高貴なる同期コラボ②
というわけで始まった同期コラボ。
ちなみに進行を務めるのはこの人である。
「は~い、こんママ~。そして私がVランド3期生の“千年の時を超えしママ”こと花咲ママミです。今日は事務所の先輩として二人の仲が深まるように私がうまく導いていこうと思うので、二人ともよろしくね」
「あ、うん……」
【コメント】
:千年の時を超えしママw
:さりげなく陛下に便乗してて草
:どんなママだよw
:千年の時を越えたってことはまーたんってもしや千歳超え?
「断じて違います。花咲ママミは20歳になった瞬間から時空の流れに取り残されたのでそこから歳を重ねることは一切ありません。いつ死んでも享年20歳です」
【コメント】
:急な早口で草
:圧がすごいwww
:すいませんでした!!!
:その理屈でいくといずれたっくんに抜かれるけど大丈夫?
「うん、ぜんぜん。だってたっくんもママといっしょで永遠の3歳児だもん。ねー?」
「えぇ!? なんか急に巻き添え喰らってるんですけど!? なにその設定知りませんが!?」
【コメント】
:たっくんw
:とばっちりすぎるw
:高校生(3歳)
:天才児やんwww
「ちなみに皇くんはその辺りどうなのかしら? やっぱり千歳なの?」
「フン、馬鹿を申すな。朕はこの地球誕生以来の王の中の王だぞ。無論、地球と同じく46億歳だ」
「へ~そうなんだ。え、じゃあどうして千年だけ時を超えたの? なにか理由があるの?」
「え」
「あ、もしかして実はアクシデントでそうなっちゃったとか? 例えば時空をジャンプするときにつまづいて落っこちちゃったとか?」
「そ、それは……」
「ちょっ、やめたげてママ! たぶんいろいろ事情があるんだよ! ね、皇くん!?」
「あらそうなの?」
「……ふ、ふん。まあそんなところだ。王に秘密は付きものだからな」
【コメント】
:たっくんナイスフォロー
:これぞVランドの添え木と呼ばれる男
:さすがベイビ殿、感謝しますぞ(by臣民)
ふぅ、危ない危ない。
母さんってたまによくわからない角度で人を刺しにかかるからな。さすが天然だ。油断も隙も無い。
「さーて、それじゃあそろそろ今日の配信の企画に移りましょうか。え~と――」
「……待て。その前に朕から一つ貴様らに言っておきたいことがある」
「あら、どうしたの皇くん? なにか気になることでもあった?」
「それだ」
「え?」
「貴様たちさっきから当たり前のように人のことをアランくんなどと呼んでいるが、王である朕に対して不敬だとは思わないのか?」
「あ……」
そっか、言われてみればそうだ。
たしかにキャラとしての設定上、皇くんと俺たちは王と平民の関係。そう考えると“くん呼び”はさすがに失礼にあたるのか。
「理解したようだな。であれば金輪際、朕のことは皇帝陛下、もしくはどうしても名前を呼びたければ皇“様”と呼ぶがいい。というかそれ以外の呼び方は一切認めん」
「あ、うん」
……う~む。まあこればっかりはしゃーないか。
本当は仲良くなるならタメ口とかの方がいいんだろうけど、VTuberたるものブランディングは大事だからな。
もちろん実際の年齢や事務所内での関係はあれど、VTuberとしてどっちが優先されるかと言ったらキャラクターの方だろう。
そういうことであれば、ここは素直に従っておくとするか――。
「わかったわ。じゃあママはこれから“アランくん”って呼ぶことにするね」
「いやハナシ聞いてたっ!!?」
朗らかに言い放った母さんの横で、ズコーッと盛大にデスクへダイブする俺。
危うく配信画面からフェードアウトするところだった。
一方、陛下は陛下で画面越しにもプルプル震えているのが伝わってくるくらいで――。
「き、貴様ぁ……」
「ちょっママミさん!? なに言ってんすか!? それじゃあもっと不敬になってるじゃん! くん呼びどころか下の名前だし!」
「え~、だってアランくんってたっくんと同期で、しかも聞くところによると同い年なんでしょ?」
「え、そうなの!?」
「うん、ハルちゃんから聞いた」
へぇ~そうなんだ。てことは皇くんも俺と同じで高校生ってこと?
……って、今はそんなことじゃなくて。
「い、いやいやだからってダメでしょ。ほら、俺たち平民だし。向こうはなんと言っても皇帝なわけで……」
「そう? でも今回のコラボってたっくんが同期としてアランくんと仲良くなるためにセッティングしてもらったんじゃないの?」
「え、いやまぁ……」
【コメント】
:へぇ~
:なにそれてぇてぇやん
「……おい、それはまことか?」
「あ、うん一応……」
あれ、なんだろう?
