表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/57

デビュー配信②

 そして始まるデビュー配信。

 前日から設けられていた枠にはすでに多数の待機者が。


 この辺はさすが業界大手のVランドと言ったところか……新人である俺からすればド緊張待ったなしの人数だ。

 けれどこうなった以上は臆してばかりもいられない。

 俺は玉森さんや母さんに手伝ってもらってセッティングしたPCの前に座り、ついにその時を迎えた。


「はい、みなさんこんママ~。Vランド3期生の“まーたん”こと“花咲ママミ”です。今日もみんなに癒しのひとときをお届けすべく、茶房(さぼう)“ままみ”のバックヤードから配信をお届けしていきたいと思います。そしてそして~」

「え~……み、みなさんどうもはじめまして。“花咲ベイビ”と申します。この度Vランドからデビューすることになりました新人VTuberです。どうぞよろしくお願いします……!」


【コメント】

 :はじめまして!

 :よろしく~!

 :うおおおかわええええええ

 :この日を待ちわびていた

 :ベイビちゃん!!

 :デビューおめでと~!!

 :かわい~

 :これはかわヨすぎる!!

 :マジの赤子やん!

 :あかん!めっちゃ頭なでてぇ!

 :おめめクリンクリン!

 :やっぱ親子だけあって同じ髪色なんだな

 :え~ほっぺプニプニしたい~!


「わ~! いきなりすごいコメントの数! え、すご~い! どうしようたっくん、ママ涙出てきちゃったかも……」

「いや早っ! そんないきなりくる!? どんだけ感動してんの!?」


【コメント】

 :草

 :草

 :早すぎるww

 :まだ開始1分も経ってないぞw


「だってだって、我が子がこんな大勢の人からかわいいかわいいって受け入れられてるのを見ると親冥利に尽きるって言うか……え~わかる人いない?」


【コメント】

 :うんうん

 :わかるよ

 :まーたん……(泣)

 :アカンもらい泣きしてまう

 :いいお母さんや

 :たしかに息子がデビューとか親だったら感慨深そう

 :(*´σω・、)ホロリ


「いやいやだとしてもこんな開幕早々て……まあそりゃたくさんコメントしてもらえるのは俺も素直にありがたいけども」

「でしょう? でも本当にすごいねたっくん……あ、待って。もしかしてこれからはベイビちゃんとかベイちゃんって呼んだ方がいいのかな?」

「あー……どうだろ? しまった、そういえばその辺とくにちゃんと考えてなかった。てか俺もなにも考えず普段どおり一人称俺だし。え、ママ的にはどっちの方が呼びやすいの?」

「う~ん……少し悩むけど、やっぱりママとしてはたっくんがいいかな。こっちの方がやっぱりずっと呼び慣れてるし。みんなもべつにいいかな? 気にならない?」


【コメント】

 :いいよー

 :まあ今更だしねww

 :あの初配信を経てのこれだからね。ある意味もはや周知の事実でしょw

 :まーたんが一番呼びやすいのが一番だよ!


 周知の事実……か。

 ちなみに俺が例の謝罪配信に登場した本物の息子であることは、すでに世間からは思いっきりバレている。

 そもそも会社の方針として花咲ママミの息子としてデビューすることは事前に告知済みだったし、そうなると当然ながら「誰だ誰だ?」と騒ぐまでもなく「あ、もしやあのときの息子じゃね?」と多くの人がSNSなどで勘づいていた。

 ま、この辺りは会社の方針として「実の親子がVTuberとしても親子で活動!?」という話題性もひっそり狙って俺をスカウトしたあたり、Vランド側ももちろん承知しているので特に問題はないのだが。


「やったー。じゃあたっくんで決まりね。うふふ……たっくん♡」

「え、なに急に……」

「えー、だってついにこうして配信でも正式にたっくんと絡める日が来てうれしいんだもん。これからたくさん思い出つくっていこうね」

「あーそういうこと……てか俺こそむしろ相変わらずのママ呼びでいいのかな? 俺って一応立ち位置的にはこの店のマスコットというか客寄せ的なポジションなんだよね? だとすると店長とかじゃダメなの?」

「絶対ダメ」

「あ、そっすか」


【コメント】

 :一蹴www

 :即答で草

 :あまりにも早い否定……俺でなきゃ聞き逃しちゃうね

 :絶対(←ここ大事)

 :食い気味なのホント草 どんだけイヤやねんww

 :つーかたっくんがまだママ呼び回避を諦めてなかったのも草

 :たっくん……もう諦めよう


「くっ……!」


 ……くそ、どさくさに紛れる作戦だったが失敗したか。

 こうなったらいずれまた別の手を考えよう。


「ところでさ。さっきからウキウキなところ悪いんだけど、実は本題に入ってく前に俺から一つ言っておきたいことがあるんだけどいいかな?」

「え、それってママにってこと?」

「うん、そう」

「え~いいけど……なになに? もしかしてサプライズ?」


【コメント】

 :お?

