ルミナ先輩②
「え~……まあそういうわけでですね。とにかくルミナ先輩においては、お忙しいところわざわざありがとうございます。今日はお世話になります」
「ふっ、お忙しいところってなんか社会人みたい言い回しだね。ま、今日はよろしくね~」
【コメント】
:よろしく~
:たっくん礼儀正しい
:さすが現状Vランド内常識人ランクNo.1だけある
:新人がトップになっちゃう事務所って・・
:気にしなくてええんやで
:そうそう。どうせルミたんは毎日ヒマだから
「え、そうなんですか? 配信とかで忙しいのでは?」
【コメント】
:配信“だけ”……だな
:それ以外はなにもせんし
:なんなら家から一歩も出ない
:それどころかベッドからすらも・・
「ちょいちょいキミたち。それは言い過ぎなんじゃないかな? ルミたんだって少しくらいなら出るから。昨日もフツーに出たし」
「え、そうなの? 珍し~!」
「ちょっとママみんまでひどくない?」
「ルミナ先輩ってそんなに外に出たがらないんですか?」
「あ~そっか。たっくんてその辺のハナシもしかしてあんまり知らない?」
「うんまあ……ある程度までしか。一応まーたんとコラボしたときの会話とかで、割と出不精なのかなって雰囲気は伝わってきたけど……あとはとにかくゲームがめっちゃウマいってことくらいかな」
そうなのだ。
基本的にまーたんの専任だった俺の場合、同じVランドのライバーと言えどもそこまで詳しくはない。
知識があるとすればまーたんとのコラボorまーたんの出演する公式配信でごいっしょになったときに見知った情報程度。
初コラボで先輩に失礼があってはいけないということで、配信が始まる直前までwikiなどで情報を詰め込みはしたんだが……。
「そうね~……割と、どころかもはや生粋のってレベルよね。なんなら出不精界の風雲児と言っても過言じゃないかも。ね、星人さん?」(※星人=ルミナ先輩のファンネーム)
【コメント】
:はい
:せやで
:スーパースターや
:泣く子も黙るヒキニート界のエース
:出なさ過ぎてVランド内でもその姿を知る者はほんの一握りとか・・
:ある種の妖精みたいなもんや
:仮に外に出たとしたらその日は空から雹が降ると思った方がいい
:あるいは槍か
:もしくはミサイルという説も
:北からミサイルの発射速報流れる度に「もしや今日ルミたん外でたんか?」ってSNSがざわつく流れ好き
「ミサイル……」
「いやいやいや、だから誤解だってば。てかキミたちさぁ、そうやって毎回毎回ルミたんを出不精だのヒキニートだのバカにするけど昨日とか一応ちゃんと外でたからね? さっきも言ったけど」
【コメント】
:えぇ……!?
:う、嘘だろ……?
:あのルミたんが……!?
:なん……だと……!?
:ルミナ……お前、変わっちまったな
:この裏切者っ……!!!
:ヤベェぞみんな、今日が地球滅亡の日だ……
えぇ、いやそんなに驚くの……?
もはや阿鼻叫喚じゃん。いったいどんだけ珍しいんだよ……。
「え、ちなみに出たってどこへ行ったんですか? 買い物とかですか?」
【コメント】
:これでまさかのゴミ出し程度だったら呆れるがw
:いやさすがにコンビニくらいまでは行ったんじゃ・・
:普通に収録じゃね?
:免許の更新とかで泣く泣く……とみた
「は? そんな遠くに行くわけないじゃん。玄関からチョロッとつま先を出しただけだよ」
「しょっっっぼ!!!!」
【コメント】
:草
:草
:草草草
:おいw
:ルミたん・・w
:思った以上にショボくて草
:まずもって行為として意味不明すぎるだろwつま先だけてwww
:それもう外出るってレベルじゃねーぞ!!!
:舐めてんのかwww
「ふーんだ! 舐めてんのはそっちじゃい! 誰が外になんか出るかバーカ! あほちん! このルミたんを外に出そうなんて10億年早いんだよ!!」
「えぇ……」
【コメント】
:コイツww
:10億年は草
:さすがルミたん様……安心しました
:正体現したね
:相変わらずすぎるwwwww
:案内人なんだから早く星の案内しろや
「は? そんなんするわけないっしょ。つーかできんし。こちとら星どころか家の近所に何があるかすらいまだに知らないっつの。お前らこそ星なんかよりハロワで職の案内でもしてもらいに行け」
【コメント】
:おいやめろ
:なんだぁ、テメェ……?
:家の近所くらいは知っとこうよw
:たしかそこ10年住んでるとか言ってなかった??
:どんだけ出てねーんだwww
突然の煽り口調にピキりつつも笑いに満ちるコメント欄。
……あーなるほどな。なんとなくルミナ先輩と星人さんたちとの距離感が分かってきた気がするぞ。
要するにこのプロレススタイルがルミナ先輩のチャンネルの真骨頂というわけだ。
そしてそんなルミナ先輩に対し、うちの母さんの反応はと言うと――。
「ねーママみん! ルミたんガンバったよね? 一瞬でも外に出たんだから!」
「ふふっ、がんばったわねルミちゃん。えらいえらい」
「ママみん! やっぱりママみんだけだよルミたんをわかってくれるのは! 大好き!!!」
「あらあら」
【コメント】
:てぇてぇ
:さすママ
:まーたんがそうやって甘やかすから・・
:やっぱママルミよ
まるで画面越しに抱き合わんばかりの同期同士のやり取り。
それとともに配信に流れるほんわかとした空気。
……あ、なるほどこっちはこっちでそんな感じなんですね。まあこの関係性自体はまーたんの配信で知ってたけども。
「ちなみにですけど、なぜつま先だけを……?」
「いや寝ぼけてトイレのドアと間違えてさ。で、開けた瞬間に太陽の光がパァッと入ってきてウギャーー!って叫びながらソッコーで引き返したってわけ」
「ヴァンパイア!?」
【コメント】
:日光に触れると焼け死ぬ体質かな?
:ウギャーw
:大変だったね……今度ニンニク送るよ
「いらんわそんなん。てかそれ傷口に塩じゃん。寄越すならせめてたっかい十字架にしろ」
「え、ルミちゃんアクセサリーとかつけるっけ?」
「ううん、オークションで売ってゲーム買う」
【コメント】
:おいwww
:ファンのプレゼントを平然と売ろうとすなww
:鬼畜すぎるwwwww
「いやいやファンならここ喜ぶところだから。自分が貢いだブツがゲームと言う名の血肉になって配信に貢献できるんだよ? ――さて、そんなルミたんのめくるめく外出エピソードも披露し終わったことだし、そろそろゲームの方にいきますか」
「ゲーム……ああクリハンか」
そういえばそうだった。前座の話が濃すぎてちょっと忘れかけてた。
……ていうか今のって外出エピソードって言っていいのだろうか?
「どうしたのベイビん? なにか疑問でも?」
「ああいえ……そ、そうですね! それじゃあ張り切ってはじめましょう!」
「やった~楽しみ~」
(めちゃくちゃどうでもいい話ですが、自分はみこスバモンハン配信のハチャメチャ感がとても好きです)