家庭教師のお礼 前編
今回は有香里にスポットライトを当ててみました
「今日までの家庭教師のお礼として4人一人一人のいきたい所に一緒に行ってやるし、俺の買える範囲なら買ってやる」
「「ええっ」」
四人の顔が赤くなる。それもそのはず男と二人でお出かけなんてデートみたいなものなのだ。
おじさんには(礼はいらん。僕の方こそ礼をしたいくらいだ)と言われたが、俺の成績が平均点近くまで上がったのはアイツら四人のおかげだ。
何も礼をしないのは俺のプライドが許せないのでせめてものお礼として提案した。
「誰から行ってくる?」
と花梨が聞くと三人共顔を赤くする。
花梨は呆れたようにため息を付くと
「それじゃじゃんけんで決めましょう」
「「「じゃんけんぽん」」」
一番は意外にも有香里になった。そして花梨は一番最後になった。つまり最後まで負け続けたのだが言い出しっぺの法則は本当にあったんだなと俺は感心していた。
そして俺と有香里は共に家を出た。
有香里の外出時の私服は初めて見た気がする(いつも家では猫のTシャツとジーパンのラフな格好で家庭教師をしてくれる)
いつものラフ感は無く、ピンクのTシャツに白いブラウスとジーパンと言うオシャレで可愛い格好に俺は思わず見惚れる。
「あ、あまり見ないでくださいでふ」
有香里らしくもなく照れているようだ。
照れていてもいつものすを噛むのは健在なのは面白い。
俺は歩きながら聞いてみる。
「有香里、行きたい所とかあるか?」
「うーんと買い物とかでふかね」
だから噛むなと心の中でツッコむ。
「買い物ならエオンモールとかそう言う?」
「そうでふ」
有香里はフンフンと首を縦に振って頷いていてなおさら可愛い。
あれから俺達は最寄りの駅からローカル感溢れるレトロな電車に揺られて隣町(二駅)に向かった。
俺は座席に座りながら後からの車窓を見る。大都市圏の電車だと車掌さんが居て見えにくいがワンマンなので見放題なのもローカル電車の特権と言えるだろう。
するとあっという間に二駅分は過ぎて次が終点だと言うアナウンスが流れる。
「意外と早いでふね」
有香里が窓の方を見ながら言う
「そうだな。もう少し長いかと思ったが……」
有香里と二人で乗っているからと言おうかと思ったが止めた。流石にそれは彼氏感が凄すぎる。
電車を降りた俺と有香里はバスに少し揺られてエオンモールに着いた。
恐らくこの辺りでは一番大きな商業施設だろう。
ただエオンモールと言えど、大都市にあるような吹き抜けのあるオシャレなものでは無く平成感ただようだだっ広いフロアが3つ重なっただけのものだ。
ただ最近のリニューアルでフードコートは少しオシャレになったらしく違和感が半端ない(実話)
時間も時間なので取り敢えずお昼ご飯をと言う事で軽めにたこ焼きを食べる事にした。流石にお昼は俺が奢った。
やっと冷めてきて俺が少しづつ食べていると
「うーん」
と有香里の声が聞こえ前を見ると有香里がこちらにたこ焼きを差し出していた。顔は羞恥心で真っ赤に染まっている。
(俺に食べろってこと)
(恥ずかしすぎる)
いや付き合ってるように見られるだろとツッコミたい。
俺は断るのも申し訳なくて有香里からのたこ焼きも食べた。
美味しかったは美味しかったが…周りからのカップルだろっていう視線が恥ずかしかった。
俺はお礼として有香里の方にたこ焼きを挟んだ箸をを伸ばす。
有香里はそれこそゆでダコのように顔を真っ赤にしながらも食べてくれた。
彼女が居たら…こんな感じなのか。
俺は何気に思う。
だけど口には出さなかった。
それから俺は有香里と共に色んな店を周った。
ただ有香里の下着まで選ばせられたのは意味不明だったが……それだけ心をひらいてくれてると言う事だろうか?恋愛を一度もしたこと無い俺には分からない。
その後は本屋にも行ったが有香里の欲しい本がかなり上の方にあったらしく、背が低めな有香里はピョンピョンとジャンプをして取ろうとしているが、一緒にうさ耳リボンも揺れて俺にはウサギがジャンプしてるようにしか見えなかった。
あれからもしばらく買い物をして再びバスと電車で最寄り駅まで帰ってきた。
駅舎を出ると街はすっかり夕日でオレンジに染まっていた。
「ねぇ春馬」
有香里が急に聞いてくる。
「なんだよ急に」
有香里はこちらを振り返って髪とうさ耳リボンを揺らしながら言う。
「今日は楽しかったでふね」
そう言う有香里の顔は夕日のせいか赤く感じられた。
「あ、ああそうだな。楽しかったな」
