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その後、俺はアリスに特殊メイクを施し、アリスの家へと向かった。
そこで何とかアリスの親を言いくるめ、無事に同居生活をすることが決まったのであった。
「お前、マジすげえな。俺の親を説得なんて絶対無理だと思ってたぜ」
「何とか納得させた……って感じやけどな」
必要な家具等は既に準備されているらしい。流石次期当主サマ。
なので俺達は必要最低限の私物だけ持って、新生活を始める家へと向かっていた。
「……何。何でそんなジロジロ見るんや」
「んー……いや。やっぱ俺の目に狂いは無かったなあ、ってさ」
「は?」
「お前マジで漫才向いてると思う。あんなにスラスラ言葉が出てくるなんて才能だろ」
……何やジロジロ見てくると思ったらコイツ、まだ諦めてなかったんかい。
「やらんって言ったやろ」
「ええー。でもその才能を活かさないなんてちょーもったいねえよ」
「ちょーもったいなくてもええねん。興味無いんやから」
そんなことより俺はコイツの今後の生活をどうするかが課題だった。
肌の色は化粧で何とかなるとして……後は……。
……俺は考え込んでいるうちに早足になり、いつの間にかアリスを置いて行ってしまったらしい。
隣にいた筈のアリスが、隣には居なかった。
「……アリス?」
振り返ると、アリスは俺の数歩後ろを歩いていた。……何か、歩き方がふらふらしているような。
「どないしてん。具合悪いんか?」
俺はアリスの方へと駆け寄る。しかし、彼は返事をせずにふらふらと歩いていた。よっぽど疲れているのだろうか。
……………いや、ちょい待ちぃ。
何かつい最近、同じようなことがあったような……。
「……っ!」
俺はすぐにアリスから離れようとしたが、遅かった。
「グ、ヴヴヴ!!」
アリスは俺を押し倒し、俺に噛み付こうと襲いかかって来る。目は赤く濁っており、焦点が合っていない。
これは、昨夜と同じだ……!
「アリス!!」
呼びかけても反応は無い。ああクソ!昨日はどうやったら戻ったんやっけ……!!
「アリス!頼むから戻って来い!なあ!!」
昨日は呼びかけたことで元に戻った。多分、そうだと思う。
だからこそ俺はアリスに呼びかけ続けたが、一向に戻る気配が無い。
あかん……!やられてまう……!!
「クソッ!何でやねん!何で戻らんのや!!」