Mなるハンバーガーショップ④
とまあ、そんなこんなで役割分担もあっさり完了。
レジ周りの操作を覚えるため母さんはカウンターに移動し、俺とルミナ先輩とシェリー先輩は引き続きキッチンに残る。
もっとも俺の場合は調理がメインの役割ではないのだが、状況次第では補助としてキッチンに回る可能性もあるということでいっしょに操作を覚える形だ。
「んじゃとりあえず試しにバーガーでも作ってみよっか」
「そうですねルミナ先輩。ひとまず具材はさっきそこのパソコンで注文したのを外のトラックから運んできたのでそろってますけど」
「お、さすがベイビん気が利くね。なら次の工程は……」
「どうやらパティはこのパティコンテナってのに出すようデスネ。そしてそれを鉄板に並べて焼いていくみたいデス。ちょっとやってみマス」
「なんかクリハンを思い出すね。これママみんのが適正高かったんじゃない?」
【コメント】
:あーたしかに
:肉焼きのママミ
:あれはこの配信のための布石だった・・・?
「お、だんだんパティが焼けて色が変わってきマシタヨ」
「へ~、焼き具合がパーセンテージで出るからそれに合わせてひっくり返すんだ。けっこう忙しいね」
「いい感じですね。でもってそれをトレイに乗せて運んだら、あとは包装紙、バンズ、パティなんかを重ねていけばいい、と」
「あ、じゃあそれはルミたんがやるよ」
ゲームの指示に合わせて操作するルミナ先輩。
具材を揃えさえすればあとはシステムが自動でやってくれるので、あっという間にハンバーガーが完成する。
「パティ……ケチャップ……ピクルス……よし、できた!」
「イエス! めちゃくちゃバーガーデス!」
「おぉ~」
【コメント】
:ナイスゥ!
:お見事!
:ええ感じやん
:うおおなんか見てたら腹減ってきた・・
「あはは、たしかに。それこそクリハンもそうでしたけど、最近のゲームって全体的にゴハンがおいしく見えますよね」
「まさに飯テロというやつデスネ。ワタシも自分で作っててすっかり口の中がハンバーガーになってきてしまいマシタ」
「わかる~。え、どうする? 配信終わったらみんなでマッ〇でも行く?」
「Oh、それはグッドアイディアデス! ぜひ行きまショウ!」
「いいですね! あれ? でもいいんですかルミナ先輩? 外食ってことは家の外に出ることになりますけど……」
「いや、だから代わりに買ってきてもらおうかなって。みんなで食べてきて、そのついでにルミたんの分をテイクアウトしてきてよ」
「そういうこと!?」
【コメント】
:草
:それただのパシリやんw
:みんなで行く?(訳:買ってこい)
:今日もルミたんは平常運転だなぁ
などというやり取りをしつつ、なおもゲームを進めていく俺たち。
その後はポテトを揚げたり、ドリンクを入れたりなどの操作を学び、ひととおりのオペレーションを理解することができた。
そして――。
「うん、なんかだいたい雰囲気は掴めたね。メニューごとに選ぶ具材が変わるってのがミソかな」
「あとパティを焼きすぎないのと在庫の管理なども気をつけないとデスネ」
「たしかに。まあでも意外となんとかなりそうではありますね。どうです二人とも? そろそろ開店してよさそうですか?」
「いいよー」
「ワタシもOKデス」
というわけでいよいよ営業開始。
店長である俺が入り口にある『OPEN』の看板を点灯し、ついに開店した我らが“M‘sバーガー”。
俺たちは時に肉を焦がしたり、ケチャップの代わりにマスタードのみのバーガーを生み出したり、あるいはドリンクの入ってない空のカップを提供したり……そんなハプニングを随所に挟みつつも、次々と訪れるお客さんの注文を捌きながらなんとか店の売り上げを伸ばしていった。
「はいバッチこーいバッチこーい! さあさあ、どんどんパティを焼いていきますヨ~!」
「おーノリノリじゃんシェリっち」
「イエス。やはりハンバーガーと言えば母国の味。ワタシとしても思い入れが違いマスからネ、気合たっぷりデス!」
「あーなるほどね。ところでさっきの話でひとつ気になったんだけど、そもそもシェリっちってどうしてカウボーイに憧れるようになったの?」
「あ、それ俺もちょっと気になってました」
【コメント】
:たしかに気になる
:そういや俺らもちゃんと聞いたことないな
:たぶん雑談とかでもしたことないよね
:え、なんでなん?
