教師と教え子のタイミング
今回は春馬と四つ子の親同士の関係
そして有香里の思い出の場所とは
あれから2日間の学園祭も滞り無く終えた
そんなある日いつものように紗月に家庭教師をしてもらっていると、すうーと襖が開いておじさんが懐かしそうにこちらを見ている。
すると紗月がおじさんの方を見るという
「父さん、どうかしたの?」
「いや、今のお前達が昔の自分に重なってな」
「どうして?」
紗月が疑問を口にする。
「そろそろ言っておくべきか」
おじさんは少し考えると言う
「お前達、授業が終わったら居間に来てくれ」
「う、うん」
おじさんは襖を閉めるとどこかに行ってしまった
「お、おお」
俺と紗月は互いの顔を見合わせた
あれから紗月の授業を終えて言われた通り居間に行くと他の3人も揃っていた
「何なの?お父さん。急に来いって」
「何なんです?」
「何?何?何で急に集めたのお父さん」
どうやら3人も知らされてないらしい。
するとおじさんが言う
「そろそろ一つ話しておこうと思ってな」
「もう!じらさないでよ」
花梨は中々言わないおじさんに苛々してるらしい
「花梨、そうかっかするな」
ごほん
わざとらしく咳払いをするとおじさんが言う
「さっそくだが、お前達の母親、優花と春馬、お前の母さん、沙也加は僕と遠馬の教え子だったんだ」
「「「えええっ」」」
四人と俺の声が重なる
「優花と沙也加は姉妹して勉強が出来なかった」
「まさに春馬のようにな」
おじさん、うっさいと心の中でツッコむ
「現に二人は元々は違う学校だったが優花の方が進級試験に落ちたらしく、二人で一人だと聞かず二人で転校してきたそうだ」
「そして僕は二人の担任になった」
「ただ点は思うように上がらず、このままでは留年は免れない状態だった」
「そこで僕と当時教師になりたてで僕のクラスの副担任だった春馬の父、遠馬はこの家の今春馬が使っている部屋と隣の部屋で手分けして一対一で教えたんだ」
「その甲斐あって留年は免れて、最終的には卒業した」
「そして卒業の日に僕と遠馬に二人が行ったんだ」
夕日で紅く染まった空に桜の花びらの舞う中庭で僕と遠馬は卒業したばかりの優花と沙也加の前に呼び出されて立っていた。
当時、珍しかったブレザー制服と首元の学年カラーの緑のリボンに夕日が当たる
「単刀直入に言います」
「私」
「私は」
「拓也さんの事が好きです」
「遠馬さんの事が好きです」
同時だった
僕と遠馬は顔を見合わせた
教師と生徒と言う関係。
それを考えて二人して返事できずに居た
その時、二人が同時に言った
「先生、私達は卒業したんです」
「もう生徒では無いんですよ」
この言葉は今でも鮮明に覚えている
「と言う事があって、優花は僕と沙也加は遠馬と結婚したんだ」
「で、どうしてそんな昔話をした訳?」
花梨は不思議そうに聞く
「紗月が春馬に授業してる様子が当時の僕と彼女に似ててな」
俺は内心で驚いていた。母さんが父さんの教え子だった事、そして
そして母さんが今の俺と同じように勉強が出来なかったなんて。
「長話してすまなかったね。春馬君は先に部屋に戻っててくれ」
私、仲川有香里は内心で凄く驚いていた。
私達のお父さんとお母さんが教師と生徒の関係だった事、それに春馬さんのお父さんと私達のお父さんが共に教師だった事。
まるで今の私達のように
「よし、お前達にはもう一つだけ言っておく」
私はハッとしてお父さんの方を見る。
「お前達が春馬君の事をどう思っているのかは知らない」
「だが、好きなのなら」
四人共同時に赤面する。
「気持ちを伝えるタイミングは考えるように」
「彼女達二人の……ようにな」
気持ちを伝えるタイミング
私は心の中で繰り返す
私の……春馬さんへの気持ち
「俺の父さんは学校の先生だったんだぜ」
「今はお母さんが先生なんだぜ」
「私のお母さんとお父さんも先生だよ」
「おぉ仲間じゃねぇか」
あの日、いつもの公園の赤と青のジャングルジムに登って、私は男の子と話していた。
「あ、時間だ。俺は帰るな」
「また会おうぜ!有香里」
男の子はそう言って走っていった
あの時私はその子の名前を聞かなかった
だけど……
どこか春馬君に似ていた気がした
私は回想から戻ってみんなを見る
皆、俯いて考えている様子だ。だけど何だか顔が赤いような気がした
私は今の気持ちが何なのか……まだ分からない
だけど無性にあの公園に行きたいと思った
次回に続く
最後までお読み頂きありがとうございます!
本作が1300pvを突破いたしました。本当にありがとうございます。
今回の話に登場したジャングルジムは実際に筆者が小さい頃住んでいた家の近くの公園にあった物です。言葉の通り本当に赤と青の二色だけのジャングルジムでよく遊んでいました。前回の多緒の鉄棒や今回のジャングルジムのように実話などを含めて今後も執筆を続けていきます!次回お楽しみに




