心理戦!おてんば美少女!
アルセーヌの問いかけにしばらく黙り込んだセリーナは、重い口を開いた。
「答えたくない。だって貴方のこと信用してないもの」
「短くはない間、共に過ごしたはずじゃがのう…」
「それと信用できるかは別だと思うな~。素性も何も分かったものじゃないし」
「お互い様というわけじゃな。いいじゃろう、ならワシが何者であるか教えてやろう」
「…」
「怪盗じゃよ。とは言っても帝国政府御用達のじゃがな。今回もその仕事で公国に潜入していたのが、しくじったのじゃよ」
「そうだったんだ」
「今度はそちらの番じゃよ」
怪盗だったのかぁ。アルセーヌで怪盗だと、主要ではなくても小説に関係していたのかな。さて、どこまで言ったものか。
「ん?何のこと?」
「そう出るか小娘…」
「話すなんて約束してないもーん!それに、こうなることは何となく分かってて言ったんじゃないの?」
上目遣いで覗き見ると、アルセーヌはニヤリと口角を上げた。
「つくづくこの集落に置いておくには惜しいのう…。予想通りじゃよ。残念じゃが連れていけないということじゃ。」
「私も協力してあげるよ?」
「小娘1人に何が出来るというのじゃ。それに信用ならんしなぁ」
鼻で笑って上から見下ろしてくるアルセーヌを見て、セリーナはさも失望したかの様な冷めた表情で見つめ返した。
「ならいいや。アルセーヌ、私はがっかりだよ。怪盗ともあろう者が」
「身勝手な…」
「身体強化はボス達に習ったもので、隠密も出来るよ。知能に関してはこんな感じ。あとは知りたきゃ自分で盗んで、怪盗アルセーヌ」
「…それだけ分かれば十分じゃ。3日後に公国へ向けて発つから準備をしておけ」
そう言い残すと、アルセーヌは一足先に帰路についた。
ふぅ、回りくどくはなったけど、前世は有耶無耶にして何とか連れて行ってもらえることになったね。心理戦とか苦手なんだよね~。前世以来じゃないかな。
何が起きたのかの流れだけど、どうやらあのおじさんは政府御雇の怪盗で仕事に失敗してこの森に来たと。
ここからが問題だけど、政府は賊の存在を公認するはずがない。失敗をしたおじさんは無事に帰っても帝国に消されるし、公国で仕事を続行するつもりだった。だから、私の能力を測るためにもあえて正体を明かして、暗にそれを示唆したんだ。仮にというか、当初は連れていくつもりはなかったんだろうけど、森の奥地に住み着いている幼い少女1人に怪盗って明かしても問題ないって踏んだんだろうなぁ。
それをクリアした私に、次は一緒に仕事が出来るのかを試してきたけどそれもクリアしたのだろう。
今のやり取りを通して私の中でもいつもの可愛いセリーナちゃんと、大人な花さんの住み分けの良いバランスを見つけたかもしれない。いつもはセリーナでいい。身に危険が迫るタイミングや必要な時だけ花に切り替えればいい。私はそれでいい。
「ふぁぁ~疲れた。猪さんと果物食べに行って遊んでから帰ろっと」
まだ日は暮れておらず、遊ぶ時間は十分に残っている。鼻歌を歌いながらスキップをしている様子を見たモリビト達は、何か良いことがあったのだろうと暖かい目でセリーナを見送っていた。
ん?悪いことをする罪悪感はないのかって?
大丈夫。こういうことには慣れているから。
次回:爆誕!怪盗美少女!
ついに怪盗としてのセリーナが動き出す
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