分岐点!怪盗美少女!
本日2話目です。
どうも、セリーナです。久しぶりに心の中でぶつぶつ話している気がします。だってしょうがないじゃない、また独りぼっちになっちゃったんだし。
「水球」
前住んでた集落に1カ月に1回くらいのペースで帰っているんだけど、その間も修業は欠かせない。絶対に師匠を見返してやるんだから。ん?なんで魔法で水を出さなかったのかって?あの街で魔法使えるのばれたらまずいでしょ。威力の制御もまだ出来ないから確実に浮く。まぁ師匠もいなくなっちゃったし少しくらい見せちゃってもいい気がするけどなぁ。
「2級レベルとか難しすぎるよ…まだ1級レベルも制御できないのに」
制御の訓練をすることになるなんて。これも隠密が大切な怪盗への第一歩なら頑張るしかない。そうそう、言い忘れてたけど魔術師の段階として5級から1級までが一般の魔術師らしい。その先は3級から1級、亜神級までの宮廷魔術師があるみたい。冒険者とは階級の基準が違くて、確か「世界への干渉深度」によってその級が決まるんだって。単純な強さとは違うから天性の才能によるところが大きいらしいよ。まぁその点私は
「天賦の才に恵まれちゃったかぁ。いや~まいったまいった」
底が知れないなんて伸びしろしかないよね~。以前師匠に「お主の全力を見せてみるのじゃ」って言われたから火球を超高温で上げ続けたことがあって、周りの地面が融解した辺りで止められてしまった。それ以後水系統の魔法以外と全力を出すことを禁止されちゃったんだ。それにしても、1級以降は国に召し上げられちゃうなんて、そこら辺の力関係どうなってんだろうか。
「あっやっちゃった」
考え事をしていたセリーナは、水球への意識が疎かになって一気に巨大化してしまった。辺りを見渡すが、森にやって動物たちが巻き込まれたらかわいそうだ。こうなったら仕方がないと頭上で水球を壊す。崩壊した水球を形作っていた大量の水が押し寄せて、セリーナは全身ずぶ濡れとなった。
「服を乾かしてから行こう。クシュン」
こうして到着したのは日が沈んで人々が眠りにつく頃であった。
「だいぶ遅くなっちゃったな」
集落でも比較的上の方にある家を目指して歩みを進める。家が見えてきた距離まで近づくと、僅かに明かりが付いているのが見えた。
「師匠…?」
こっちの家に帰っていたのかと考えながら、家へ向かう。暗くて良く見えなかったが、近づくにつれてその異様さを徐々に感じるようになってきた。あれは…
「燃えてる?」
身体操作により強化した足で全速力で駆け寄る。
「うそ、」
家は炭化した骨組みを残すだけで、そのほとんどは燃え尽きてしまっていた。明かりに見えたのはその残り火だったようだ。
「し、ししょ」
惨状を目の当たりにして放心状態のまま、家に一歩また一歩と寄っていく。
ピチャ
「…え?」
足元を見ると、雨が降ったわけでもないのに水溜りが出来ていた。消火活動で水を使ったのかと考えるも、それなら人がいないのは何故なのか。完全に鎮火する前に帰ってしまったのだろうか。覗き込むセリーナを残り火の明かりが照らした。
「…っ!」
予感はした。だが信じたくはなかった。灰色の石畳に似合わないワイン色の液体。セリーナが踏んでいたのは血だまりであった。状況が飲み込めないセリーナは集落の方へ降りていく。勉強づくめであったから知り合いはいない。けれど誰か何が起きたか知っている人がいるはずだと考えたからだ。
「誰か!誰かいませんかー!」
静まり返った集落では空しく響くだけであった。おかしいと分かっているものの、もう一度だけ呼び掛けてみる。
「誰かー!」
「しっ静かに!早く入るんだ!」
集落で最も大きい家の住人らしき人が何かを警戒しながら招き入れてくれた。
「ありがとうございます。あの、私聞きたいことがあって」
「君が彼が言っていた子なのか?」
「彼…?」
「アルセーヌだ。あぁ、玄関ではあれだ。奥の部屋で話そう」
そう言うと、玄関に施錠をしてからさらにいくつかの家具で扉を塞いでから奥に通された。中に入ると、10人近い男性が集まって話していて、その奥では女性達が子どもを寝かしつけていた。人数から考えるにどうやらこの集落にいる全員がこの家に集まっているようだった。
「彼が言っていたお嬢さんだ」
「こんなに早く来るなんて」
「お招きありがとうございます。それで」
「分かっている。ここで何があったかを知りたいんだろう?」
「はい…」
話している話の中心に連れていかれて、ソファーに座らせてもらった。女性の1人が暖かいお茶を持ってきてくれて、口をつける。
「師匠に…いえ、この集落に一体何があったんですか?」
「あぁ。話すとしようか。この集落に起きた悲劇について」
ブクマと高評価よろしくお願いします。