帝都脱出!怪盗美少女!
設定と登場人物紹介出しましたので、細かい部分はそちらをご確認ください。
無事に警備兵を振り切ることが出来た2人は、帝都から脱出するために出入口の関所へと向かっていた。
「あと少しで門だけど…」
「すでに伝わっておったか」
遠くに僅かに城壁が見えてきた。第一城壁門にある関所から出てきた門兵たちは、弓矢をこちらに構えている。その矢先は火や水が収束して出来ているのか、赤と青の点に見える。
「何あれ。火と水?」
「あれは帝国御用達ヘルメス商会特製魔力消費型外殻強化弓と魔法矢Ⅳ式じゃ!セットでお値段30万ミダ(3ディヤ)の品物じゃよ」
「おじさん、それってまずいの?」
「まずいも何も、もう射程圏内じゃよ!」
「ええええ!」
徐々に見えている点が大きくなっていく。アルセーヌはセリーナを抱え上げると踵を返して走りながら叫んだ。
「しょうがないのう。こうなったら…」
「わー!兵隊が弓矢を構えておるぞー!こっちに撃ってくるぞー!!」
ざわざわ
周りにいた市民たちがざわめきだした。そしてその中の1人が目を細めて城壁の方を見やると叫びだした。
「ほ、本当だ!逃げろー!」
キャー!
肯定する声が上がったことでどうやら本当らしいと混乱が広がっていき、さながら集団パニックの様相を呈してどちらに逃げたらいいのか分からない市民が入り乱れる事態となった。その隙に人の合間を縫うようにして裏道へと逃げることに成功した。アルセーヌから降りたセリーナは一度手を組んで上に伸ばしてから問いかけた。
「これからどうするの、おじさん」
「このまま突っ切るぞい。そうでないと守りを固められて詰みじゃよ」
「分かった!」
裏道を通り抜けて、屋根の上も使いながら警備兵の目をかいくぐって城壁に近づいていく。まだ兵士の数は少ないのか、難なく関所付近の民家の屋根上まで辿り着くことが出来た。
関所を見るとまさかこちらに来るはずがないと高を括ったのか、2人を追いかけるためと市民の混乱を収めるため、多くの兵士を出払った状態であった。
屋根から降りたアルセーヌは再びセリーナを抱えた状態で堂々と関所に向かって歩いていき、慌ただしく動く門兵の間を通っていって関所の役人に声をかけた。
「すまんが、帝都から出る手続きをしたいんじゃが」
役人はこちらを見ずに忙しそうに資料を確認している。
「悪いが今は忙しくてな。この城門も一時的に封鎖することになっている。数時間後にはまた開くだろうからそれからまた来てくれ」
「それは大変じゃのう。それじゃあ失礼するわい」
そう言うと、アルセーヌは城壁の外側に向かって歩き出した。
「おい!封鎖中だと言って…まさか!」
「そのまさかじゃよ。お勤めご苦労様じゃな」
「門兵!その老人を止めろ!」
城壁の外側に直立していた兵士2人が声を聞いてこちらに向かって来て槍を突き出した。
ガリリリ
アルセーヌは軽くジャンプで躱して、足元を狙った槍は石の地面を滑った。
「ほいっと」
その槍の上に着地したアルセーヌは、勢いそのまま門兵たちの上を飛び越えて駆け抜けていった。
「待て!!」
門兵も走って追いかけようとしたが、鎧を着た状態では分が悪く途中で諦めた。
後ろでカンカンと鐘が鳴るのを聞きながらしばらく走ったアルセーヌは、途中でセリーナを降ろした。
「ここからは馬を使うからのう。ほれ、そこの空き家に向かうのじゃ」
空き家に入ると、帽子を深く被った男が1人待っていた。そしてアルセーヌがその男に金の入った袋を渡す。
「これで頼む。確認の必要はあるかのう?」
「いや、大丈夫だ。裏にある馬を持っていけ」
そう言い残して男は空き家から出ていった。
「よし、早いところ家を出るのじゃ」
「少しぐらい休憩していこうよー」
「ここで休憩してたら死んでしまうのじゃよ」
セリーナは少し疲れた様子を見せるアルセーヌに、休憩を提案をするが拒否された。
「ほれ、馬を早く確認しに行くんじゃ」
「むぅ、そんなに急かさなくてもいいのに!」
「早く出ないとまずいんじゃよ。ほら」
そう言ってアルセーヌが指をさす方を見ると、家の隅から火が出始めていた。
「火事でこの家もろとも証拠隠滅するんじゃ」
なるほどと納得したセリーナは馬の確認をするために家の裏側に回った。そこには1頭の馬が木に括り付けられており、緑色のたてがみを靡かせていた。
「か………かっこいいいいい!」
セリーナは馬に近づくと見上げながらぺたぺた触りだした。それを見たアルセーヌは慌てて離れさせようと声をかける。
「それはただの獣じゃなくて魔獣じゃ!魔変馬といって凶暴で…ってそうか、まあそうなるんじゃな…」
魔変馬は優しい目でセリーナを見るだけで、大人しくされるがままになっていた。そして落ち着くと、小さいセリーナが乗りやすいように地面に伏せて乗るように促した。
「乗っていいって!おじさんも来て!」
驚きながらも何やら納得した様子のアルセーヌが促されるままに乗ると、馬は立ち上がってそのまま括り付けていた縄を勢いで引きちぎって走り出した。
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