3-1
「ヴィル!早く早く!早く起きろってばー!学校行くんだろ!?」
「うっさいわ……今何時や思てんねん……」
時計を見るとまだ7時前。学校に行くにしては早すぎる時間帯だ。
「だって!早く校庭の土を踏みしめたいじゃん!?」
「お前は何かの選手かい……行くなら一人で行けや……」
正直、俺は朝が弱い。目が覚めた後暫く経たないと頭が回ってくれないのだ。
「えー……まあ、一人でも行くけどさあ……」
ぶつぶつと文句を言いながらアリスは支度を始める。どうやらもう既に出発出来るくらいの感じらしい。……どんだけ楽しみにしてんねん。たかが学校如きで。
「……いや、あかん!」
眠気にやられている頭をフル回転させ、今にも外に出ようとしているアリスを引き止める。
「え?何?やっぱ俺サマと一緒に行きてえの?」
「いや、飯は?」
「もう食ったけど」
早過ぎる。しかしこのままコイツを一人で行かせる訳にはいかない。
何度でも言うが、コイツはいつゾンビになってしまうか分からないのだ。出来るだけ俺の目の届く場所に居てもらわないと、困る。
「すぐ食うから、待ちぃ」
「はいはい、しゃーねえなあ。そんなに俺サマと一緒に登校したいなら待ってやるしかねえかあ」
……くそ。元はと言えばお前がゾンビになんかなるから俺が誰にも、お前自身にも気づかれへんように頑張ってるってのに。
愚痴りたい口を何とか押さえ、俺は食パンと牛乳を流し込んだ。
「……ご馳走様!ほな、行くで!」
「はっや!もっとゆっくり食えばいいのに!」
俺だってそうしたかったが、あまりにものんびりし過ぎると痺れを切らしたコイツが勝手に個人行動を取る可能性も否めない。
「よーし!善は急げだ!走ろうぜ!」
「は、はあ!?」
走らなくたって間に合う。それどころか早過ぎるくらいだと言うのに。
しかも先程食事を済ませたばかりの俺に走らせると言うのか。鬼か、コイツ。
……嗚呼。こんなヤツに俺の生活が振り回されていると思うと腹が立つが、俺の日常を守る為だと自分自身に無理矢理喝を入れるのであった……。