見慣れた星座
僕は転生者。
死んだ記憶は無いけど前世の事を覚えている。
でも、ここは前世のラノベに書かれていたような世界では無い。
魔法なんてものは無いし、前世の世界より凄く文明が発達している世界だから。
そういう僕も人工授精で大量生産され生まれて来た口だしね。
僕が生まれた星は連邦に属している。
属しているって言っても連邦はこの星がある銀河だけで無く、周辺10数個の銀河を傘下に治めているのだけど。
それで人間が大量生産されている理由は、その傘下に治めた銀河に開拓者を送り込む為。
惑星改造移住局が推し進めている、傘下に治めた銀河の中の不毛の惑星を改造して、人間が暮らせるようにした惑星を開発する為の開拓者は幾らいても足りないから。
開拓者として必要な農業等の知識と、どのような苦難が待ち受けているか分からない未開の地で暮して行くためのサバイバル知識を詰め込まれてから、人口冬眠装置に入れられて僕たちは数百万数千万光年の彼方に向けて発進する船に載せられる。
人口冬眠装置の蓋が開く「シュー」って音が耳に入り僕は目覚めた。
寒い。
スピーカーから流れる指示に従い服を着て僕たちは船内の広い部屋に集められ、此れから降り立つ惑星の説明を惑星改造移住局の係官から受ける。
「今いるのはあなた達が降り立つ惑星の衛星です。
降り立つ惑星は過去に文明が発達していた痕跡がありましたが、惑星全体を放射能が覆っていました。
連邦では遥か昔に廃れた核分裂でエネルギーを得る原子力発電所が暴走したのか、惑星内の国々が統一されず核兵器による戦争が勃発したのか、今となっては知りようがありませんがね。
ただ現在の惑星は人間が暮して行ける環境に改造されていますから、安心して惑星に降り立ってください。
此れから10日程の日数を掛けて、惑星の重力に耐えられる訓練を行います」
訓練の合間に船内の観測室から惑星を見る。
観測室の窓から見える青い惑星……あれ? この構図、前世の記憶の中の写真で見た事があるような気がする。
惑星が見えるのとは別の窓から頭上に瞬く星々を見上げて、僕の前世での記憶が正しい事に気がついた。
「あれはオリオン座のペテルギウスであれとあれはおおいぬ座のシリウスとこいぬ座のプロキオン。
そ、それじゃ、あの青い惑星は地球なのか……」
そして僕は前世で死んだ時の事を思い出す。
街の中にサイレンが鳴り響く最中、頭上で眩い光が炸裂して僕は一瞬で蒸発したんだった………………。