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助けたいと思った日が今までで一番、




自分を含む課の人たちの城市さんへの態度は、根本的に悪化している。


その上、更に、下鳥さんが酷くなっている。

最悪だ。本格的に最悪だ。




「城市、アレは?」


「こちらで、よろしいでしょうか」



アレって…アレって…なんなんですか昭和かよ!?

しかも…「違う、別の件だ」だあ?!ため息吐かずに主語を言え課長!!


城市さんもそんな…落ち込んでないで的確な指示しろって反論してくださいよ!!

という思いを込めて視線を送ったのに、ハッとした城市さんは姿勢を正して作業を再開する。


…これを、わざとらしいだとかしおらしいと言うのであれば、演技をしているということになる。

それが、真相なのであれば、もはやだれのことも信じられなくなりそうだ……はあぁあ…



下鳥さんの尊大さがエスカレートしている理由は、やはり、恨みがあるのだろうか。

というか…下鳥さん、ネチネチ系だったのかと少し…いや大分ガッカリしている。愛犬家なのに……いや、犬は関係ないか…


好感度が地に落ちそうになるけれど、下鳥さんは、上司としてはまさに理想そのものなのである。

フランクでありながらメリハリもあり、その塩梅が絶妙で素晴らしいコミュニケーション能力だ。


真面目一辺倒で面白味もなく、おまけに腹黒い自分は絶対に下鳥さんのようにはなれないと言い切れる。



他にも、基本定時ピッタリで退勤してくれるから、部下たちも帰りやすくなったのは実に良いことだ。

今まではいつも残っている城市さんに、部下たちが気後れしながら退勤する、というあの空気は、最悪だった。


でも、でもだ。今は恐らく下鳥さんの代わりに城市さんが、残業しているということではないだろうか…というかそれは多分…課長の業務を城市さんが負担している、と、いうことでは…??いや絶対にそうに違いないなこれは……




定時になり、課の人たち一人ひとりの「お先に失礼します」に、その都度丁寧に頭を下げ、お疲れさまでしたと返す城市さん。

その姿は、課長時代と全く変わらない。


でも、それは、たった二週間くらい前の記憶なのに……あの頃はそんな城市さんに嫌悪感を抱いていた。



部下にもキッチリと会釈する無表情の城市さんは、上司だろうが同僚だろうが部下だろうが、そんなことはどうでもよくてただただ機械的に挨拶してるだけなのだと、そう、思っていた。


今も相変わらず表情は硬いけれど、でも、そんな風には思えない。


丁寧で、誠実な、お疲れさまでしたという言葉に聞こえるのだ。



このままでは絶対にダメだと、自分を一喝する。

深呼吸し、背筋を伸ばしながら城市さんの方へ体を向ける。



「あの…なにか手伝えること、ないでしょうか…?」



目を見開き、固まった。

その城市さんの驚く顔に、自分の表情も体も硬直した。



「……あっ、え、っと…」



瞬きを繰り返しながら手元の資料とこちらとを、視線がウロウロしている。

それは、狼狽えているように見える…え?狼狽えて?あの城市さんが?狼狽えている…??



「あの…その、お気遣い、ありがとうございます。ですが、これは私が引き受けた業務ですので…」



と、もう一度、ありがとうございましたと頭を下げられた。



「……あ、あー、そう、ですよね…手伝えるような…業務はない、ですよね……ハハ…いや、えっと…あー、……お先に失礼しますッ‼︎」



そう、反応を見ずに退出した。


やってしまった。やってしまったのだ………最悪だ……!!

家に帰ってから、猛烈に反省したのは言うまでもなく……


あぁ……史上最悪な態度だった………




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