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しかし、俺の家で共に生活するとなると、俺の両親にバレてしまう危険性があった。
……ということなので、俺は最終兵器を使うことにする。
俺は寺本家に生まれたが、寺本家には本家に当たる奉日本家が存在していた。つまり、寺本は分家なのだ。
奉日本はそれはもうお金持ちの家で、国すらも味方につけている……とか何とか聞いたことがあった。実際どうかは知らないが。
まあその話は今はどうでもいい。本家が奉日本だからって俺に何か関係あるのかと言えば、奉日本の次期当主と俺は仲が良いことだ。
彼に頼めば別荘くらい用意してくれるだろう。
「もしもし、今ええすか」
「うん?どうしたんだい?何か頼み事かな?」
「本家の次期当主なら別荘くらい貸してくれるかな、と思いまして」
「あはは!それはまた派手な頼み事だね!」
「いきなりで申し訳ないんすけど、今すぐに住める場所が必要なんすわ。……無理すかね」
「勿論それは可能だけど……プチ家出かな?」
「……まあ、そんな感じすわ」
……本当のことを言う訳にはいかない。
アリスのことは、俺だけで隠していかなければならないのだ。
確かにいきなりするには無茶苦茶な相談であり、拒否されてもおかしくはない。
その場合は別の方法を考えなければならないな、と思いながらも俺は本家の次期当主サマの返事を待った。
「うーん……。まあ、分家の次期当主様の頼み事だからね!すぐにでも用意させるさ!」
「……ほんますか。ありがとうございます」
「ああ!住所は……」
そこからはトントン拍子に話が進んで行き、俺とアリスの共同生活の場所はすぐに決まってしまった。
「なあなあ!別荘って広いのかな!?」
「うーん……まああの人の別荘やし。多分広いやろなあ……」
「すっげー!俺めちゃくちゃ楽しみになってきた!」
何もかも規格外な次期当主サマのことだ。きっと気合を入れて別荘を選んでくれるに違いない。
別に俺は住めれば何処でも良いのだが、貰えるものは有難く頂戴しておくことにする。
「……それよりも親にどう説明するかやな」
俺の家は割と自由にさせてくれるので問題無い。……だが、問題はコイツの家である。
「お前の母さん、めっちゃ心配性やん?」
「寮暮らしも認めてくれなかったしなあ。まあ、何とかなるだろ!」
何とかなれば、ええんやけど。いや、コイツじゃ絶対無理やろ。寮暮らしの説得も失敗してるやんけ。
……仕方ない。ここは俺が上手いこと丸め込むしかないか……気が重い。