儂らが来たっ!
嘘だろ……上がらない!?
崖っぷちに上半身を乗せたままのお爺さん。
沈んで溺死する可能性は無くなりましたが、この体勢のままでは再度沼に落ちる可能性は否定できません。
何とか安全圏に、と思い引っ張るも全然動きません。
私は勘違いをしていました。
先程全力を出せばイケると思ったもの――それが錯覚である、と。
何故なら沼とはいえ先程までは若干浮力が働いていたのです。
今は完全に陸の上。
素の重さが圧し掛かります。
汗だくになりながらお爺さんの手を引く私。
このままでは……
焦燥に駆られた時――救いの手が差し伸べられました。
「大丈夫か!」
「どれ、手伝うぞ!」
一連の騒ぎを聞きつけてやってきた、二人のお爺さんが参戦。
後に一緒に表彰されるお二人です。
溺れていた方と同年代だというのに危険を顧みず手伝ってくれます。
この時気付いたのですが――
ヘドロで汚れた身体を支えても滑って動かないんですね。
一緒に救助してくれたこの方がその事を指摘し、方法を転換。
衣服を掴み引き摺り上げる方式に変えました。
これが大成功。
お爺さんは遂に無事陸地へと辿り着いたのです。
やっと一安心、と思えばとんでもない。
外傷が無いか全身を観察すると、身体の震えが止まらず眼が虚ろです。
これはもしや――