怪盗の流儀!怪盗美少女!
本日最終の5話目です。
夜が更けて町が眠りについた深夜、町はずれの時計台の上に居城の方を向いて佇む2人のシルエットがあった。
「そろそろ時間じゃな。セリーナよ準備はいいか?」
「いつでもいけるよ!」
アルセーヌに向かってグッドサインをする。
「それじゃあいくかの。ほれ、ここに魔法石を嵌めておくれ」
「は~い!」
これが楽しみだったんだよ。何気に魔法具が起動するのをしっかり見るのは初めてだからさ。
離陸体制を整えてハンググライダーの持ち手部分中央の窪みに魔法石を近づける。すると、磁力の影響を受けた時のように、吸い込まれて嵌まった。
カチッ
その音と共にふわっと浮かび上がったハンググライダーは、城が下に見えるまで浮き上がっていってから、アルセーヌの重心移動によって操作されて城の方向へと動き出した。家々の屋根に映る自分たちの影に興奮しながら城を目指す。
「凄いね!風も気持ちいしずっと飛んでいたい!」
「そうじゃのう。お宝を手に入れた後であればいくらでも飛んで遊べるんじゃよ」
空からの景色を眺めていると、徐々に城が近づいてきた。しかしなんだか様子が少しおかしい。
「おじさん、外に出ている兵士の数が多いし、お城全体で魔法灯が付いてて明るいよ」
「そりゃあそうじゃ。ワシが来るのを分かっていて警戒しない訳がないじゃろう」
「は?え?なんで知ってるの?」
「だってワシ、予告状送ってるもん」
「はあああああああ!!」
「五月蠅いのう。ばれるじゃろうが」
「もう行くのばれてるよ!何でこんなことしたの!」
「セリーナよ、なぜワシが怪盗をしていると思う」
「そんなことより早く行かないと」
「これは大切な事じゃよセリーナ」
有無を言わせぬ雰囲気を感じ取って、真剣に考える。何でこの仕事をしているんだろう。ボロボロになりながらも、苦しいことがあっても続けている理由。
「お金になるから?」
「不正解じゃ」
「名声のため?」
「それもいいが、もっと大切なことじゃよ」
花としても含めてこれまでを振り返っても分からない。自分が仕事をしていたのは何故か。生活のため、怒られないためだったのか、考えれば考えるだけ分からなくなる。
「…」
「楽しいからじゃよ。ワシはワシがやりたいことをワシがやりたいようにやるんじゃ」
「宝を盗んで富と名声を得るのも確かに嬉しいことじゃ。でも何よりもワシは盗み方にこだわりたい。いかに相手を出し抜いて華麗に盗み出せるのか。盗み出した時の相手のやられたって顔を見るのが、楽しくてたまらないんじゃよ」
「…そうなんだ」
「そうじゃよ。だから出し抜く相手は多ければ多いほどいい。より難しい方がやりがいがあるし、それに悔しがる相手が多い方がより楽しいじゃろう」
そう話すアルセーヌの目はあの時と同じ輝きを放っていた。そうか、私に足りなかったものが何か分かり始めている気がする。
「じゃあ悔しがる相手はなるべく残しとかないとね!」
「その通りじゃ!相手を殺しでもしたら華麗な犯行の目撃者が減ってしまうからのう。お主も分かっておるではないかセリーナよ」
城の離れ棟の屋根上に着陸して、ハンググライダーを縛り付けておく。
「よし、それじゃあ忍び込むとするかのう」
ビュン……ガリッ!
鉄でできたワイヤーを屋根から屋根へと繋げて、その上を走っていく。
タタタ
「ここからは散開して宝の場所を探すんじゃ。警備が多い所か不審な動きをしている所にあるはずじゃから、よく見るんじゃぞ」
「分かった。見つけたら手筈通りこの鳥笛で知らせるね」
「うむ、では行動開始じゃ」
セリーナはまず屋内に侵入するために入れる窓を探したが、警備の目が多すぎて中々隙が見つからない。
「どうしよう、これじゃ入る余地がないよ」
辺りを見渡すと、警備兵が外を巡回しているのが見えた。二人一組で行動しているが、細かい箇所まで見るためか、更に二手に分かれて行動を開始した。
「これだ!」
セリーナは背が大きい方の警備兵に近づいて…
背中に張り付いた。
変装なんて出来るはずがないのだ。そんな技術はまだ教えてもらってないし、変装している場面を目にしたこともない。それに、6歳の少女が甲冑を着るのは力では動かせても、身長が足りない。
「身体操術 隠密~」
警備兵は身軽な少女がボス達に習った隠密を使って張り付いていることに気が付かない。名前は元々ないのにセリーナが勝手に命名したのであしからず。
そして何回か張り付く兵士を乗り換えていると、ついに城の中に侵入することに成功した。
「待っててね!お宝ちゃ~ん!」
セリーナが首飾りを手に入れるまであとわずか
なんとか5話目書ききりました。
これからも応援よろしくお願いします!
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