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デビュー配信③

「はぁ……はい、それじゃあ気を取り直しまして」


【コメント】

 :溜め息w

 :たっくん早くもお疲れで草

 :デビューしたてのフレッシュな新人とは思えないやつれ具合ww

 :おい大丈夫か?この赤ちゃんなんかくたびれてるぞ?

 :お~よちよち

 :赤ちゃんなのにちゃんとお母さんにツッコめててえらい

 :そもそも赤ちゃんなのにこんだけしゃべれるとか発達しすぎだろ


「はいはいどうもどうも。まあ俺が流暢に話せるのは大人の事情ってことでそこはご容赦いただけますと幸いなんですけども……」

「オトナの情事!? ダメよたっくん! ママそういうのはまだ早いと思う!」

「すいません静かにしてください」


【コメント】

 :まーたんwww

 :ダメだこの母親止まんねぇw


「ちょっ、マジでもう話が進まないから……えーとにかくですね、ここからはちゃんと気を取り直して配信を続けていきたいんですけど。というのも、今日はこの場をお借りして俺からみなさんにぜひお願いがありましてですね」


【コメント】

 :お?

 :お願い?

 :なになに?


「はい。まあ正確にはお願いっていうか相談っていうか……今回はどうしてもみなさんといっしょに“あること”を決めていきたいなと思ってるんです」


【コメント】

 :あること?

 :どこの保育園に入るかとか?


「いや保育園じゃなく……てかそれってそもそも俺が決めることでもないし! 『う~ん、ボク的にはこことここの保育園で迷ってるんでしゅけどみんなはどう思うでしゅか?』――なんて赤ちゃんこわすぎるでしょ!」


【コメント】

 :草

 :それはこわいw

 :カタログ片手に真剣に自分の保育園を選ぶ赤ちゃん

 :絵面がすごいw

 :5歳ですでに進路に悩む時代か・・


「そうじゃなくて、今日決めたいのは“ファンネーム”です」

「あーファンネームね。いいわね、なんか初配信っぽい」

「でしょ? 実はここ数日ずっと初配信なにしようかなって迷ってたんですけど、これが一番無難かなと思いまして」

「それにやっぱり親しみやすい愛称があるとリスナーさんともグッと距離が縮まるしね」


【コメント】

 :うんうん

 :ええやん

 :たしかに定番やね


「ですね。いろいろ他のVTuberの方の初配信もチェックしてみたんですけど、なんだかんだこれ系がケッコー多かったです。まあギリギリまで決断が遅くなっちゃったせいで、SNSとかで事前に募集できなかったのがちょっと不安なんですけど……」


【コメント】

 :気にしなくていいよ

 :まあなんとかなるっしょ

 :いけるいける


「ありがとうございます。というわけで、早速なんですけどみなさんにはぜひコメントでどんどん案を出してもらえればな~と。で、最終的にはいくつか候補を絞ってからアンケートで決定……みたいな流れを考えてます」


【コメント】

 :おk

 :はーい

 :了解!

 :たっくんのファンネームかぁ……

 :どんなのがいいかな?


「あ、ホント全然思いつきで構わないですよ。まあこういうのって基本的には俺の見た目とか名前とかに即したヤツが多いのかなって思いますけど」

「はいは~い。それってママもアイディア出していいのかな?」

「え? あーまあ別にいいっちゃいいけど」

「やったー!」

「……ただ一応念押すけど、変なのはダメだよ?」

「ふふっ、わかってるわ。私だってたっくんのファンだもん。なんならぶっちぎりの第1号だと思ってるし。ちゃんとみんなにとっても呼びやすくて恥ずかしくないのを考えるから任せて」

「だといいけど……」


 なんだろう……そこはかとなく不安だ。

 ……でも考えてみりゃ母さんもVTuberだしな。しかも俺からすれば超大先輩。

 ゆーても配信で使えないような変な名前を出してくる可能性も低いだろうし、ここは委ねてみるのもアリか……。


「はい! できました!」

「え、もう?」

「うん。しかもかなりの自信作です」

「へーマジか」


【コメント】

 :おお!!

 :自信作!

 :そんなにか

 :さすがまーたん

 :これは期待大

 :つーか思いつくの早いな


「いやホントに。俺なんて昨日試しに考えてみたけど全然思いつかなかったのに」

「ふふっ、ママだって伊達に何年もVTuberやってないもの」

「あーたしかに配信者ってみんな頭の回転早そうだもんね。コメント拾ってすぐにポンポン返したり」

「でしょう?」

「なるほど、これはたしかに期待してよさそうかも。で、どんなやつ?」

「う~んとね。とりあえずいくつか思いついた中で一番の自信作は“おぱチュパ民々”なんだけど――」

「バカじゃないの?」


 バカじゃないの?(大事なことなのでry


【コメント】

 :おぱチュパ民々www

 :はいアウト

 :出オチすぎるww

 :みんみんw

 :ギョーザ屋かな?

