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「うわ、中もめっちゃ広い……豪邸やん」
「すげー!ベッドふかふかじゃん!」
……コイツ、まだ汚れてる身体でベッドにダイブしよった。そのベッドはお前のな。
「有難いけど……こんなん掃除とかどないしたらええねん」
改めて家を見回すと、とても2人で住むには広過ぎる豪邸だった。正直、2人で掃除し切れる気がしない。
「あ!何かメモ置いてあるぜ!」
「何やねん。次期当主サマからか?」
とりあえずそのメモを手に取って、中身を確認してみる。
『輝薇瑠くんへ
私の用意した家は気に入ってくれたかな?
君が私に頼み事なんて珍しいから、気合を入れて選んじゃったよ!
何か必要なものがあったら玄関にあるホワイトボードに書いておいてくれれば、君が学校に行って不在の間に用意しておくよ!
後、掃除も君が不在の間にハウスキーパーにさせておくから、安心してくれたまえ!
それでは、楽しいプチ家出ライフを!』
「……至れり尽くせりやなあ」
用意が良いというか、なんというか。
まあ貰える物は有難く貰っておくが、ここまで世話になるのは流石に申し訳ないような。
「へー!全部やって貰えるんだ!すげー!」
後ろからアリスがメモを覗き込む。
……そういえば、二人暮らしだということは次期当主サマには伝えていなかったような気がするが……ベッドや小物類はしっかり2人分用意されていた。
「……どこまで分かってんねん」
有難いが、ちょっと怖い。
昔からあの人には隠し事が出来なかった記憶がある。何処から仕入れているのか知らないが、あの人に分からないことなど無いのではないかと思うくらいの情報を持っているのだ。
ひょっとしたら、ゾンビのこともバレている上で、あの人は俺を泳がせているのだろうか……?
「……まあ、ええけど」
「え、何?風呂入って良いの?」
「え。あー、勝手にしいや」
俺の返事を聞くと、アリスは楽しそうに風呂場へとすっ飛んでいった。
……あ。一番風呂入りたかったのに。まあ、ええか。