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言わせてしまったあの日の自分が、




最悪だ。

今までもずっと、最悪だったけれど、比じゃないほどに最悪だ。




睡眠不足をごまかすべく、カフェオレを求めて自販機スペースへ向かえば、予想通り今日もいた。

そして今日も悩んでる様子だった。



今回は距離を取って空咳してみれば、その音にビクリと反応する城市さん。

慌ててブラックコーヒーを購入し、その場から去ろうとするところで目が合った。


気まずい雰囲気の中、挨拶を交わす。

ギュッと手を握りしめ、唾を呑み込む。



「あの、昨日は…申し訳ありませんでした」



城市さんのようにキッチリと頭を下げ、謝罪する。



「……え?えっ、と…?」


「…昨日は、言い方が嫌味のようになってしまい、すみませんでした。でも、そんなつもりは全くなくて、その、最近は……課長の横暴が過ぎると言いますか……城市さん、課長の業務を、やらされてますよね?」



声に力を入れて伝える。


どうか、どうか。

こんなことはおかしいと、あってはならないことなのだと、本当はそう思っているのだと言ってほしいーー




「…それは、私は…課長に嫌われているので……」




ーー初めて見るその表情に、動悸がする。



いつも無表情だったのに……どうしてそんな…悲しそうに笑うんですか…




「これ以上、課の雰囲気が悪くなる前に辞めようとは、思っているのですが…なかなか引き継ぎが進まなくて…」


「………は?!」



響くほど出てしまった声量に、城市さんが目を丸くする。



「え、いや…、え?!辞めるんですかッ?!」


「えっと…まだ、正式には承諾していただけていませんが…」


「は??え、なんですかそれ、それって…辞めさせてもらえないってことですかッ?!」


「えっ、と……」



ぎゅっと缶コーヒーを握りしめて狼狽えている城市さんに、ハッと我に返る。



「すみません…ちょっと、いや、かなりびっくりしてしまって、えっと…えぇ……」



思わずため息が漏れる。

嘘だろ…嘘だと言ってくれ……



「あの……課のみなさんには、ご迷惑かからないようなタイミングで、辞めますので……その、今すぐ、というわけではないので…すみません」



お騒がせしてしまってすみませんと、頭を下げ、失礼しますと、立ち去ってしまった。



………え?どういう??は?辞める?正式じゃない?お騒がせ?迷惑のかからないタイミング?は??


というか、引き継ぎが進まないって、それ絶対に下鳥さんのアレのせいでは??



いや、いや待って。

待って、待ってよ……本当に辞めたいんですか城市さん…


こんなの、こんなのまるで、城市さんの口から辞めたいと言わせるために降格させて下鳥さんを課長に据えたという、そんな魂胆にしか思えない。



なによりも……あんな表情をさせるまで追い詰めるなんて、絶対に、あってはならない。


ああ、最悪だ。

まさかこんなパワハラ状態だったとは。最低最悪だ!!!!




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