俺の気のせいじゃなければ、皇くんの声色が若干やわらかく……。
「ね、だったらやっぱりお友だち同士で仲良くなろうと思ったら敬語よりタメ口の方がいいじゃない。それに私に至っては事務所の中だと先輩だし」
「むぅ……。だがしかし、朕はこの世のすべてを統べる皇帝。やはり保つべき威厳というものが……」
「ふふ、そこはご心配なく。私も花咲家を統べるママだからバッチリ対等なので」
「いやそれ対等なんですかね? 国と家て……」
「なるほど……そなたの言い分は理解した。よかろう、ならばひとまずは二人とも好きに呼ぶがいい」
「ってこっちはこっちでなぜか納得してるし! いいんだ!?」
【コメント】
:草
:アランキングダム(人口100億人)=花咲家(人口2人)
:よし、対等だな
:さすがまーたん・・・スケールが違うぜ
:スケール(ぺぇの大きさ)
「ええぃうるさい! 朕がいいと言ったらいいのだ! ……して、聞くが貴様も何かを統べているのか?」
「え、俺? いや俺は特には――」
「たっくんはママのおっぱいを統べてます」
「統べてないけど!? てかおっぱいを統べるってなに!?」
「……ほう、やはり貴様も傑物の類であったか。よかろう。ではそなたら二人には特別に朕を好きに呼ばせてやる」
「えぇ……」
【コメント】
:おっぱいを統べる男、花咲ベイビ
:↑かっけぇ……
:↑どう考えても変態なのに若干威厳を感じる
:↑ベテランA〇男優かなにかかな?w
:たっくんまーたとばっちりで草
いやホントだよ。
……でもまあ本人がいいって言うならとりあえずはいっか。
「え~っと、じゃあまあお言葉に甘えまして……アランくん」
「なんだ?」
「ああいや、せっかくだから配信内容の説明をお願いしようかなって。なんかうちのマネージャーさん経由で聞いたけど、今日ってアランくんが企画を考えてきてくれたとか」
「ふむ、そのとおりだ。今日はそなたらのために特別に以前朕の配信でもやって好評だったものを持ってきてやったぞ。光栄に思うがいい」
「「へぇ~」」
【コメント】
:おお!
:さすが陛下!
:え~なんだろう?
:もしや『陛下と征く銀河系征服するまで終われま10』か!?
:いや『アランキングダム式拷問講座』じゃね?
「ではゆくぞ。今日の企画はその名も――『誰よりも朕を知り尽くしてるのは誰だ!? 第1回“皇帝力”テスト!』だ!」
「こ、皇帝力テスト!?」
「やることは簡単だ。これから事前にSNSで募集した朕に関するクイズを出す。それをひたすら朕と貴様で答えていき、どちらがより正解できるかを競うというものだ。ちなみに前回は朕vsコメントの臣民で対決した」
「えっ勝負!? でもこれってアランくんに関する情報のテストなんだよね!? 俺勝ち目なくない!?」
「うむ」
「うむ!?」
【コメント】
:草
:うむ(即答)
:さすが陛下ww
:さも当然のようにww
「朕の国にはこんなことわざがある。“勝たなければ死あるのみ”」
「勝たなければ死あるのみ!? なにそれこわっ!? どんだけ勝利第一主義なお国柄なんですかっ!? あと全然ことわざ感ゼロ!!」
「黙れ。朕がことわざと言ったらことわざだ」
「えぇ……」
【コメント】
:草
:容赦ないww
:すまんなたっくん
:陛下は生粋の負けず嫌いなので
:これは邪知暴虐の王www
:まあでもそんなに心配しなくてもいいけどな。たぶんベイビくんの想像しているような展開にはならんから
:うんうん
え、そうなの? それはいったいなんでまた……?
普通に考えたらアランくんに関するクイズなんだから、本人相手に勝ち目なんてないような気がするけど……。
「あ、そうだ。ところで解答するのが俺とアランくんだけってことは、ウチのママはなにを?」
「出題者だ。もとは同期と言うことで朕と貴様だけのコラボと聞いていたからな。今回はアシスタントを担当してもらう。よいな?」
「は~い」
ああ、だから配信前に母さんを進行役に指名したのか……。
たしかに母さんの参加が決まったのってかなり直前だったもんな。俺とアランくんが待機してるところにいきなり「え、同期でコラボ? ママもまだ新人くんと絡んだことないから絡んでみたい!」とかなんとか言って。
「わかりました。それじゃあ出題者がママ。解答者が俺とアランくんの二人。そしてより多く正解した方が勝ちの勝負ってことで」
「うむ。よし、では早速一問目に行くとするか。準備はよいな――アカ」
「あ、はい」
……アカ?
ああ、赤ちゃんの“赤”か。呼び方のクセすごっ。
(俺もおっぱいを統べてぇ……)
次回は6/10(火)更新予定です