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爆誕!怪盗美少女!

本日1話目

 ボスに事情を話すと、意外とすんなり受け入れてくれた。

 曰く「昔から好き勝手にやってたんだから、気が向いたら帰ってくればいい」とのことだ。全く良い家族に恵まれたね。

 動物たちにも別れを告げに行ったよ。猪さん始めとした動物たちは皆悲しんでくれて、こっちまでうるうるしてきちゃった。熊さんは何やら嬉しそうだったので、しばきました。


 友人への別れの挨拶や荷物整理といった旅立ちの準備を終える頃には、出発当日を迎えていた。


「本当に世話になったのう。この恩は生涯忘れはせん。皆の者、どうか達者でな」


「それじゃあいってきまーす!みんなまたねー!」


 セリーナは後ろを振り返りつつ、森の皆の姿が見えなくなるまで手を振り続けた。




「それでこれからどうやって公国まで行くの?」


「どうやって?歩きに決まっておるじゃろ」


「どれくらいで着くの?歩きだから2週間?いや、それは流石に長すぎるか。5日ぐらい?」


「3カ月じゃよ」


 は?


 このじいさん今なんて言ったのかセリーナよく分からなかったな。


「3日?」


「3カ月じゃよ」


「なんで」


「なんでとはなんじゃ」


 さも当然かのように振る舞ってるけど、今から引き返してもいいかな?ねぇ、いいよね?


「どこかで足を見つけようよ~。お馬さんとかいないの?」


「無一文なんじゃから借りられないんじゃ」


 改めて自分たちの持ち物を確認してみる。麻を織り込んで作った洋服に、数日分の果物と水、生活用品。以上。文明と交流がないから当たり前だけど、本当に無一文だ。


「おじさんどっかから適当に盗んできてよ。怪盗なら楽勝でしょ?」


「馬鹿を言うでない。怪盗にもプライドというものがあるんじゃ」


「プライドかぁ」


「そうじゃよ。大した目的もなく何となくちっぽけな盗みを働くのはコソ泥のすることじゃ。そんなダサいことよりもっと大きいことを成し遂げるんじゃよ、怪盗は」


 そう話すおじさんの目は少年のようにキラキラしていて、私が求める何かを持っている気がした。やりがいとも違う何かをだ。


「じゃから、諦めてひとまず歩くのじゃ」


「分かった…」


 納得はしたけどきついものはきつい。森を抜けて道には出たものの、1週間を過ぎた頃には食料は尽きて現地調達になっていた。いくら身体強化があるといえど、まだ齢5歳のお子ちゃまには厳しいものがあるよさすがに。


「もう疲れたよ~!1歩も動けない!」


 バタバタ


「分かったから駄々をこねないでおくれ」


 お、これはもしや


「ここらで一度休憩にするかのう」


「やったー!おじさん大好き!」


 おじさんに抱き着きに行ったけど顔をしかめて離された。そんなに嫌がらなくてもいいでしょ。


「そうじゃ、近くに川もあるし水浴びでもしてくるといい」


「水浴び?私水浴びしたことないんだけど」


「嘘じゃろ…」


 アルセーヌ、絶句。


「森だと香草で煙浴するのが当たり前だったんだよ」


「な、なるほどな。そしたら洗い方でも教えてやろうかの」


「それぐらい知ってるもん。変態おじさん」


 ジト目でおじさんを見つめると、少し慌てた様子で弁解しようとしていた。が、さっきの意趣返しでそのまま放っておいて水浴びに向かった。

 麻服を脱いで水に足を浸すと、ひんやりして程よく気持ちが良い。体を洗い、楽しくなってきてそのままダイブして頭まで濡れてしまった。すると、集落で使っていたヘアオイルが少し落ち始めた。そのべとべとが顔まで落ちてきて非常に気持ち悪いので、全て洗い流してしまう。それによって、オイルによって黒っぽくなっていた髪の毛が本来の色を取り戻していった。


「これで終わりっと」


 水分をふき取って替えの麻服を着て戻ると、何やらニヤついた様子のおじさんが待っていた。


「旅の足が手に入るかもしれんぞ」


「ほんと!」


「静かに!ばれるじゃろうが。ってその髪の毛の色はなんじゃ!」


「おじさんの方がうるさいじゃん!」


「しっ!伏せるのじゃ」


 返ってきた途端に一体なんだよと愚痴をこぼしつつ伏せていると、何人かの男の声と馬車の音が聞こえてきた。


「これだけあれば大儲けじゃねぇか?」


「早く町に行ってうっぱらってのみに行きやしょう!」


「それにしてもあの商人も間抜けでさあね」


「い、命だけは!って」


「結構似てるじゃねぇか!傑作だ!ガハハハ!」


「おじさん、これって」


「あぁ、典型的な賊じゃよ。乗っている馬車も強奪したんじゃろう、商家のマークがついておる」


「もしかして足ってあれのこと?」


「それしかなかろう」


「この前はちっぽけな盗みはしないって言ってたのに?」


「悪いやつからはいいんじゃよ。そら、盗みに行くから合図したらこっちに来なさい。それまではそこで見ておるのじゃ」


 そう言うと、セリーナを残してアルセーヌは一瞬で森の中へと消えていった。10秒ほど経ってから、賊の内の1人が突然バランスを崩した。そのまま馬車から転落して茂みに落ちて、その姿が見えなくなった。


「馬車を止めろ!ったくあいつは何やってんだ。おい!出てこい!」


 シーン


「出てきやせんね、お頭」


「ったく、様子を見てこい」


 2人に様子を見に行かせたが、それも帰ってこない。おかしな状況に気が付いたのか、賊も警戒を始めた。


「見張りを1人だけ残してあとは俺と行くぞ」


 お頭と言われていた男を含めた3人が腰元の剣を引き抜いて道の脇にある森に慎重に入っていった。


 次の瞬間


「セリーナ!今じゃ!乗り遅れるなよ!」


 なんと最後に残されていた1人がアルセーヌの変装であった。馬に鞭を入れて馬車を走らせ始める。


「なっ!」


 馬車の動き出す音に気が付いたが、何が起きたのか分からずに混乱して馬車を見つめる賊の間を、小柄なシルエットが通り抜けて馬車へと走って行った。


「ボーっとしてんじゃねぇ!追いかけろ!」


 我に返った賊の頭が怒鳴るが、時すでに遅し。徐々に遠ざかる高笑いの聞こえる馬車を見送ることしか出来なかった。




「見たかセリーナよ。賊の持ち物丸ごと盗み取ってやったぞい」


「流石は怪盗アルセーヌだね!でもはい、これ忘れ物!」


 セリーナがおもむろに取り出した袋を見て、アルセーヌは首をかしげる。


「なんじゃそれは?」


「賊たちの小銭入れ!」


「あの一瞬で盗ったのか!?」


「これで完璧に賊の物を盗れたね、おじさん!」


「そ、そうじゃな。お主ももう立派な怪盗じゃな…」


 2人を乗せた馬車は公国に向けて順調に進み始めたのであった。




 かくして歴史に名をはせる怪盗令嬢の伝説は幕を開けた。

今日は頑張って5話投稿目標で行きます。


次は15時くらいに投稿予定です。


本当に励みになるので

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