「そうデスネ~、ワタシの場合はもともとパピーがアメリカ人ということもあって西部劇が大好きデシタのでその影響デス」
「あーそっか。シェリっちってお父さんがアメリカ人で、お母さんが日本人なんだっけ?」
「そうデス。いわゆるハーフデス。それでパピーとは二人でよく自宅の庭でカウボーイのマネをしてロープ投げの練習なんかもしたりしマシタ」
「いいですね、なんか青春っぽくて」
「ええ、夕陽に照らされながら一生懸命投げているとホントに自分がカウボーイになった気分になれマシタ」
「なんかオレンジ色って西部劇感ありますもんね」
【コメント】
:親子で仲いいんだね
:楽しそう
:なんかエモいな
「ま、今じゃすっかり自分が縛られる側なんですけどネ☆」
【コメント】
:はい台無し
:「ネ☆」じゃないが笑
:誰ウマw
「それにしても日本の亀甲縛りは素晴らしい発明デス。個人的にはノーベル賞を送りたいくらいデス」
「いや急になに言ってんすか。ダメに決まってんでしょ」
「送るとしても該当するジャンルがなくない?」
「平和賞があるじゃないデスカ。みんなで縛り合えば身動きできなくなってハッピーデス」
「そんなんでもたらせる平和とかイヤすぎるんですけど!?」
【コメント】
:草
:地獄絵図やんw
:人類亀甲計画
:↑んな人類補完計画みたいにw
:↑エヴ〇かな?
:↑親父がそんな計画立ててたらそりゃシ〇ジくんもグレますわ
:↑ゲ〇ドウ「やれ」(全裸で四つん這いになりながら)
:↑綾〇「あなたは死なないわ。私が縛るもの」
「えぇ……なんすかそのアニメ、そんなもん夕方に流して視聴者はどんな顔でそれを見りゃいいんですか」
「笑えばいいんじゃないかな?」
「いや笑えませんが!? むしろ泣いちゃいますよ! 主に子どもが!」
【コメント】
:ルミたんw
:wwww
:お茶の間冷え冷えで草
:子どもどころか親も泣いてそう
:そりゃ自分の子どもがそんなアニメ見てたら泣くやろな
「てか二人とも手が止まってますよ。遊んでないでちゃんと働いてください」
「えーでもルミたん操作わかんなーい」
「いやいやさっきいっしょにやったじゃないですか。オーダーが来るから、それに合わせてこうしてこうしてバンズにパティとか具材を挟むんですよ」
「ホウ、挟む……デスカ」
「うわぁ、やめてよベイビん。まだ昼間だよ?」
「いやなにがですか! 誰もそういう意味で言ってませんから!」
「ソウイウ意味……?」
「あれあれ、ルミたんは昼間としか言ってないのに? いったいたっくんはどんな意味を想像したのかな~?」
「なっ……!?///」
【コメント】
:あらあら
:これはこれは
:マヌケは見つかったようだな!
:たっくんまんまと誘い出されてて草
「深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを覗いている……デスネ」
「深淵(エロい妄想)」
「ちょっ、なんすか寄ってたかって! コメント欄も! なんで俺が勝手にエッチな妄想を働かせたみたいになってるんですか!?」
「やれやれ、いったいたっくんは誰にナニを挟んでほしいのかなぁ?」
「まああれだけ大きなマミーといっしょに暮してればそういう発想になるお気持ちはわかりマスが……」
「お~いだから違いますって! てかデカさで言ったらシェリー先輩もけっこうなもんじゃないですか!」
「キャッ!? 聞きましたカ、ルミナパイセン!? 後輩がワタシをイヤらしい目で……!」
「あら~ベイビんも見境ないねぇ。ママみんに言いつけるよ?」
「だからちげぇえええ! こっちはフツーに具材をパンに挟めって言ってんの! というかマジでいい加減やめてください二人とも! こういうハナシしてると絶対――」
「え、なになにたっくん? ママがどうかした?」
「ほーら来た! いや来なくていい来なくていい! 絶対ややこしくなるから!」
【コメント】
:まーたんキタ!
:すかさずww
:図ったかのようなタイミングで草
:ぜったい裏で会話聞いてたw
:おっぱいと聞いて飛んできたな
:まーたん「ずっとスタンバってました」
「なんでもベビーちゃんがママミ先輩にナニやら挟んでほしいって言ってマシタ」
「まあ……!? たっくんがママにナニを!? そうなのたっくん!?」
「いや違うから! 言ってないから!」
「えーでもさっき『お前らとっとと俺のパティを挟みやがれ!』って……」
「いやルミナ先輩も捏造やめてください! ひとことも言ってないし! てか俺のパティってなに!?」
「うふふ。たっくん、もしムラムラしてるならママに言ってね。いつでも処理してあげるから」
「いやいいから! 処理ってなんだよ!」
「え? それはもう――」
「やめろぉおおお! 言わんでいい!!」
【コメント】
:wwwwwww
:カオス
:もうダメだw
:俺のパティ(隠語)
:肉塊ならぬ肉棒的な
:なんだこの店(呆れ)
なんだこの店(呆れ)
次回は7/11(金)に更新予定です