分の唇を重ねる


「好きよ」


しばらく私と春馬だけの部屋に沈黙が落ちる


沈黙を破るように私は立ち上がるとドアに向かって歩き出す


「早く直しなさいよ」


私は部屋を出る


すると階段を誰かが降りる音がした


(聞かれた!?)


(だ、大丈夫よね)


私は言い聞かせて階段に向かった



最後までお読み頂きありがとうございます

今回は花梨を主題に書いてみました。

有香里とは違う形での告白になった花梨ですがはてさて春馬にその気持ちが届いたのでしょうか?

そして投稿間隔が空いてしまいすみませんでした

と言うのも、先週の金曜日、土曜日と東京に旅行に行っていたりとドタバタしていたので、なかなか小説に打ち込める時間が取れていませんでした。これからはドリームアナザーワールドと交互に更新予定です。あと今回の旅行で四つ子と旅行の話を書いても良いのかな?と思ってたりします。

では次回お楽しみに!

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