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冒険者ギルドの受付さん  作者: ゆう@地球
第1章(全6回)
2/7

初心者さん襲来!§2 襲来

「だーかーらー!ゴブリン退治がしたいんですって!分かるでしょ!?冒険者ビギナーの最初の冒険といったらゴブリン退治!」


「お姉さん、お願いします。故郷の村からの旅費で、お金ほとんど残ってないんです!」


 さっきから騒いでいるこの二人。

 冒険者登録もしてない初心者さん。

 ガランディールさんの知人のお子さんです。


 外ハネチャラ男ヘアで茶髪の男の子が、

  プルチーノさん/ファイターで、

 ポニーテールで茶髪の女の子が、

  シャオチーさん/スカウトだそうです。


 歳は16〜7と言ったところでしょうか。

 この国では16で成人なので一応大人なんですが…


 いきなりギルドに来て、依頼をくれって…

 どこの馬の骨とも知れぬ方々に依頼など出来ません。信用問題に関わります。


 それに、このマルサルドール市、先程も説明しましたが大都市なんですよね。

 近場でゴブリン退治なんてありません。

 あっても大規模な軍事行動になる事案です。

 初心者さんには無理ゲーです。


「えっとですねぇ…ですから、まず冒険者登録を…」


「しますとも!」


「ではまず戸籍謄本の写しか身分を証明出来る何かを」


「へ?何すかそれ?」


 ふっ!これだからきょうびの若者は…


「地元の領主さまとか村の長老さまとかに貰わなかったかなぁ?」


 にっこりと微笑むわたし。

 ひきつってますけどね!


 不安げに、ひそひそと相談する少年少女。


「身分証って何かな?」

「あれじゃない?村長に貰った通行手形」


 相談を終えた二人は、恐る恐る、2枚の木札を取り出す。


「あーそれですね。じゃあ確認しますよー」


 お隣のロザリア州のエヴァント村ですか。


 それから、ギルド謹製の魔法の小杖(ワンド)をかざして、いろいろ確認。


 え?コピー機?パソコン?なんですか?それ。

 そんなものある訳ないじゃないですか。

 魔法文明の発達した異世界なんですから。


 あ、でも、カメラならノームの国とかにあるかもです。

 爆発落ちが期待出来ますけどね。


「確認しました」


 記録もしましたけどね。

 魔法って便利!

 なんてご都合主義!


「それじゃあ、お次はこちらの石板に右手か左手を置いて下さい。魂魄登録します」


「コンパ…何?」


「タマシイを登録します」


「うほお!」


 少年の方、喜んでますね。

 まあ、珍しい魔法技術ですからね。


 え?そんな便利な事出来るなら最初の書類の件は要らないだろう、ですって?

 それがですね。法令で定められているんですよ。

 最近は、いろいろ大変なんです。


 登録完了です。


「登録おめでとうございます。それから、こちらはギルド謹製初心者さん向けガイドブックです。認識票は後日発行されます」


 と言って赤い箱に入ったガイドブックをお二人に進呈します。

 なんで赤い箱なんでしょうね?

 駆け出し冒険者のことも赤箱級って呼びますし。

 不思議です。


「じゃあ早速ゴブリン退治を!」


 少年の中では、ゴブリン大人気ですねー。

 ゴブリン好きの少年。

 やだ、ちょっと怖い。


 現実を教えて差し上げないと。


「では少々お待ち下さい」


 席を離れ、書類棚へ向かいます。

 依頼リスト・討伐指定リスト・ダンジョン情報・秘境情報など様々な書類を漁ります。

 幾つか見繕ってカウンターへ戻ります。


「ゴブリン退治ありましたけど…」


「それです!その依頼受けます!」


「お二人には無理ですね」


「へ?なんでですか?どうして意地悪するんですか?」


「お姉さん、ツンデレなんて今時…」


 この二人…


 笑顔を絶やさないわたし。

 がんばれ!


「募集人数50人以上。

 自前で装備品揃えることの出来る者のみ。

 依頼内容、メルカール州に於ける長期的ゴブリン討伐。

 傭兵部隊案件ですね。これ」


「そんなぁ」


「やだもう。あたし泣きそう」


 泣きたいのはこっちですよ。


「じゃ、じゃあ、猫探しとか犬探しでもいいです!」


「お願いします!」


「は?」


 笑顔のわたし。

 声は笑ってません。

 ドスの効いた「は?」ですよ。


 心無しか、二人が怯えてる様に見えるのは気のせいでしょう。


 どこでそんな知識つけてくるんでしょうね。

 ある訳ないじゃないですか!

 猫や犬を探す依頼なんて。

 通常は冒険者ギルドで扱う様な案件じゃあないんです。

 伝説級の依頼です。


 もしあっても、探してから退治しちゃう依頼です。

 ライオンとか、サーベルタイガーとか、ダイアウルフとか。


 あるいは、探してから捕まえる依頼です。

 羽の生えた猫とか、人の顔の犬とか。


 万が一、飼い犬・飼い猫探しの依頼あるとします。

 どこぞの奇特なお金持ちが依頼を捻じ込むとかですね。

 その場合、ベテランさんが犠牲になるオチしか予想出来ません。

 コメディーですし。


 え?そんなこと言って次回やるつもりだろう、ですって?

 そんなこと、わたしに分かる訳ないじゃないですか。

 ただの受付さんなんですから!


「駆け出しさんでも引き受け可能な依頼といえば…

 これなんてどうでしょう?」


「あるんですか!?」

「やったね!」


「隊商の護衛。主街道外れるルートだと、たまに依頼が来るんですよ」


「それでお願いします」


「あ」


 しまった。


「どうかしたの?お姉さん」


「…これ、行き先が、エヴァント村ですねぇ……」


「ぬぉおおおっ!!」

「やぁあもう!」


「隊商の護衛で、故郷に凱旋…とは、いきませんよね?」


 悲哀に満ちた空気感ですねー。


 どうしましょう。

 あとはこれしか。


「もう一つありますけど…」


「まだ、あるんですか!?」

「もうそれでいいです!何でもします!」


 女の子が、軽々しく何でもするなんて言っちゃいけませんよー。


「………下水道の大ネズミ退治です」


「へ」

「ひぃっ」


「1匹あたりクロン銀貨1枚。手数料と税が2割ほど引かれますので、手取りはもう少しさがります」


 しばしの間。

 微妙な空気。

 微笑むわたし。


「…それでいいです」

「…お願いします」


「それでは、詳しい説明を。市の担当者が見聞の為に同行することになりますので…」


 淡々と説明をするわたし。

 死んだ魚の様な虚ろな目の2人。


「…明日の朝、こちらに集合となります。よろしいですか?」


「「…はい。わかりました」」


「ところでお二人さん。本日の宿泊先はお決まりですか?宜しかったらこちらで紹介も出来ますが…」


「あ、それは大丈夫っす。ガランのおっさんのとこにしばらく厄介になる事になってるんで」

 さすがナイスミドル。


「そうですか。それでは明日よろしくお願いします」


「「はい」」


 無事、お仕事決まって良かったですね!新人さん!


 と、安心したのも束の間でした。

 再び事件です。


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