 :これはひどいwww


「え~! なんでなんで!? なにがダメなの!?」

「なにもかもだよ! なにおぱチュパって!? それってあれでしょ!? この前の謝罪配信の爆弾発言のやつでしょ!?」

「うん」

「うんじゃないよ! こんなんでよくもまあ自信作なんて言えたもんだよ! いくらなんでもヒドすぎるだろ!」

「えーでも赤ちゃんと言えばオッパイ吸ってなんぼだし割とアリじゃない? むしろ私的には思いついた瞬間、『わーこれたっくんにピッタリなやつ!』ってすっごいテンション上がったんだけど」

「いやいやいや、そりゃ俺の見た目的にはそうかもしれんけども……でもだからってなんでそれがファンのネームにまで発展するのさ。俺はともかくみんなは別に赤ちゃんじゃないじゃん」

「そう? けど今ここにいるリスナーさんって、たぶんだけど割とこの前の謝罪配信きっかけで遊びに来てくれた人も多そうよね?」

「ん? あーまあそりゃ基本的にはそうだとは思うけど……」


【コメント】

 :せやろね

 :アーカイブ見た。おもしろかったよー

 :正解

 :まあそれが一番太い導線ではあるわな

 :はい、“ママっ子”です! ※まーたんのファンネーム


「あ、ほらやっぱり。それにたっくんだって元はママっ子さんだよね? この前私のファンだって言ってたし」

「まーまーまー……でもそれが?」

「だからね、ここにいるリスナーさんたちは潜在的にはみーんなたっくんと同じになるのかなって。で、同じということは立場的にも私の息子同然。そして息子というのは三度のご飯よりママのオッパイが大好きな生き物だから……あーら不思議」

「いや不思議すぎるだろ! なんだその汚らわしい方程式!!」


【コメント】

 :草

 :草

 :無理やりすぎるww

 :でも残念ながら否定はできないんだよなぁ……

 :やれやれ気づかれちまったか

 :おいおい天才かよ

 :これは名探偵まーたん

 :そっか……俺っておっぱいだったんだ(錯乱)


「いや違うから! やめろ乗るんじゃない! 頼むからみんな帰ってきてくれ!」

「ママのお腹の中に?」

「ちげぇよ! ……だーもうとりあえず却下だから! そもそも配信でそんな危うい名前連呼してたらいつかBANされるわ! ただでさえどんどん規制が強くなる世の中なのに!」

「え~? されるかなぁ?」

「されるだろ! よしんばされなくてもフツーにイヤだわ! だいたい親としてもなんか気まずいだろ! どうすんのパッと配信つけて俺が『おぱチュパ民々のみんな~』とか言ってたら!」

「“は~い!”ってコメントする」

「するな! 帰れ!」


【コメント】

 :帰れwwwww

 :ノリノリでコメントしてて草

 :まあ帰っても結局同じ家には変わりないんですけどね

 :いっそ家にいたらいたで「呼んだ~?」とか言ってまた部屋に突撃してきそうw


「はぁ……はぁ……」

「あらあら、たっくん大丈夫? ダメよ、あんまり叫びすぎてノドなんて壊しちゃったら。配信者にとってノドは命なんだから」

「いや誰のせいだと……」

「とりあえずいったん水分補給しましょ。ペットボトルのお茶でいい? さっきママ持って来ておいたの」

「あーうん……ありがとう」

「あ、でもそれこそノドを潤すなら母乳の方がいいかしら? ごめんね、すぐ用意するから――」

「なあもうホントに帰ってくれないか!!!?」


【コメント】

 :言ったそばからwww

 :あかん、たっくんのノドのHPがw

 :それこそってなんだよww

 :結局チュパチュパルートに入っとるやんけw


「ちょっ、とにかくお茶をもらえませんか……?」

「うん。はいどーぞ」

「ゴキュゴキュ……プハァー」


 あーやれやれ身が持たん……。

 とにかく先に進めよう。


「え~というわけでですね。まあこんな感じ……いやこんな感じだとさすがに困るんですけど、引き続きアイディアについては募集していきますのでどんどんコメントしてもらえればと思います」

「ママっ子さんたちもよろしくね。これからずっと使っていくものだし、キュートな案をお待ちしてます」

「そうですね。まあキュートかどうかはともかく、元は同じママっ子のよしみとして俺からもなにとぞよろしくお願いします」


【コメント】

 :は~い

 :まあだいぶハードルは下がったからいけそうではある

 :たしかにさっきのアレに比べればなんでもマシに見えそうw

 :よっしゃいくぞお前ら!

 :おお!!

 :任せろ!!


 うんうんみんなやる気もあって頼もしい限りだ。

 はてさて、いったいどんな候補が出てくるやら。








 ~そして30分後~



「……ふぅ。なんだかんだケッコー出そろったね」

「そうね。いろいろ拾ってたらいつの間にかこんなに」

「いやぁこんな短時間でみなさんどうもありがとうございました」

「ね~。でもこれだけよりどり見取りだと、今度は逆に絞り込む方が難しくなってくるんじゃない?」

「う~んそこなんだよね。たしかにこの中から最終的には一つだからなぁ。これは相当大変な作業に――」



 ①おぱチュパ民々

 ②チ〇ビの友

 ③チュパチュパチャップス

 ④おしゃぶりん(淫語)

 ⑤ばぶりシャス

 ⑥おもらしフレンズ

 ⑦永遠の0(精神年齢)

 ⑧合法乳しぼり民

 ⑨母乳戦隊ベビレンジャー




「…………いやホントに大変すぎるんですけど!!!?」


う~んこれは絶望のラインナップ


次回は5/2(金)更新予定

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