高貴なる同期コラボ③
「はい、それじゃあ改めまして進行役のママミです。みなさん、本日はよろしくお願いします」
【コメント】
:はーい
:よろしくお願いします!
:今日のまーたんウキウキやなw
:雰囲気がなんとなく教師っぽい
「うふふ、でしょ? 実は私もちょっと同じこと思ってたの。こうして年の離れた二人といっしょにいると、なんだか引率の先生になったみたい」
「引率の先生……だと?」
「あ」
母さんが何気なく放ったひと言にアランくんがピクリと反応する。
やべっ、アランくんてプライド高そうだからな。
先生って立場的には上の扱いになるし、今の発言はまたちょっとカンに触っちゃったか?
「なるほどな。ふむ、よろしく頼む」
「いやいいんかい」
【コメント】
:草
:割とすんなり受け入れてて草
:このときアラン・・・意外に素直
「フン、これくらいでいちいち腹を立てる朕ではないわ。朕の器の大きさを侮るなよ」
いやさっきあなた“くん呼び”うんぬんで結構ピキってたような……まあいいか。
ともあれそんなこんなで始まった『第1回“皇帝力”テスト!』――と言う名の俺とアランくんのタイマンクイズバトル。
事前にSNSで募集したクイズ案をもとに出題役である母さんが画面を操作しながら問題を出す。
しかし実際問題クイズってどんなのが出るんだろうか?
さっきの臣民のみなさんのコメント的に必ずしもアランくんが圧勝するとは限らないみたいな空気だったけど……。
いやしかしそうは言ったところで結局は本人に関する問題ばかりなんだろ? 普通に考えたらそれで俺が勝つなんて不可能じゃないか……?
「え~っと……問題はこの中から選べばいいのよね。よし、じゃあいくわね――まずは第1問」
デデン!
『問題:次のうち皇アランが初配信で最初に放ったセリフはどれ?』
①「者ども、朕の威光にひれ伏すがよい!」
②「フハハハハ!よく来たな我が忠実なる下僕たちよ!」
③「今宵……朕はこの世界の覇権を取る!」
④「……あれ? え、これもしかしてマイクミュートになってる? はわわっ!」
…………ん?
「ふん、なんだこの問題は。こんなもの楽勝ではないか」
「…………」
「二人とも選んだ? じゃあ解答をどうぞ!」
ベイビ:④
アラン:①
「あら? 二人とも1問目にして早くも答えが分かれたわね。ちなみにアランくんはなぜ①を?」
「フッ、愚問だな。朕と言えばやはりこのセリフしかないだろう。強いて言うなら②と③の可能性もなくはないが恐らくただのひっかけであろう」
「④はありえないと?」
「ないな。断言できる。だいたいなんだこのセリフは? 状況的にマイクが入っていないと勘違いして慌てているのだろうが、この朕に限ってこんな情けない凡ミスをするなどありえん」
「う~んなるほど。じゃあ正解を見てみましょう」
正解:④「……あれ? え、これもしかしてミュートになってる? はわわっ!」
「なにぃっ!!?」
「というわけで正解はたっくんでした。まずは1ポイントゲットね」
「そ、そんな馬鹿なっ!! これはなにかの間違いだ!!」
「ついでにこの後どうなったかというと、パニックになったアランくんはミュートになってると勘違いしたまま自分の担当のマネちゃんに半泣きで電話したのよね」
「し、信じんぞ……この朕がそんな……」
「ちなみにこちらが証拠の切り抜きです」
『……あれ? え、これもしかしてマイクミュートになってる? はわわっ!』
『ど、どうしようどうしよう……せっかくの僕の初配信が……うぅ!』
『あ、もしもしマネージャーさんですか!? じ、実はマイクが壊れちゃって………………え、“普通に問題なく聞こえてます。だから落ち着いてこのまま続けてください”?』
『…………フ、フハハハハ! も、もも者ども、朕の威光にひれ伏すがよい!』
【コメント】
:草
:あーあったなぁ
:なっつ笑
:思えばこれが陛下の伝説の始まり
:「朕の威光にひれ伏すがよい!」(震え)
「…………」
「は~い、じゃあ続いて2問目」
デデン!
