指輪装着!怪盗美少女!
本日さ、3話目です。
商家の馬車に揺られている間は特に何か起きるわけではなく、平和に時間だけが過ぎていった。
馬を休憩させる間にリフレッシュを兼ねて馬車から降りるのだが、町に着くまでの最後の休憩で、1人で道の脇にある林に入ったセリーナは呪具を装着してみることにした。
「死ぬのは怖いけど、せっかく買ったんだし物は試しだよね…」
指輪のリングがかなり大きく、男性用だったのかもしれない。どの指にはまるのか分からないから、考えなしに一番長い中指からはめてみることにした。
「適当にはめてみよってえ!動いた!」
最初に右手の中指に試しに付けてみた瞬間、少し光ってからリングが収縮してサイズがぴったりになった。
「びっくりしたぁ。ん?あれ?抜けないぞ」
ぴったりはまったのはいいが、中指からピクリとも動かなくなってしまった。
「え、え、え、ええ」
軽くパニックになっていると、セリーナの様子を見に来たアルセーヌが声をかけてきた。
「どうしたのじゃ?何か珍しいものでも見つけたのか?」
「指輪…抜けなくなっちゃった」
「…お主は本当に」
2人は試行錯誤を繰り返したが、商人が呼びに来るまでに結局抜けず、諦めて馬車に乗り込んだ。また馬車でくつろいでいると
(お久しぶりなの~)
(久しぶりだね!)
あれま、イマジナリーちゃんたちが突然現れました。3年ぶりのご登場じゃないかな。友達と別れて旅に出たからまた出てくるようになったのかな
「なんじゃその生き物は!妖精なんて本当にいたのか!」
え
「おじさん見えてるの?」
「見えてるも何も、目の前におるではないか!」
うっそーん
「君たち私の想像上の存在じゃなかったの?」
(貴方は私で、私は貴方なの~)
(イマジナリーだよ!)
「じゃあなんでおじさんにも見えるんだろ」
唖然とするアルセーヌを置いておいて、セリーナは1人思案していた。すると、イマジナリーの2人はこちらに近づいてきて、中指についている指輪を指さした。
(これのおかげなの~)
(これのおかげだよ!)
「指輪の効果…?」
(そうなの~)
(そうだよ!)
「おじさん、この子達が見えるのは指輪の効果みたいだよ」
「そうなのか、じゃがそしたらその指輪の効果というのは」
(インバート・イマジナリーなの~)
(出してしまってだよ!)
「なんで分かるのかな?」
「深層心理というやつなのかもしれんな」
なんだ、急に難しい言葉が出てきたな。
「深層心理?」
「そうじゃ。この子らはお主が認識していない奥底にいるお主自身なのかもしれん。であれば、効果について認識していることも、イマジナリーと言っていることにも説明がつくんじゃないかのう」
なるほど。確かにそうかもしれない。
「それなら、この子達が言う効果って」
「うむ、その通りなのじゃろうな」
御者をしてくれている商人に見つかるとまずいので、詳細の確認は町についてからすることにして、妖精たちには隠れてもらうことにした。
「感謝するのじゃ。ありがとうございました」
「ありがとうございました!マント大切にします!」
手を振ってしっかりとお別れをしてから、既に夕方になっていたので宿を決めた。公国に近いということもあって、念のため外食へは行かずに買い込んでいた食料で食事を済ませた。
「それにしても無から有を作り出してその逆も出来るとはとんでもないのう」
そう。宿の中で妖精たちの話を聞いていると、どうやら想像上のものを具現化させるだけではなく、物体を脳内にしまえるようだ。とは言っても、無から作ろうとすると本当に簡単な物しか具現化できないことが分かった。
試しに集落から持ってきた麻服に効果を使うと、具現化と収納が可能であった。しかし、無からドレスを作ろうとしたら無理だった。
元からあるものを収納するのは色々出来るらしく、アルセーヌが持っていたお宝を消した時は絶叫していた。
「この力の肝は収納できることになりそうだね」
「確かにそうじゃのう。これで今回の計画の成功率も上げられそうじゃよ」
実は現在公国での作戦確認の真っ最中で、呪具も取り入れた計画に修正をしていた。
「それで、私達は孫とお爺さんが旅をしているっていう設定で行くんだよね?」
「うむ、その通りじゃ。関所で見せる身分証も用意しておるからな」
「凄い!本当に怪盗みたいだね!」
セリーナが目を輝かせながら身分証を見ている。
「ワシ一応怪盗なんじゃが…まあともかく、潜入後は以前使った地下道が唯一の公爵邸への侵入経路だったんじゃが、それが使えん」
「じゃあどこから邸宅に侵入するの?」
「それはなぁ」
アルセーヌはおもむろに立ち上がりゆっくりと窓の方へと歩き出して、窓枠に座った。
外を一瞥してから上を指さした。
「空じゃよ」
ぐああ、3話目です。後2話
次は19時頃を予定しています。
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