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有香里との1日

今回は有香里がついに……

俺はいつものようにおじさんに頼まれた買い出しを終えて居候している家に帰ってきた。


「ただいま」


「おかえりなさい春馬さん」


居間から有香里だけが返事をしてくれる。


「あれ?他の皆は」


「他の皆なら花梨は友達に誘われたって言って出かけていきましたし、紗月は気になる本があるとかで図書館に……多緖は用事があるからとどっかに行っちゃいました」


今日までは家庭教師は休みだとは聞いていたがまさか有香里以外誰も居ないとは


「おじさんは?」


「さっき自治会長さんが来て何か手伝に行くって言って……」


まさかおじさんまでもが居らず、完全に有香里と二人きりのようだ。


「教えてくれてありがとな。俺はこれだけ冷蔵庫に入れたら、部屋に戻るが……」


「分かりました!」


有香里はいつものように元気よく返事をする


俺は直進して台所に行くと冷蔵庫に買ってきた物を入れて、部屋に戻った


~2時間後~


俺は部屋の時計を見る


13時


ぐぅ〜


お腹もなる。俺は取り敢えず有香里に聞こうと部屋を出た



私、仲川有香里は居間でテレビを見ていた。


「有香里お昼どうする?」


廊下から春馬さんが聞いてくる


「良かったら私作りましょうか?」


「大丈夫か?料理対決した時はかなり酷かったが……(詳しくは10話をご参照下さいby春馬)」


私はむすぅと膨れると


「子ども扱いしないでください!軽い料理くらいなら出来ますぅ」


「そうか、悪い悪い。なら頼む」


「ほいきたー!」


私は勢い良く立ち上がると居間を出た。


「よしーやるぞー」


私は部屋から取ってきたエプロンを付けて気合いを入れる。


このエプロンはお母さんが私達にって手作りしてくれた物で四人それぞれ、色とかが少し違うのをお揃いで持っている。


「えーと」


私は冷蔵庫を開けてみる


午前中に春馬さんが買い物に行ってくれていたので基本何でもあった。


その中でも奥に中華麺が2食分余っていることに気付いた。


「よし」


私はメニューを焼きそばに決めると冷蔵庫から材料を出す。


ザクザク


野菜を手際良く切っていく。


(なんか、ドキドキするな)


(好き人の為に料理するのって)


私は心の中で思いながら下準備をしていく。


野菜を切り終わったらフライパンを出してコンロに乗せる。


そして振り返った時だった。


がちゃん!


と大きな音が鳴る


「いった〜」


背が低い私はフライパンに手を当てたのだ。


フライパンは揺れるだけで落ちることは無かった。

(母の実話)


やはり背が低いとこう言う事も起きてしまう


私は四人の中で一番背が低い


だけど私は仕方がないと割り切っていた


じゃあーと音を立ててお肉を炒める。ある程度お肉に日が通ったら、野菜を入れてまた炒める


少しづついい匂いがしてくる


私は中華麺を開けてフライパンに入れるとウスターソースやしょうゆ等々を入れて味付けする


この味付け自体は花梨に教えてもらったものだ。


と言うのも以前の料理対決の後、私は花梨に料理を教えてもらったのだ。


(私の作った料理を春馬さんに食べてもらうために)


私は小柄な体ながらにフライパンを振って炒める


「完成ー!」


フライパンには美味しそうな焼きそばが出来ていた


「でも、なんか物足りないような」


ピコン!