『問題:皇アランが以前SNSでやらかしたポストとは?』
①配信告知ポストなのにURLが貼られていなかった
②アップした写真がぼやけまくっていた
③同じポストを間違えて何度も投稿した
④#朕のカッコイイところ募集 のタグを #チンチンのカッコイイところ募集 と打ち間違えて投稿した
ベイビ:④
アラン:……朕がミスなんてするはずない
「正解はもちろん④ね」
「チンチン……」
「ち、違う! これは罠だったのだ! 朕のせいではなくスマホが勝手に悪さを……!」
「なおこのタグを受けて瞬く間にリプライが関連画像で埋め尽くされた結果、気が付いたら #ソーセージ品評会 がトレンド入りしたのよね」
「ソーセージ……」
【コメント】
:wwwww
:史上最悪の品評会
:あれはとんでもないお祭りだったw
:ちな俺もアップした
:↑俺も
:↑ワイもや
:↑お前らよく進んでしょうもないポークビッツ晒せるよな……まあボクもアップしたんですけどね
:その後どっかの外国人がバカでけぇフランクフルトアップしてそれまで盛り上がってた全員が一瞬で蹴散らされた流れ今でもたまに思い出して笑う
:↑ペリーが黒船で来航したときの日本人の気持ちが分かったとか言われてたなww
「ちなみに実を言うとだけど、ママもあのときたっくんの画像をアップしようと準備してたんだよね。まあ結局ハルちゃんに『それはさすがにNGです』って止められちゃったんだけど」
「でしょうね。むしろなんで通ると思った?」
「う~ん、私的には皮で隠れてるからセーフじゃない?とも思ったんだけどなぁ……」
「おぃいいなにさらっととんでもない暴露してんだやめろっ!!」
【コメント】
:wwwwww
:wwww
:たっくん・・・w
:唐突な流れ弾で草
:ひでぇww
:ま、まあたっくんはまだ赤ちゃんだし……
:・・・同志よ
:しれっと包〇仲間混じってて草
「では続いて3問目はこちら!」
デデン!
『問題:朕の国、アランキングダムの通貨の単位を答えよ』
「………………つう、か?」
「どうしたのアランくん? なんか固まってるけど……」
「いや……」
「?」
【コメント】
:あ、これたぶん意味わかってないパターンですね
:陛下!通貨です通貨!おカネ!
:おい誰だ!この問題を考えたのは!
:陛下がこんな難しい言葉を知ってるわけないだろ!
「あ、そゆこと。これはあれだよアランくん。お金の単位だからほら、日本で言ったら“円”とかそういう意味の」
「おおなるほど!」
【コメント】
:草
:赤ちゃんに漢字の意味を教えてもらう皇帝ww
:陛下ぇ……
「だ、黙れ! 今のはわざとわからないフリをして無知な貴様らを試しただけだ! もちろん意味くらい理解しておったわ!」
【コメント】
:草
:ぜったいウソw
:言い訳が苦しいですぞ陛下!
「うるさいうるさい! 今笑ったヤツら全員前に出ろ! 朕が直々に斬首してくれるっ!!」
【コメント】
:ひえっ!
:も、申し訳ありません陛下!
:それだけはどうかご勘弁を……!
:何卒!何卒!
:陛下!!!
「ふん……次はないぞ」
【コメント】
:ふぅ
:ありがたや……ありがたや……
:なんと寛大なご処置!
「…………」
う~む、これは……。
流れゆくコメントを見ながら俺は思った。
なるほど、これが開幕前に臣民の皆さんがああ言ってた理由か……と。
そう、ここまでのやり取りを見た諸君もお分かりだろう。
この皇帝、実は超が付くほどのポンコツなのである。
そしてこれこそがアランくんがデビュー以来、瞬く間に人気配信者の仲間入りをした理由。
見た目は派手で高貴、それでいて態度や口調は皇帝らしく非常に尊大……なのに蓋を開ければ「漢字は読めない」「自分の言ったことをすぐ忘れる」「意外と趣味嗜好は庶民派」などなど。
そんな天地のようにかけ離れたビジュアルとのギャップがファンの心を一気に掴んだというわけだ。
ちなみに本人は頑なに「朕の天才性がすごすぎて一周回って世間が追いついてないだけ」などと意味不明な言い訳をしているが、そこも子どもっぽくて好きと支持されている。
でもってこのクイズはそんなアランくんの魅力を最大限引き出すためのクイズ。
もちろん企画した本人は勝つ気満々なのだろうが、実際はこんな風に問題から解答の選択肢まで徹底的に臣民がアランくんをイジる……もとい愛でるのがメインコンテンツというわけだ。
「ふん、次だ! 次の問題を早くしろっ!」
「は~い」
ちなみにこんなことを言うのもあれですが作者の○○○もたっくんと同じで……(ゲフンゲフンッ)
次回は6/13(金)の更新予定