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修行開始!怪盗美少女!

最低でも週一は出せるように頑張ります

 缶詰め生活のゴールが見えてからのセリーナは、以前に増して意欲的に勉強に取り組むようになっていた。そして本来3カ月を予定していた座学公国編は半分の期間で修了した。そしてアルセーヌ塾(笑)の全課程を学び終えた翌日の早朝に、これまでの全ての範囲を網羅したテストを受けることになった。その量はすさまじく、終える頃には()()()()()()()()()


「うむ。しっかり身に付いておるようじゃな」


 最後の確認のためのテストを見て、頷きながらアルセーヌがつぶやいた。採点をするのに半日を要したのだが、その間セリーナは気絶するかのようにぐっすりと眠りについた。

 翌日、目を覚ましたセリーナは凄い勢いでご飯にありついていた。丸2日飲まず食わずだったことから、それまで学んできたマナーなんてお構いなしにがっつく様子にアルセーヌは目をつぶるのだった。


「これまでよく頑張った。早速じゃが今日からは実践に移っていくからのう。付いてくるんじゃ」


「やっと終わったの…?実感が全く湧いてこないのだけれど」


 1年と数カ月に及ぶ勉強詰めの生活を終えたセリーナの年齢は7歳を迎えていた。箱詰めだったことで日光に照らされる時間が極端に減って、野生児であった頃の小麦色の肌は透き通るような色白へと変化していた。


「早速じゃが街に行くとするかのう。とは言っても徒歩で1日くらいの距離じゃからそんなに準備することはないんじゃがな」


「…何をしに?修業はこの村でやらないの?」


「まあまあ、それは着いてからのお楽しみってやつじゃ」


 必要最低限の荷物を持って出発をしたセリーナは、短くはあるものの久しぶりの旅ということもあって、テンションが上がっていた。


「ふんふふん~♪」


 お散歩お散歩楽しいな~ 久しぶりのお散歩~


 何で久しぶりなんだっけ。…。

 よし、このク〇ジジイをしばこう


「よからんことを考えておらんかお主?何かされるような心当たりがないのじゃが…」


「師匠、それ本気で言ってるのかな」


 こんなに勉強詰め込まれたの前世以来だよ!それもスパルタだったし。外に出て動かなかったせいで、華奢な身体になっちゃった。体力も絶対に落ちてるし、取り戻さないとだ。

 だがその前に師匠(クソジジイ)に一泡吹かせないと気が済まない。


「ふんふふん~♪」


 上機嫌な鼻歌そのままに、自然な様子でアルセーヌの後ろに忍び寄る。そして一閃


「喰らええええ!」


「ぎょえええええええ!!」


 アルセーヌは自らの尻を押さえながら宙へ勢いよく跳び上がった。そして顔から地面へと激突して、悶絶して転がりまわる。アルセーヌのいた位置で残心をとっていたセリーナは、ほくそ笑んだ。


「秘儀・肛門殺し。受けたが最後、3日間は腹痛に苦しみ、7日目には痔で悶え苦しむことになるだろう…。フッフッフ、今回はこれで許してあげるわ」


「お、老いぼれに、それも師匠にする仕打ちじゃないじゃろ!これ、待たんか!」


「キャー、師匠が怒ったー!」


「こらー!」


 ここ最近沈んでいたセリーナの様子も戻って、いつも通り賑やかな旅路となっていた。



「ほれ、見えてきたぞ。あれが第二の拠点となる都市アルテポレオじゃ」


「あれが」


 西日に照らされているアルテポレオの町並みは、城とまではいかないものの帝都にあった貴族の邸宅程の大きさの建物を中心として円状に建物が乱立していた。また、帝都や公爵領都、公国ではあった城壁が都市の周りを囲っていなかった。そのことをアルセーヌに聞いたが


「重要な都市以外はこんな感じじゃよ。城壁がある方が珍しいわ」


 とのことだった。


「これこれ、走ったせいでフードが取れておるではないか。しっかりと被るようにするんじゃ」


「はーい」


 念押しをされてフードを深く被りなおした。


 アルセーヌの用があるのは遠くからも確認できた一番巨大な建築であるようだ。都市に近づくと徐々に建物が周りに見えるようになってきて、中心にいけばいくほどその密度は高くなってより賑やかになっていく。行き交う人々の数も増えて、商店街らしい場所を通った時には迷子になりそうであった。また人混みに紛れてきた何回かやってきたスリから盗った財布を見せた時に、アルセーヌが呆れた顔をしていたのはご愛嬌である。


 しばらく歩いて目的地の巨大な建物に到着した。目の前にある広場から建物を見上げてセリーナは目をパチパチとさせていた。


「うわぁ、おっきい」


「ここが今日の目的地、そしてこれからお主が活動する拠点にとなる冒険者協会のアルテポレオ支部じゃ」


 冒険者協会と聞くと酒場があって多少ボロついた建築を思い浮かべがちだが、この冒険者協会は宗教でいう教会のような建造物であって、周りにもゴミが見当たらない。


「早速登録に行くとするかのう。付いてくるんじゃ」


 そう言って先を行くアルセーヌの背中を追いかけながら、セリーナは言いようのない高揚感を覚えているのだった。

ブクマと高評価よろしくお願いします。

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