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謝罪配信……と言う名の終わりの始まり③

【コメント】

 :ん?

 :ん?

 :ん?

 :ん?

 :ん?

 :ん?

 :ん?

 :ん?

 :ん?

 :ん?

 :ん?

 :ん?

 :ん?


 困惑、戸惑い、混乱。

 まるでそんな言葉をすべて集約したかのように、全く同じコメントがbotのごとく爆速で流れていく。


「え、え~と……」


 あれ……おかしいな。なんだろう、今明らかにこの世のモノとは思えないセリフが母さんの口から出てきた気がするんだけど……。

 たしかおっぱい……それにチュパチュパ?

 あははは、ないないないない……あの真面目な母さんがそんなこと言うわけないって。

 それに俺らゆーて義理とはいえ親子ですよ? しかも幼児の頃だったらいざ知らず俺もう17歳っすよ? 高校通ってるんですよ?


 ああ、これはあれだ。たぶんちょっとした言い間違いだ。

 恐らく想像だけどパイナップル? チュパカブラ? なんかその辺のワードを言おうとして盛大に噛んじゃったみたいな?

 うん、そうだ。絶対そうに違いない。そうに決まってる。というかそうであってほしい。

 まあこの状況においてなんでそれらのワードを言おうとしたのかは疑問の余地があるけどそれはこの際どうでも――。


「ほら、遠慮しないでたっくん。今日はお母さんがい~っぱい甘えさせてあげるからね。だから早くおっぱいチュパチュパしよ?」

「…………」


 うおおおおおおいい!!!! 全然言い間違いじゃなかったんですけどぉおおおおお!!!!!???


 えぇええ!? どゆこと!?

 なぜ!? どうしてこうなったの!?


「え、いやあの……か、母さん? その、これはいったいどうゆう……」

「え? だって今言ってたじゃない。本当はずっと私に甘えたかったって。だからね、今日は今までの分を取り返すくらい甘えさせてあげたいなって」

「あー……」


 なるほど、そういうことか……って納得できるかぁあああ!!

 どうしてだよ! なぜにそれでおっぱい!? 飛躍しすぎだろ! 取り返すどころかそんなことしたら失うものだらけだよ!

 つーかこんなんそもそも絶対事務所NGでしょ……あ、そうだ玉森さん! こんなときこそマネージャーの出番だ!


「ちょっ、ヤバいっすマネージャーさん! なんかよく分かんないけど母がおかしくなっちゃいました! なんとか止めてください!」


 俺はまるでロープに腕を伸ばすプロレスラーのごとく玉森さんに腕を伸ばした。

 ちなみに配信中なので個人名は出さない。こんな事態でもかろうじてそこの配慮に関する冷静さが残っていたのは不幸中の幸いと言えるだろう。


 するとそんな俺の必死の訴えに、玉森さんはお任せあれとばかりに深く頷き――。


「…………」(グッ!

「いやなんでだよ!!!」


 飛び出したサインはまさかの『GO』。

 玉森さんはガッツリと親指を立てた。


「ちょっ、なんすかそのGOサイン! 所属タレントが息子相手におっぱいチュパチュパさせようとしてんですよ!? そこはストップじゃないんですか!?」

「いえ、ご心配なく。うちの事務所はその辺り割と寛容ですので」

「その辺りってどの辺り!? 聞いたことないよそんな事務所!」


 ……いや待て。しまった、そう言えば忘れていた。


 まーたんの所属する事務所――Vランドは言わずと知れたVTuber界の大手。

 しかし、当然ながら設立当時は小さな会社からのスタートだった。それこそ最初はライブやイベントもできないほど小さな規模での出発。

 では、そこからどうやって業界の最前線まで躍り出るようになったのか?

 それは言わずもがな所属するライバーのマンパワー……もっと言うと、各ライバーの有り余るほどの個性にある。

 飲酒配信で泥酔してゲロを吐くわ、「生の配信者の生活音を届けたい」とか言いながらトイレで用を足す音を高性能マイクで流すわ、VR体験と称してどう考えてもアレな店のアレな動きを3Dで披露するわ。

 兎にも角にもVランドのライバーと言えば、よくもまあ誰もBANされないなというレベルでギリギリを生きる剛の者たちばかり。

 そしてそんなイロモノ集団を飼いならす側もまた、結局は同じ穴のムジナということで……。


 まあ要するに何が言いたいのかと言うと、このVランドという事務所は運営側もそろってヤベー奴らの集まりなのである。


「というわけで私の存在はお気になさらず。さあどうぞ、親子水入らずということで」

「だって、たっくん。よかったね~」

「いやよくないわ! 水入らずってレベルじゃないだろ!」


【コメント】

 :草

 :草

 :草

 :運営が積極的に背中押してきてて草ww

 :さすがVランド これぞVランド

 :出たわね

 :やはりマネージャーもそっち側だったか

 :やっぱ潰れた方がいいよこの会社(呆れ)


 ……いやほんとそれです。

 おいおいヤベーよこの会社マジで。ほんとに令和に生まれた企業なのか? コンプライアンスはいずこへ?


「ほらたっくん、早くぅ早くぅ~。あ、もしかしてこの体勢だと苦しいのかな? そうだ、ならこうしましょ。はい、じゃあまずたっくんはそこに仰向けでゴロンして――」

「いや体勢とか関係ないから! つーかやらんわ! あーちょ! おもむろに服を脱ごうとするなって!」

「いいのいいの、配信には映ってないから大丈夫よ。これもVTuberの特権ね」

「そういう問題じゃねぇえええ!」


【コメント】

 :まだいくかwww

 :うひょお

 :脱衣きた!

 :♡♡♡

 :まーたん全然止まらんやんw

 :発言がメタすぎるww

 :たっくんタジタジで草

 :てかまーたんってこんなキャラだったんか??

 :完全に覚醒しとる

 :【悲報】Vランドの良心、壊れる

 :唯一の清楚枠だったのに……

 :でもこれはこれでアリ

 :むしろまーたんが一番ヤバい奴だった可能性

 :さすが安心と信頼のVランド産

 :Vランドの隠し玉 見 つ か る

 :とりあえずパンツ脱いだ


 あーもうめちゃくちゃだよ……。



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