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アリスが風呂に入っている間に思い出したことをノートに纏める。
でもあの時は2回とも必死だったし、何を言ったのか、何をしたかなんて思い出せない。
「でもどうやって戻せるか特定出来んと……学校連れてくのも怖いんやけど……」
「何何!?何書いてんの!?」
「うわっ!はや!」
カラスの行水かと思うくらい、奴の風呂は早かった。
俺はアリスにノートを見られないよう、そっと引き出しの中に仕舞う。
「何?ネタでも書いてた!?」
「書くかボケ。お前には関係ないことや」
まあ、ガッツリ関係することなのだが。
「なあ、お前……明日から学校行く気なん?」
「おう!俺、暫く行けてねーんだろ?皆も心配してるだろうし早く行きてえもん」
……正直、それは困る。このまま学校に行かせて、ゾンビモードになってしまったらどうすればいいのか分からない。
「お前ずっと行方不明やったんやで。いきなり学校行って倒れたらどないすんねん」
「大丈夫だって!」
「何で断言出来んねん。記憶ないから何処で何してたとか、飯食ってたかどうかも分からんやろ」
「う。まあ、そうだけどさあ」
よし。この方面で当分は学校に行くのを諦めさせて、その間にゾンビモードからの戻し方を特定する。あわよくばゾンビモードになる条件なんかも特定出来れば心強いが……。
「やだ!行く!」
……この男がそう簡単に俺の言うことを聞く訳は無いと思ったが。
「あかん。我慢せえ」
「やだやだ!だってお前は学校行くだろ!?俺だけ家で一人とか超暇じゃん!」
「我儘言うな。倒れられたら困るねん」
「うー……体育とかは控えるから!だったら良いだろ!?」
「嘘やな。お前体育めっちゃ好きやろ」
「ううぅ……やだやだ!一人やだー!」
……あかん。これは無理矢理でも着いてくるやつや。
でも、確かにここに一人で残していくのも不安だ。一人の時にゾンビモードになって、外にでも飛び出してしまったら……いや、そっちの方が怖くないか?
「……分かった。無理は、禁止やぞ」
学校に連れて行く危険性か、俺が居ない時にゾンビモードになってしまう危険性。どちらも考えて俺が選んだのは……学校に連れて行くことだった。
ゾンビモードについて分かることが少ない為、連れて行くのは怖過ぎるが……それでも俺の前でゾンビモードになってくれる方がまだ何とか出来る可能性がある分、マシだろう。
……まあ、ほんまはゾンビモードにならんのが一番ええんやけど……。明日、何も無いことを祈ろう……。
一抹の……いや、めちゃくちゃでかい不安を抱えながら、俺は眠りにつくのであった……。
第三話に続く……




