師弟関係!怪盗美少女!
パカラッパカラッ
「はやああああい!」
魔変馬の中でも優秀な北部地方の産馬であるらしく、風と一体化したような錯覚を覚えるほどの速さで駆け抜けていく。景色が移り変わる中で、アルセーヌは1人思案に耽っていた。
「ここで到着じゃ」
着いたのは帝都から馬車で休憩込みで4,5日ほどかかる距離にある公爵領の村で、そこまで休憩もなしで走り続けた魔変馬には、うっすらと汗がにじむ程度であった。
「また乗せてね~!」
ヒヒーン
再びとてつもない速度で走り去り、どんどん小さくなるシルエットを見ながらセリーナは手を振って別れを告げた。馬の姿が見えなくなると、先に歩いて行っていたアルセーヌを追いかけるように村に入った。
村の中でも最も山に近く、高い位置にある一軒家がアルセーヌの隠れ家の1つであった。そこに入ると、部屋はきれいに掃除されていて、いつでも生活を開始できる様子であった。
「茶でも飲むかの」
アルセーヌが入れてくれるお茶はとても美味しく、森でもよく淹れてくれていたのでセリーナは椅子に座って足をバタバタさせて待っていた。
「ほれ、熱いからゆっくり飲むんじゃぞ」
「いただきます!」
2人でお茶を飲んで落ち着くと、アルセーヌは静かに尋ねた。
「…大丈夫か?」
「うん、ちょっとびっくりしてるけど大丈夫。そもそも親なんて一度も見たことないし、兄弟だっているのか分からないし」
「そうなんじゃな」
「そうだよ、だから特に思い入れがあるわけではないんだ。感謝こそすれど恨むようなことはないの」
「感謝じゃと?」
「だって生まれてから別に虐待されるどころか大切に育ててもらえてたから」
「なるほどなぁ」
2人の間に沈黙が走り、アルセーヌは自身が淹れた茶から出る湯気を見つめる。
「これからどうするんじゃ。お主はどうしたい?」
「え?」
「目的は達成…してはおらんが、状況が状況じゃ。またすぐにとはいかんじゃろう」
すると、セリーナはぽかんとした顔でアルセーヌの方を見た。
「どうするって、おじさんが怪盗の技術を教えてくれるんじゃないの?」
「一度帰らんでも大丈夫なのかの?」
「その内一回帰れば大丈夫!好きにしろって言ってたし」
「そうなんじゃな…」
アルセーヌは少しばかり緊張していたのか、肩をほぐして椅子に深く座り込んだ。
「もしかして何も教えないでそのままほったらかしにするつもりだったの?」
「いやあ、そのじゃな…」
「ねえねえ、まさか本気でそんなことするつもりだったんだ。ふーん」
ほっぺを膨らませて両腕を前で組んだセリーナはアルセーヌに背を向けた。それを見たアルセーヌは怒らせてしまったと弁明を試みてあわあわとしてしまう。
「すまん、怪盗になるとは言ってもお主には能力があるから、自分でどうにかするもんじゃと思ってたんじゃよ」
「私まだ6歳なんですけど」
「…そうじゃったな」
「1人じゃ分からないこといっぱいなんですけど」
「…」
再び沈黙が走り、しばらく悩む様子だったアルセーヌは、覚悟が決まったのか話し始めた。
「分かった。じゃが、修行は生半可なものでは無いぞ。途中で逃げ出すような真似をして失望させてくれるな」
「…はい!」
「そうと決まれば早速行動開始じゃあ!」
「はい!」
腕を捲し上げて力こぶを作り、やる気満々の様子のアルセーヌに聞こえない声でセリーナは呟いた。
「よろしくお願いします…師匠」
いい文章が思いつかずこんなにかかってしまいました…
ブクマと高評価よろしくお願いします。