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追放!怪盗美少女!

「ええええええ!知ってたの!」


 首飾りを盗み出すことに成功した2人は、帝都にとんぼ返りをして首飾りを依頼主にアルセーヌが渡しに行った後に、下町の食堂で食事をとっていた。勿論アルセーヌの奢りでだが。

 そこで主にローブの人物についての事のあらましをアルセーヌに伝えたところ、なんと想定内の出来事というよりかは計画の一部であったらしい。


「(モグモグ)、先に教えてくれても、(ゴックン)、良かったのに」


「何事にもサプライズは必要じゃろう?それに緊張しておったお主に教えたらろくなことにならんじゃろうに」


「むぅ、(パクパク)、心臓飛び出るかと、(ゴクゴク)、思ったよ!」


「食べるのか話すのかどっちかにせんか…まあ、成長にも繋がったんじゃから結果オーライじゃよ」


 山盛りのパスタを必死に頬張っているセリーナを見て、アルセーヌは若干の胃もたれを起こしてワインと少しのつまみを口にしていた。

 セリーナの食べる勢いが落ち着いたのを確認してから、アルセーヌが問いかけた。


「セリーナにはあいつがどう見えたかのう?」


 あいつが誰を指すかは明白であるので、ローブの人物とのやり取りを思い出す。


「強いって感じた…同じ人間とは思えないくらいに」


 セリーナは空いた皿を凝視して俯きながら言った。


「そう感じたか」


「うん、おじさんでも勝てない?」


 そう尋ねると、アルセーヌは目を丸くして大声で笑いだした。


「はっはっは!今のワシには確かに無理じゃな」


「そっか…」


「じゃがなセリーナよ。ワシらは一体何者じゃ?」


「怪盗…?」


「そうじゃよ!そもそも戦う必要なんてないんじゃ。そんなものそこいらの兵隊か冒険者にやらせておけばいい」




 確かになぁ、別に戦う必要なんてないんだった。何か勘違いをしていた気がする。


「目的と手段を間違えるようではまだまだじゃな。はっはっは!」


 悔しいけどその通りなので、大人しく聞くしかないなこれは。ひとしきり笑い終えるまでセリーナは耐え続けるのであった。



 翌朝、セリーナとアルセーヌは帝都にあるアンテイア公爵邸に向かっていた。というのも、帝都に公爵領は隣接していて、東側の王国との国境を守る盾の役割を担っているため、公爵領に行こうという場合は近いと言えば近い。しかし公爵領が広大なため、領都に行こうとすると馬車で2週間~3週間の道のりになってしまうのだ。


「とはいっても、私公爵領のあの家から出た記憶がないんだよなぁ…」


(私達と一緒だったの~)


(一緒に遊んだね!)


「相変わらずじゃが、ワシはその妖精たちに中々慣れられないのう」


 セリーナが暇だなと思った時や何気ない時に突然現れる妖精たちにアルセーヌは毎回驚いていた。その様子を面白いと感じたのはセリーナか妖精か。どちらにしても、最近は驚くようにわざわざアルセーヌの目の前で突然現れたりといたずらをしている。

 ワイワイとしていると、兵士が警備をしている貴族の邸宅がある地区の入り口に着いた。


「要件は?」


「この髪色に覚えはないかのう?」


 バサッ


 アルセーヌが突然セリーナのフードを脱がして、深青色の髪の毛が兵士の眼前に晒された。


「…?」


「まだ分からんか?」


「詳しい話は屯所で聞かせてもらおうか」


 兵士がアルセーヌの腕を掴んで拘束しようと迫るが、彼の一言に誰一人として動けなくなった。


「”青薔薇”と言ったら分かるかのう?」


「青、薔薇だと?」


「公爵邸に案内するんじゃ。早うせい」


「…公爵家に確認をしますので、少々お待ちください」


 警備兵の1人が急いで確認のために走り出した。

 10分ほどして連絡係の兵士が帰ってくると、何やら兵士の間で話し合いが行われていた。


「何話してんだろうね?」


「混乱しているんじゃろ。いきなり行方不明になっていた娘が帰ってきたんじゃから」


 しばらくして、話し合いが終わったのか警備兵たちがいっせいにこちらに向かってきた。


 ガチャ


「話し合いが終わったようで何よりじゃ。で、まずはこの槍を向けられている状況についての説明が欲しいんじゃが…」


「”公爵家は青薔薇について関知しないものである”とのこと」


「では後日改めるとするかのう。ほら、セリーナよ帰るぞい」


 引き返そうとするが、既に警備兵によって包囲されていた。


「それは無理な話だ。何故なら貴様らはここには来なかったからだ」


 徐々に迫る円の中でアルセーヌは深いため息をついた。


「はぁ…セリーナ、行くぞ」


「うん!」


 ボン!シュー


 アルセーヌがどこからともなく取り出した球体を下に叩きつけると、白煙が発生して辺りを包んだ。


「な、なんだこれは!」


 警備兵は混乱して動けずにいた。そして、白煙が収まって周りの景色が見えるようになる頃には、既に2人の姿はその場からいなくなっていた。


 こうして、セリーナの里帰りは存在の抹消という形での別れとなってしまった。

ブクマと高評価よろしくお願いします。


先週と同様に明日連投するかもです。

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