震えるぞ身体、燃え尽きるほど酷い
困難に直面した時、一番有効なのは先人の知恵に学ぶ事です。
例えばこういう時に役立つ格言などはないでしょうか?
高速で思考する脳内を激しくパルスが迸ります。
水辺。
苦難。
ん? あの時、波紋戦士が父の言葉から閃いたのは確か……
逆に考えるんだ、自分。
私の手が届かないなら、お爺さんに掴んでもらえばいい!
さっきから気にかかっていたもの。
それはご婦人の荷物。
バックの下から覗くそれは――
「貸してください、それ!」
そう、それは杖。
何の変哲もない歩行杖がこの距離を埋めてくれる。
私は杖の石突部分を持つとお爺さんに伸ばします。
届くか……届け!
「掴まってください!」
徐々に沈み今や水面から手首のみ露出した右手。
その手に杖の握り部分が触れた瞬間――
力強く、確かに握り返す感触。
「そのままで!」
固定されたのを確認し力強く引き寄せる。
浮力が働くせいか体格の良いお爺さんの身体が徐々に近付いてきます。
そしてついには直接手を取れる距離になりました。
「上げますよ! せーの!」
全力で引き上げようとする私。
しかしその瞬間、私(人類)は思い知りました。
脱力仕切って水に濡れた人間の、理不尽なまでの重さを。