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毎日のように一緒に残業する日々は、

あと残り二話で本編終了します!!




あの日から、引き継ぎ整理をするための業務を、手伝わせてもらうことになった。


緊張と、困惑と、苛立ちでどうにかなりそうだったあの数週間はもはや、忘却した。

というのはさすがに言い過ぎだけれど、今は打って変わって清々しい気分である。




課長には、課の人たちの前で宣言した。城市さんの業務を一緒にやってもいいですか、と。


驚いたのち、まあ隣で毎日残業されてたら気分良くないよな~と宣った課長。そういった嫌味を言うだろうともちろん想定していた。

いえ、次期課長を狙っているのでと、真顔で返せば、シンと場が沈黙したのも想定内。


え、今の笑うところですよ?こんなスベるなんて…失礼しましたと軽く頭を下げれば、慌てて空気を読んだ堂領さんがアハハと笑い、小新が冗談言うなんて~明日は槍でも降る?と和ませてくれた。ありがたい。

無論それも想定済み!!


隣の城市さんはずっとオロオロしていたけれど。

まあ、戦術を練ってコミュ強な下鳥さんに挑むだなんて、そんなの、自分が一番驚いている。




「小新さん。今日もありがとうございました」


「お疲れさまでした」


「明日か明後日で、終わりそうです…!」



本当に助かりましたと、再び頭を下げる。

その顔は、晴々としていた。



「…辞める話は、結局どうなったんですか?」


「えっと…」


「え!?」



その苦笑いにすかさず反応すれば、慌てる城市さん。



「いえ!違いますよ?!今回はきちんと、自分の意思を、伝えましたよ…!!」


「…いつ、辞めるんですか?」


「えっと…その、実は…辞めずに他支社へ、異動することになりました」



………異動。異動か。

思わずため息が漏れてしまった。



「えっと、あれですよ、その…この仕事は好きなので、できれば辞めたくないなとはずっと思っていてですね、」


「すみません。違いますよ、そういうため息ではなくて。……良かったな、と、思って」



一緒に残業していてありありと感じていた。城市さんはこの仕事が好きなのだと。

だから理不尽なことがあっても頑張ってこられたのだと。



「送別会、やりますからね?」


「えっ…」


「あ、課長は呼ばない方がいいですか?」


「いや、あの、私は嫌ではなくて、あの多分…課長は来たくないのではないかと、思いますが…あ、みなさんも、」


「じゃあ、まあ、とりあえず社交辞令で声掛けてみますね」


「あの…、課長は私の存在が不快なだけで本当は、元々はというか…良い方ですからね…?」


「いやいや、本当に良い人は差別しないですから。あ、別に嫌いではないですよ?課長のこと。…完璧な人はいない、ということを、忘れていた自分には腹が立ってますが…」



本当は、城市さんに、謝りたい。


自分の謝罪はただの自己満で、城市さんは絶対に困り顔をして恐縮するに違いないから、謝らない方がいい。

でも、でもだ。本当にこのままお別れして、それでいいのだろうか。本当に…



城市さんに対して抱いているこの思いは、なかなかに、厄介なものとなってしまった。




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