宇宙と万華鏡、まんなかに僕ら - The arrogance of youth
去り際はあまりにも軽率で、淡白で。嫌味げに僕らの足音が響いた。
「じゃあねバイバイ」が混雑した大通りを飛行機のように飛んで、やがて名も無き道に落ち葉として枯れ落ち、気づかぬうちに僕らがそれを踏みつける。
時が止まり、僕らだけが息をしている世界はどんなに美しいだろうかと、想像を独り歩きさせる毎日。
つまらない日々、つまらない人々、誰も僕らの価値に気づいていない。だから僕は君以外の全てを軽蔑し、君だけを愛すことにした。
僕らはこの世界の誰よりも美しく、僕らの考えはこの世界の誰よりも正しい。
そう思って僕らは今日も、未来を語り夢を語り、それから他人を語って、今日もつまらなかったと要約する。無意味な24時間に感情を抱くわけもなく、どうしようもないから飴を舐める。
僕らは互いを理解できずに、ただ明日に失望して悟りを開き、それから宇宙規模の話をして、やっぱり分かり合えないね、と目線を落とす。
太陽が、そろそろ帰りなさいと僕らに呼びかけて堕ちていった頃。2人で夜を越したいね、とほどけた靴紐を見ながら笑い合う。そのうち、いつ帰ってくるの、と親からの便りが風に運ばれてやってきて、そんなの上辺だけの心配だろ、と僕らは風を睨む。それでも年功序列に抗う気力はないから、もうそろそろ帰らなければ、と僕らは気怠げに立ち上がる。
ああ今日も夜を越せなかったね、「じゃあねバイバイ」。
いつか、2人で旅行に行きましょう。僕らはきっと、あの一番星より輝いているはずだから、時を止めたいと願ったあの日の夢を叶えられるよ。そうすれば夜を越さずに僕ら2人で宇宙を眺め、遠いあの日のように未来を語り夢を語り、尽きない話に身を寄せ合って、つまらない今を塗り替えられる。そんな気がした。
その宇宙の規模が万華鏡から見える、それと同じくらいだと、僕らは気づかないふりをする。「じゃあねバイバイ」のあの惑星に、万華鏡を覗いたら行けるはず。赤黒かったあの日々を、爽やかな青春に塗り替えて、飛ぼう。
小さな万華鏡の穴を分け合って覗く僕らはきっと、世界の誰よりも嘘が上手い。