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占いシスターズ①

「……えー、というわけでね。先日のグッズ検討では大変お世話になりました、と」


 例のグッズ検討配信から数日後。

 俺は例によって母さんといっしょに我が家の自室から配信をしていた。


「おかげさまで事務所に『グッズの件なんですが、おしゃぶりを作ろうかなって思ってるんですけど……』って送ったらちゃんと正式にオッケーが出てね。よかったね、たっくん」

「いやぁ誠に残念なことにね……みなさまにはホントに感謝してもしきれませんよ……」


【コメント】

 :いやいや

 :ええんやで

 :残念なことにてwww

 :ほんとに残念そうw


「そりゃまあ個人的にはワンチャン『これはさすがにちょっと……』みたいな感じで突っぱねてくれれば別の案に軌道修正できるかなって淡い期待を抱いてましたからね……まあ実際はなぜか突っぱねるどころか大好評だったわけなんですが」

「ハルちゃんなんか『おひょおお!めっちゃいいじゃないですかこれ!すぐ制作に取り掛かりましょう!』って叫んでたものね。他にも会う人みんないいじゃんいいじゃん!って感じでノリノリだったもの」

「ああうん、あったねそんなことも。いやまさかあそこまで絶賛されるとは……」


 先日事務所にまとまったアイディアを提出した後のことだ。

 いざ他の用事で事務所を訪れた際、いろんな人から声をかけられた。

 口を開けば誰もが「ナイスおしゃぶり!ナイスおしゃぶり!」などとワケのわからん誉め言葉で声をかけてくる始末……まったく相変わらず意味不明な事務所だ。


「てことで、おしゃぶりについては現在絶賛鋭意制作中です……」

「ちなみにたっくんはこんなテンションだけど、デザイナーさんたちのやる気はものすごいから出来栄えについてはみんな安心してね――というよりむしろ期待してて! なんたってうちの事務所に関わるクリエイターさんたちは基本的に妙な発注ほどやる気がアップする特殊な訓練を受けてる精鋭ばかりだから!」

「なんだその嫌すぎる精鋭たち……」


【コメント】

 :草

 :安定と信頼のVランドブランド

 :ここまで来るとブランドってかもはやウィルスの類だろ

 :ライバーやスタッフだけでなくみんな汚染されてるの草

 :外注まで巻き込むのか・・・どんだけやねんw

 :でも容易に様子がイメージできるのがコワい

 :どんだけ変人に愛された事務所なんだ・・(褒め言葉)


「あー早く完成しないかなぁ。出来上がったあかつきには盛大にお披露目配信しましょーね、たっくん♪」

「……まあ気が向いたらね」


 なんかすさまじく嫌な予感しかしないから気乗りはしないけど。


「そんなわけなんでみなさんはあまり期待せず、なんなら記憶の片隅のさらにそのまた隅に留めておくくらいでお待ちいただければと……」


【コメント】

 :了解!

 :販売サイト公開されたら教えてね

 :あー楽しみやな~

 :できればお披露目配信と同時にたっくんの3D化も希望

 :リアルに咥えてフガフガ言ってほしい

 :ハイハイも追加で


「えぇ……」


 いやなんでせっかくの3Dで自ら恥を晒しに行かなきゃいけないんですかね?

 ハイハイも追加でじゃないよ。毎度のことながらいったい俺に何を求めてるんだ、ウチのリスナーは……。



 ……とまあこんな冒頭の雑談で始まったわけなのだが、実のところ今日の配信は別に雑談メインの回ではない。

 それどころかそもそもソロ配信(with母)ですらない。今日はれっきとしたコラボの予定なのだ。


 そしてそのコラボ相手というのが――。


「さ、それじゃあお知らせも終わったので本日のゲストさんをお呼びしましょっか。本日お越しいただいたのは~?」


「は~いどうも~! Vランド所属5期生で双子の姉の方こと、神苗(かみなえ)ヒルメです!」

「どうも~、同じく5期生で双子の妹の方こと、神苗ツクヨです~」


 Vランド唯一の双子VTuber――神苗姉妹。

 日本三大霊場のひとつである青森の恐山、その麓にある霊験あらたかな神社で育った双子の巫女姉妹である。

 しかしてその実態は人間に変化した“化けタヌキ”であり、そのため白と赤の巫女衣装を纏った二人の頭の上にはぴょこんと立った丸いケモ耳が生えている。

 なんでも山でケガをしていたところを神社のおばあさんに拾われ、恩返しとして巫女として修行する傍らで配信活動中なんだとか。


 なお、双子ではあるが見た目や性格は割と対照的。


 姉のヒルメ先輩についてはひとことで言えば元気そのもの。

 朱色の髪に夕焼けっぽい金茶の瞳をした、何事もテンション高く勢いで乗り切る猪突猛進のパッションタイプである。

 ……ちなみに性格に反して胸は控えめ。


 それに対して妹のツクヨ先輩は常に微笑と敬語を崩さない、どこか不思議な印象のあるミステリアスガール。

 髪は夜空のような群青系で、瞳の色はこれまたミステリアスさを印象付ける深紫をしている。

 ……ちなみに性格に反して胸はワンパク。


 でもってそんな彼女らの共通の特技が占い。

 修行で身につけた巫女パワー&恐山から得た霊力による占いは抜群の的中率を誇り、過去にもいろんなライバーが二人の占いのお世話になっている。

 そして今日の配信ではぜひそのチカラにあやかろうと、こうしてゲストとしてお呼びさせていただいたのだ。


【コメント】

 :かわいい

 :はいカワイイ

 :好き

 :挟まれたい

 :かわいすぎる

 :かわいい

 :かわいい

 :かわいい

 :か わ い い ♡


 登場と同時に溢れんばかりの「かわいい」で満たされるコメント欄。

 さすがはデビューしてから瞬く間にその愛らしさからVランドきっての年下甘やかされポジを確立した二人だ。

 よくライバー同士のコラボ配信でも「まあこの二人になら何をされてもいっか」というおいしい立ち位置を確立しているだけある。

 もうコメントから伝わってくる空気感からしてなんか違う。


 ……しっかし双子かぁ。

 例のごとく今日が俺にとっては初対面だから実際のところはわからんけど、なんだかんだ二人ともベースはそっくりだな。

 それぞれ髪が赤いとか青いとか、胸が大きいとか小さいとかの差はあれどほとんど瓜二つだ。

 それに声だって実によく似ている。かろうじて敬語かどうかで区別はつくが、これでもししゃべるテンションや口調まで同じだったらどっちが話してるかわからんのでは?


 いやはや、これぞまさに双子ならではって感じだな。

 こうなるとさぞや配信でのお互いの息もピッタリなんだろうなぁ。


「二人そろって~♪」

「その名も~♪」


【コメント】

 :その名も~?

 :その名も~?

 :その名も~?


「かまぼこ&ちくわ大好き! 練り物モグモグタヌキ姉妹です!」

「恐山が生んだエキセントリックスムージーシスターズです」


 ごめんいきなりぜんっっぜん合ってなかった!!!!


次回は8/19(火)の更新予定です!

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