私は閃いて冷蔵庫を見る。


冷蔵庫の端に未開封の卵があった。


「よし」


卵を取り出した私は別なフライパンに油を引いて、卵を落とす。


慎重に卵を広げながら、火の通ったタイミングで火を消す。


このタイミングこそ、覚えるのが一番大変だった事だった。


花梨と何度も作り直しては焦がすのを繰り返してやっと出来るようになったのだ。


私は焼きそばをさらに乗せて、さらに上から薄焼き卵をかける。


「オムソバの完成ー!」


私はもう一つ卵を焼いて、自分の分も作ると私は春馬さんを呼んだ。



「おー凄く美味しそうだな」


俺は有香里の作ったオムソバを見ながら言う


「やったー」


有香里が嬉しそうにこちらを見ている


俺は食卓に座る


「「いただきます」」


二人同時に食べ始めた


「うまい」


「やったー!」


有香里がさっきよりもさらに嬉しそうに、それでいて少し照れくさそうにこちらを見ている


俺は食べながら思う。


有香里の料理はあの料理対決の時から見違えるように上手くなった。


あの時は破れかぶれで少し焦げていた薄焼き卵も黄色の綺麗な卵に出来ている


焼きそば自身の味も少し懐かしいような甘みのある味だった。


「「ごちそうさまでした」」


結局15分足らずで食べてしまった


俺は皿を持つと既に洗い物を始めている有香里の方に持っていく。


「洗い物大丈夫か?」


「大丈夫ぶって」


「あ」「あっ」


その時俺の肩と振り返った有香里の肩が触れ合う


「た、食べ終わった皿だ」


「う、うん」


有香里の顔がほんのり赤い


そしてなぜだかドキドキしている自分も居た。


「じゃあ部屋戻ってるな」


「はーい」


俺は部屋へと戻っていた。



あれから俺は紗月から借りたラノベを読んで頂いた。


生徒会でハーレムを作ると言うとんでもない話だが、全員キャラが濃くて絶妙に面白い。


するとトントンとノックされて、襖が開く。


「春馬さん、ずっと部屋にいるのもあれですから、散歩でも……行きませんか?」


「おう、そうするか」


俺と有香里は玄関で靴に履き替えると家を出た。



「何処に行くんだ?」


「内緒です」


俺達は坂道をひたすら登っていた。


二車線の道路だが道路の両脇はほとんど一軒家で埋まっていて、偶に工事中の家や廃棄となった一軒家があるくらいで車通りもそれほど多くない道だ。


坂道をかなり登った所で交差点に出た。


俺は信号街をしながら周りを見る。


左側はカーブがかった下り坂で右手はひたすら上り坂が見える。


すると下から若いカップルらしき人が登ってくる。


その人達は俺達の後で立ち止まった。


「前の2人兄弟かな?」


「あぁ、たぶんお兄ちゃんと散歩でもしてんだろ」


有香里が何かを考えるように俯く。


すると信号が青になる。


俺達は横断歩道を渡りさらに平坦になった道を歩いていく。


ちなみに若いカップルらしき人は途中の角を曲がっていった。



あれから何度か角を曲がった所で有香里が立ち止まった。


「ここ見て」


有香里が道の横を指さす。


俺は振り向く


そこにはのどかな田園風景とほぼ真下には線路が見えていて、さらに端には小さい駅も見える。


さらに奥にはニュータウンも少し見えている。


「景色いいなぁ」


「でしょ。だから私、偶にここに来るの」


「へぇ」


有香里の良く来る場所だと知った俺はまじまじと景色を見る。


「ちょっと話聞いてくれる?」


「おう」


有香里の話って何だろう? 俺は有香里の方を向きながら思う。


「私ってさ、四人の中で一番背が低いじゃん」


「まあな」


確かに有香里は四人の中で一番背が低くて、俺とは頭一個分くらい差がある。


「だからさ、花梨とかと二人だけで出かけたら毎回、私が妹だって勘違いされて」


「高校生になってからも勘違いされて、毎回"もう子どもじゃないのに"って思うの」


俺は何も言わずに聞いている。


「今日春馬も、料理大丈夫か? とか洗い物大丈夫か?とか聞いてきて、なんだか"子ども扱い"してるなって思って」


「すまん。ついな」


俺は有香里に謝る。


「だから」


有香里が一息吸うと、こちらに近づいて来て背伸びする。


「私を子ども扱いした罰でふ」


「なっ」


有香里の唇が俺の頰に触れ合う。


それはまさしくキスだった。