 :なんだ?

 :日頃の感謝的な?

 :早速の感動展開きたか

 :もしやハンカチ用意しといた方がいい流れ?


 いや、残念ながらそうではない。

 だとしたら俺だってもうちょいウキウキしたテンションでいるとも。

 そうじゃなくて、俺が言いたいのは――。


「あのさ……」

「?」

「……なんでママが普通に俺の配信にいるの?」


 …………。


「え?」

「いや、え?じゃなくて! なにそのキョトンとした顔! むしろどっちかと言うとこっちがえ?だよ! なんかすげぇヌルッと最初からいたけどどゆこと!?」

「それはだって……母親だし?」

「いやいやいや母親だとしてもおかしいでしょ! ビックリしたよ! 俺がおっしゃそろそろ配信始めるか~ってタイミングでおもむろに自分の部屋から椅子持ってきて隣に座り出して! そんでしかもいざ開幕したら普通にしゃべるし!」

「あらそうなの? ごめんねたっくん、ビックリさせちゃって。でも私昨日、ちゃんと言わなかったっけ?」

「は?」


 あれ、そうだっけ?

 だとしたら俺のド忘れor勘違いってこと? でもそんなはずは……。


「ほら、大事な記念日だから間近で見守るねって」

「間近ってそういうこと!? いや近すぎるだろ! そこはもっとなんかこう……ふつうはリビングで待機してるとかそんなんじゃないの!? なんでこんな至近距離で見守ってんのさ! てか見守るどころかガッツリ参加してるし!」

「これぞ令和のリアル逆凸」

「なにそのはた迷惑な逆凸!? ないよそんなの! あったとしてもよりによって今やること!? なんで息子のデビュー配信で母親が本人より先にしゃべりはじめるんだよ!」


【コメント】

 :草

 :マジかwww

 :これ本人無許可だったのかよw

 :てっきり親子だからそういう趣向なのかと思ってたw

 :リアル逆凸は草


「……それとついでにもう一つだけど、そもそも俺たしか部屋の鍵しめてなかったっけ?」

「開けました」

「開けました!?」

「おめでとうございます」

「いやおめでとうございますじゃないから! 年始の挨拶かよ! なに息子の部屋に不法侵入してんの!? それ世の母親が一番やっちゃいけないやつだから!!」


【コメント】

 :たっくんガチギレw

 :あけましておめでとうございますwww

 :たしかに部屋侵入は重罪だわw

 :たっくんのプライバシーゼロで草

 :それはいくらなんでも無法すぎるww

 :つーかどうやって鍵開けたんだよw

 :これぞ母のチカラ(錯乱)


「まあまあいいじゃない。だってママ、たっくんの初配信がうまくいくか心配だったんだもん。これも子を想う親心ってことで……ね?」

「えぇ……いやその理屈でいくと今後もはやなんでもありになってくるんだけど」

「あ、じゃあ見守る感じを出すためにママの画像少し薄めにしてみる? それでちょっとたっくんの背後に重なる感じにして……」

「いやなにその謎の対処法! やめてよ背後霊みたいになっちゃってるから! なんでせっかくのデビュー配信でそんなホラー要素入れなきゃいけないんだよ! 余計イヤだわ!」

「あっ、待ってたっくん!? これ今気づいたけど薄さを元に戻すと……ほら、私がたっくんを抱っこしてるみたい! きゃー!」

「どうでもいいよそんなの! そんなんでいちいちハシャぐんじゃないよ!!」


【コメント】

 :まーたんのテンションwww

 :初っ端から暴走気味で草

 :もはやどっちが主役なのかわかんねぇw

 :たっくんのHPがゴリゴリと削られていく・・・

 :あかんすでにめっちゃおもろいwなんやこの配信w

 :ザ・親子漫才!

 :そうそうこれが見たかったww


 あーもうコメント欄も謎に喜んでるし!

 おぃいいなんだよこのデビュー配信! 出だしから早くも俺の手に負えなくなってるんですけど!!?



たっくんのライフはもうゼロ


次回は4/29(火)の予定です!(もっと更新頻度を上げたい……)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