「じゃあ、もう一箇所周ってもいい?」
「あ、え、おう。構わないぜ」
ここまで来たら最後まで有香里に付き合ってやろうと思った。
そして付いたのは少し古そうな公園だった。
入り口側は原っぱで奥側に鉄棒やブランコ、ジャングルジム、滑り台がある。そしてその全てが赤と青で塗られていて統一感がある。
有香里は懐かしそうにジャングルジムに登って一番上に座る。
「私が小さい時、ここで男の子にあったの」
はっ
俺はここで思い出した。
昔、このジャングルジムで女の子と会って一緒に遊んだのだ。
「まぁそれだけなんだけど……」
すると有香里は飛んで降りようとした。
ただ途中でバランスを崩して落ちそうになる。
「ヤバっ」
俺は有香里の所に向かいながらあの日も上手く降りれなかった女の子を助けた事を思い出した。
「まぁそれだけなんだけど」
私、仲川有香里はそれだけ言うと降りようと片足をかけて反対を向く。すると足が滑り落ちて真っ逆さまになる。
「痛っ……くない」
私は周りを見る。すると私の真横で春馬が息を切らしていた。
見ると春馬は私を抱えていた。
お姫様抱っこのような形で
ドキドキ
あの日感じたのと同じドキドキを再び感じる
あの日も上手く降りれなくて助けてもらったのだ。
私はドキドキしながらも確信出来た。あの時の男の子こそ春馬だったのだと。
私はあの時の男の子が好きだった
つまり春馬の事があの日からずっと好きだったのだ
私は下ろしてもらうと
「も、もしかしてあの日、助けてくれたのも…」
「あぁ俺も今思い出した」
「あの日お前を助けたのは俺だ」
私は凄く嬉しかった。
"初恋"相手とこうやってまた再開できたのだから
「ところで本当にごめんな。家庭教師のお礼がこんな形で」
私は小悪魔な笑みをいつものように浮かべると言う
「いいでふよ」
「だって」
「一番嬉しいお礼をもうもらっちゃったんでふから」
春馬は照れくさそうに苦笑すると
「なら、誘った甲斐があったよ」
こうして私と春馬の"一日デート"が終わった
第二回!四つ子家庭教師会議
「みんな集まったよ」
私、仲川紗月は机を挟んで前に座る花梨に言う
「よし。じゃあ始めるか」
「と言っても議題はあるんですか?」
隣に座る多緒がおずおずと言う
「んーじゃはー君…じゃなかった春馬からの呼ばれ方についてにしましょうか」
「はー君」
私は花梨に聞く
「う、うるさい!忘れて」
花梨が珍しく顔を真っ赤にしている
「それはそうとして呼ばれ方と言うと?」
有香里が質問する
「そりゃー春馬の私達の呼び方よ」
「はーい」
多緒が手を挙げる
「じゃあ多緒何かある?」
「有香里ならあっかりんとか」
「ありかもね」
花梨が頷く
「最初の挨拶にも良さそうだし」
「あいさつ?」
「うん」
「あっかりん!ゆる…」
パッシン!
花梨がどこからか出してきたハリセンで叩く
「アウトだわ!」
花梨がツッコむ
「ですよねー」
こう言うアニメや漫画の話だと意外にも多緒は乗りが良い
「他にある?」
「はい!」
有香里が元気よく手を挙げる
「んじゃ有香里」
「花梨ちゃんは"かっちゃん"で良いんじゃない?」
パッシン!
花梨が今度は有香里をハリセンで叩く
「私は焼肉屋か!」
「ぶふっ」
私は耐えきれずに吹き出す
「花梨、かっちゃん、焼肉屋……ぶふっ」
「ほら有香里、紗月がツボっちゃったじゃない」
それからしばらく私はツボりすぎて何も言えなかった
「じゃあ紗月はさっちゃんは?」
有香里が提案する
「ぶはっ」
今度は多緒が笑う
「さっちゃんって聞いてさっちゃんみっちゃんを思い出したんだよ」
「さっちゃんみっちゃん?」
有香里が質問する
「響け!吹奏楽でそう言うキャラクターが居たんだよ」
「そう言う事ね」
花梨が呆れたように笑う
こうして会議なのかも分からない第二回四つ子家庭教師会議が幕を下ろした
最後までお読み頂き本当にありがとうございます
どうでしたか?前編はいつも通りの本編、後半がネタ多めの会議?でした。
ちなみに今の所、作者の自分自身も最終的に誰を"花嫁"にするかは決まってません(笑)今年8月の甘神さんちの縁結びの終わり方を確認した上で結論を出そうと思います。ちなみに今作では全員昔に春馬に会っていて誰と最終的に付き合うのかをあえて分かりにくくしています。ちなみに最終回は筆者が高校を卒業するくらいかなと考えています。もしかしたら早まるかもしれません。では次回家庭教師のお礼 後編お楽しみに!




