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修行!怪盗美少女!~実践編~

 冒険者協会に所属してから数カ月、今ではすっかりと街に馴染んだ景色ではあるが一輪の花が美しく咲き誇るような彼女の姿に、誰もが心を奪われていた。

 朝になると決まって弾んだ声で鼻歌を歌いスキップをしながら彼女はやってきた。それを暖かい目で見守りながら、街の人々は声をかける。


「おはようございます!」


「今日も元気だね~!ほら、これあげるから頑張ってきな!」


「わぁ~ありがとうおばさん!行ってきます!」


「おはようございます!」


「「おはよう!」」


 協会に元気な声が響き渡ると、彼女が来たことを知った冒険者や職員が笑顔で挨拶を返してくれる。


「ルナちゃん今日もいつもの依頼かな?」


「はい!それでお願いします」


 例の女性職員が受付で手配してくれて依頼書を持ってくる。そこの記名欄にルナと名前を記して手続きを終えて出発をする。


「「いってらっしゃい!」」


「行ってきまーす!」


 今度は付近にある森に向かって歩みを進める。しばらく奥に進んだところで立ち止まると、老年の男が木の陰からゆっくりと現れた。


「それでは今日も修業を始めていくからのう」


「はーい」


 森の中で待っていたのはアルセーヌその人であった。
















 少し前に遡って修行開始初日のこと。


「これからお主の修行を始めるわけだが」


「うん…」


 ゴクリ


 何を言われるのかセリーナに緊張が走る。


「まずは薬草採りの依頼を請け負ってくるのじゃ」


「フンっ!」


 バチーン!


「痛あああ!」


 呪具で制作した巨大ハリセンがアルセーヌの頭にクリティカルヒットした。頭を抱えて悶絶した後にセリーナの方を見たが、ハリセンは既に格納されていて知らぬ顔をしたセリーナが口笛を吹いているだけだった。


「で、修行の内容は?」


「鬼畜かお主は…」


「ん”?」


「何でもないわい。最初は詠唱を用いた魔法術から始めていくのじゃ。そして最後の1時間でワシと実技訓練をしてから目当ての薬草を採取して終了じゃ」


「薬草なのは森に入るため?」


「その通りじゃ。ここ付近の森に入るのには冒険者協会の許可がいるんじゃ。それに基本的に冒険者が使う狩場と初心者用の森は違うからの、バレる心配もないんじゃよ」


 セリーナは言わずもがな、冒険者として最低ランクであるF級からのスタートとなっていた。冒険者にはA~F級の段階があって、Dまで行けば1人前でCで平均以上の優秀な部類、AとBに至っては各支部に1人いる方が珍しいといった具合だ。アルテポレオ支部では()()()()最も高ランクなのはC級である。話によるとその上として帝国指定のS級があるらしいが、一般の冒険者からすると最早都市伝説に近い扱いとなっている。


「なるほど、そしたら取りに行ってくるね!」


 こうして協会で依頼を受けては森で修行をするという日々が幕を開けたのだった。

















「コネクト:水機関銃(ウォーターマシンガン)!」


 ババババ


 水の塊が木々に開けた穴をまじまじと見ながらアルセーヌはセリーナに問いかけた。


「ふむ、上出来じゃが…詠唱でやってないじゃろ?」


「ギクッ」


「声に漏れておるわ!バカちんがあ!」


「ぐぬぬぬ」


「まったく、まあ詠唱と内容が合ってるだけでも問題はないんじゃが」


 修行が始まってから数カ月、セリーナは魔法を使用することは可能だが、詠唱による魔法の行使が未だに出来ていなかった。そもそも無詠唱が極一部の人間にしか出来ないことから、その原因は分からずアルセーヌとしてもお手上げ状態であった。


「詠唱が出来ないなんて、私駄目駄目だ」


「それ魔術師たちの前で絶対に言っちゃいかんからな…。無詠唱の方が100倍難しいんじゃから」


「でも…」


「これ!また目的と手段を見誤っておるぞ。お主は今潜入するための知識の一環として訓練をしておる。違うかのう?」


「…違わない」


「なら怪しくなければ何も問題はないんじゃ。例の試練が終わるまではこの練習も続けるんじゃからそんなに落ち込むでない」


「分かった」


 未だ落ち込むセリーナに向けてわざと明るめの声でアルセーヌは声をかけた。


「次はお待ちかねの試練の時間じゃ!まあ今日もクリアは出来ないと思うが…精一杯頑張るのじゃ」


「むう、今度こそクリアするもん!」


 1時間行われる実技訓練は、アルセーヌが隠した宝物を洞窟から盗ってくるというものであった。内容だけ聞くと簡単そうだが、そうはいかなかった。なんと大量の罠が仕掛けられており、一度でも引っかかるとその時点でゲームオーバーとして最初からやり直させられるのだ。


「ふー、よし」


 以前公国に行った時と同様にお面を被ると、()()()()()()()()。このお面は以前のものではなく、()()()()が少し付いた魔法具であって裏社会の魔法具店で購入したものだった。高いものだと全身に()()()()をかけることが出来るのだが、これは声と髪色のみの認識を変化させるお手頃な商品であった。


「怪盗オビス、華麗にお宝を頂きに参ります」


 そう言い残すと暗い洞窟の中へと走り出して、闇の中へと消えていった。


次回、勇者が登場します(何気に初めての攻略対象…)


ブクマと高評価よろしくお願いします。

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