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転生!お嬢様!

 時は20✖✖年の大晦日、暗いオフィスの一角に明かりが灯っている。


 カタカタカタカタカタカタカタカタ


「これで、終わりだああああ!!」


 タンッ!!


 エンターを力強くクリックする音がフロアに鳴り響く。


「これで今年も仕事納めだ…ってやば!もう年跨いじゃうじゃん!」


 時間は11時53分を回っていた。頭がズキズキする。最近カフェインを飲み過ぎなのが影響しているのかもしれない。両手を組んで上に伸ばして、椅子の背もたれに体重を預ける。


「ん~今年も頑張った私。来年も頑張るぞ!えい!えい!おー!」


((えいえいおー!!))


「とうとう幻聴まで聞こえ始めてるよぉ。明日も仕事だし早めに帰らないと」


 次の休暇で溜まっている録画みないとな。あれ、いつから休んでないんだっけ?有給取るのもありかも…

 急いで帰宅するために勢いよく立ち上がった次の瞬間


「ありゃ…?」


 ゴンッ


 足の力が抜けて思いっきり後頭部をどこかにぶつけてしまったようだ。痛みは不思議と感じないが、後頭部がドクドクと脈打っている感覚がする。


「うっそぉ、これ、、や、、ばい、か、、も」


 霞む視界の中、自分の前で踊る妖精のダンスを見つめる。わざわざ見える位置で踊ってくれているらしい。子どもの頃の発表会を思い出す。懐かしいなぁ、、楽しかったなぁ。

 またあの頃みたいに遊びたい。学校から帰ったら友達と遊んで、好きなテレビを見て、、。どうしてだろう、ぽろぽろと涙が出てくる。いつから生きているのが楽しいって思えなくなったんだろう。

心配してくれたのか、妖精たちがこちらに寄ってきて覗き込んでくる。人の優しさを感じたのはいつぶりだっけ、、人か怪しいけど。


「あ、、あ、、りが、、と」


 ゴーン ゴーン


時間は0時を回って人々は新年を祝い合う。そんな世間の賑わいの最中で、新藤花はひっそりとその生涯を終えるのだった。







「んぎゃああ、おんぎゃあああ」


「はぁいは~いお嬢様~お腹ちゅきまちたね~」


(で、どうしてこうなった?)


乳母の乳房に吸い付きながら考え込む。ノスタルジーな気持ちになっていて、我ながら良い引き際だったのではなかろうか。いやさ、確かにやりたいこといっぱいあったし悔いしかなかったけどね。


「あらまあ気難しい顔しちゃって、せっかくのお顔が台無しでちゅよ~」


「あうう」


「げっぷしましょうね。よいしょ」


トントン


「げーげー」


「はい~よくできまちたね~」


最初は勿論夢かなんかだと思っていたけれど、そうではないらしい。どうやら転生というやつをしてしまったみたいだ。というのも、生まれてから早半年とちょっと、簡単な言葉については理解できるようになっていた。そして聞こえてくる話が現世とは思えない内容なのだ。魔法云々とか帝国がどうのとか…


「あうああうああ!!」(っかああ!魔法の世界とか最高だろー!!)


短い手足をジタバタさせる。まだ赤ん坊ということもあって、これ以外にやることが限られている。そうそう、最近寝返りがうてるようになったんだ。こうやって手と体で勢いをつけて


「だああ」(ほら出来た)


「あらお嬢様お上手ですぅ~天才です!神童でちゅね~!」


「うああううあう」(ふっ、褒めても何も出やしないっての)


ブリィ…


「は~いオムツ替えましょうね~」


解せぬ


半年ちょいもあって寝返りだけしていたのかというと、そんな訳はない。せっかく授かった第二の人生、やりたいことだけ生きていくって決めたんだ。何かしらやってやろう。

とは言っても、具体的にこっちの世界で何か出来ることって何なんだろう。


「うぅ~あうあう」(一生ぐーたらなニートもなんか違うしなぁ)


「スッキリしましたね~」


 いやー、今考えてもどうしようもないや。どうせ出来るのは食って寝ることだけなんだし。難しいことは明日の自分に任せればいいや。今の私の仕事は、たくさん食べて寝て大きくなることだよね。うん、そうしよう。






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