そんな俺達を照らすように木々の隙間から夕日が差し込んでくる


有香里はゆっくりと俺なら離れるとこちらを見る


「もし私が、春馬さんの事が好きだって言ったら付き合ってくれまふか?」


それは告白とも言える言葉だった


有香里はそれが冗談なのか本気なのか分からない、そんな目でこちらを見ている


今までに無いくらいに鼓動が早い


そんな俺達を尻目にガタンゴトンガタンゴトンと線路を4両の"マルーン色"の車両がローカル線らしくゆっくりと走り抜けていく。


「え、えーと」


俺が返事に困っていると


「ふっ」


有香里が不意に笑う


「嘘、冗談だよ」


「冗談か」


俺はほっと一息する


「でも、春馬さん今ドキッとしたでしょ」


有香里がいつもの小悪魔な目でこちらを見ている


「ああそうだよ」


俺は熱い顔で有香里を見る


(まさか有香里にからかわれるとは)


どこかの中学生二人のように俺はからかい上手な有香里にからかわれ見事に負けた。


(帰ったら腕立て伏せするか)


俺がそんな事を考えていると


「まぁ、好きなのは冗談じゃ……ないんでふけど」


有香里が何かを呟いたように見えた


「有香里、何か言ったか?」


「!?」


「な、なにも言ってないでふよ」


「春馬さん行きますよ」


有香里が照れを隠すように早足で歩き出す


「ちょっと待てよ」


俺は有香里を追いかけた


そんな二人を夕日がスポットライトのようにオレンジ色に照らしていた



トコトコ



二人の足音が少しズレて聞こえている 


俺は有香里の方を見れないでいた


(有香里のやつさっき……『もし私が、春馬さんの事が好きだって言ったら』って)


(でも、冗談って言ってたし)


そう言い聞かせても何故か意識してしまう自分が居た


(ちょっと待てよ)


(もしかしたら、これから何処かの五つ子みたいに全員、つまり花梨や紗月、多緖からも告白されるなんて事も……)


(まぁされたらされたでその時考えよう)


そう言い聞かせて俺は顔を上げる。


すると最初に渡った二車線道路が見えていた


俺と有香里は夕日とは反対に歩いていた



ザバっ


私は掛け湯をして湯船に入る


私は壁側に寄っかかるようにして湯船に浸かって、天井を見上げる


「はぁ。私てば、思い切ったなぁ」


(でも、これで良かったんだよね。一応思いを言えたし)


(まぁ、最後恥ずかしくなってはぐらかしちゃったけど)


「何をぶつぶつ言ってるのよ」


「かっ花梨!?」


私は驚きながらドアの方を振り向く


「さっきから一人でぶつぶつと何を言ってるのよ」


花梨の呆れたような声がドア越しに聞こえる


「あ、いや」


私は話すのを躊躇う


でも隠すのもどうかと思い話すことにした


「今日、私春馬さんに告白的な事をしたんだよね」


「はっ」


「も、もっと詳しく聞かせなさいよ」


思いのほか花梨が食い付いてきて私は驚く


「ただ、キスした流れで私が好きって言ったら付き合ってくれる?って聞いただけだけど」


「で、アイツはなんて言ったのよ」


私は覚悟を決めて言う


「返事を聞く前に冗談って事にしたから返事は聞いてないよ」


「なんでよ」


「だって、聞くなら卒業後の方が良いのかなって。お父さんも言ってたし」


「確かに」


花梨が納得したらしい


「まぁ、私も負けないけどね」


「何が?」


「何でもないわよ」


フッ


ドアの外で花梨は顔に笑みを浮かべると、誰も居ない廊下に向かいながら呟く


「やっぱり"恋は攻めてこそ"ってことね」


花梨は上機嫌で歩いていった














今回も最後までお読み頂きありがとうございます

まず最初に言わせてください。1週間更新を休んでしまいすみませんでした。最初は火曜日に更新を予定していましたが持病の周期性嘔吐症を発症してしまい、しばらく体調回復に時間がかかってしまいまし  た。ただ最近ではカッコウの許嫁と言う作品にハマったり、初めてレビューが来たりとまた仲川さんちの四つ子家庭教師を書こうとやる気が出て更新出来ました!なので今回の話はかなり熱が入ってます

これからもご期待に添えるように頑張ります!

次回お楽しみに!

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