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ただの自己満足で伝えた日は、

ラストです!他の話より長めです!




デスクに置いてあるいちごミルクを見た隣の新人が、驚きの顔を向けてきた。



「え!小新さん、いつもブラックコーヒーなので甘いの苦手なんだと思ってました!」


「いや、むしろカフェオレ派だよ」


「え??」


「先輩風吹かせてみたくてね」



反応に困っている新人に、小新は真面目な顔して変なこと言うから笑えないよね~と堂領さんがフォローしてくれる。想定内である。



「みんなおはよう!」


「おはようございます課長ッ!」

「おはようございます~!」


「あ、そういやあ、小新は明日から連休か~」


「はい、有休いただきます」


「旅行か~?どこ行くんだ?」


「課長。有休の内容言わせるのはパワハラですよ?」



はは、と笑った新人は、いや今のは笑うところじゃない~!と堂領さんに小声で指摘されている。



「そうだったな、すまない小新。みんなも気にせず有休取ってほしい。だが!!土産話も美味い土産も大歓迎だからな!」



そう言って漫画のような笑い声を上げる課長はやっぱり、憎めない愛されキャラなのである。


そして、疲れた時にはやっぱり、甘いものが癒しとなる。

でも、最近は新たな癒しを知ってしまった。と、いうより、熱心に推されて癒しの存在となった。




話に聞いてはいたけれど、本当に地域猫が多くて驚く。


教わった通りに近づいて撫でれば、ゴロゴロと気持ちよさそうに寝転がった。



犬派だったのに、毎日のように猫の写真が送られて来るから、すっかり猫派になってしまった。

それはもう、気まぐれな可愛さに完全に沼ってしまった。



「ッくしゅん‼︎」



懐かしく感じるそのくしゃみに、口元が緩む。

咳払いをしながら立ち上がって振り向く。



「っ、小新さん…!」



電話はなぜか恥ずかしいらしく、久しぶりに声を聞いた。




「お疲れさまです、城市さん」


「お疲れさまです。今日は、観光したんですか?」


「いや、昼過ぎに着いたので、チェックインしてだらだらしてました」


「そうでしたか…」



向かいに座る城市さんは、グラスビールをぐっと飲み干した。


なんだか、今日の城市さんはソワソワしている。

まあ、それもそうか。サシ飲みどころか二人でご飯も行ったことがなかったから。



「えっと…観光案内を、と、言いたいところなんですが…その、まだ職場との往復しかしていなくて…」



空になったグラスをぎゅっと握っている。



「明日は、休みですか?」


「あ、はい。休みです」


「じゃあ、」



なんでもないようなトーンを心掛けて口を開く。



「一緒に観光してください」



目を丸くする城市さんに畳み掛ける。



「というか、そのために来ました」


「え…?」


「城市さん、休みの日も自主勉強で家に籠ってるだろうなと、思ってたんで」



黙り込んでいるので、図星のようだ。



「ダメですよ、ちゃんと休まないと」


「……そう、ですよね…」



寂しそうに、悲しそうに、グラスを握り直して力無く笑う。

ふうと息を吐いて姿勢を正し、城市さんをじっと見つめる。



「やっぱり、謝らせてください」


「……え?」


「城市さんの前では、正直でいたいんです。それはまあ、自己満でしかないんですが……聞いてくれますか…?」



思ったよりも自信のない声が出てしまったけれど、城市さんはこくこくと頷いてくれた。



「いろいろ、ある前までは城市さんのこと、苦手というか…嫌いでした」



チラリと目を向ければ、困ったように微笑みながら頷いていて。息が苦しくなった。

深呼吸をして心を決めた。



「今更…傷つけることを言って、すみません………でも……今は好きです、城市さんのこと。むしろ、嫌いだったことが信じられないくらいに、好きです。大好きです。大好きです城市さん…!!」



声量が、どんどん上がっていく。



「ただの元部下なのに有休使って飛行機乗って会いに行くほど大好きです!!城市さん!!」


「ちょ、ちょっ、ちょっと待って…待って……すごい、あの、待って…!!」



耳まで赤くなった城市さんは両手で顔を覆っている。大人しく待つことにする。



「………あの…最後の時期は……上司と部下では、なくて…同僚、でしたよね…?」


「…え、そこですか反応するところ」


「いや、だって、だってこんな…どッ…どうしたらいいか分からなくて…ーーッ!?」



めりっと音が鳴りそうなほど顔に食い込んでいた両手を無理矢理剥がす。

ああ、真っ赤だ。茹蛸みたいに。あの、城市さんがーーー



「ーーーあ。なんで、上司だった城市さんのことが、嫌いだったのか今、分かりました」



そう口にすると、面白いほどにさあっと顔の熱が引いていく。

その反応に、意地悪く頬が緩んでしまう。




嫌いになるくらいに、好きだった。

好きだから、嫌いになりたかった。




「元々、好きだったって、気づきました。

好きでしたし、今は大好きです!城市さん!」





エピローグ的な最後となりました。

ここまでお読みくださり、心より感謝申し上げます!!

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