19.よれよれのシャツ、朝日
「生きる、死ぬ」
首をつろうとして
ひもがないのでやめました
手首を切ろうとして
カッターが見当たらないのでやめました
電車に飛び込もうと思って
人に止められてやめました
あぁ
意外と簡単に
人は死ねないものなの
偉そうな説教よりも
抱きしめてもらえれば
あと一週間は生きられるのに
なんて
思うあたしは愚かでしょうか
生きるも死ぬも紙一重
死ぬしかないな、と思っても
明日には
生きていてよかったな、と思ったりするから
笑ってしまう
「声」
声、声、声
声もたくさんあると
怖いものに変わる
あたしは
聞こえないふりをして
通り過ぎる
ついてこないで
耳に残るあの言葉は
あたしの胸から消えない
「臭い」
異臭がしたんだ
おそらく
人のものではないような、そんな
だから
みんな嫌な顔をした
だけど
それは人だった
獣でもなく
無生物でもなく
それは人だった
その時
自分をまともだと思い込んだ人は
残酷な言葉を吐く
自分をまともだと証明したい人は
異物を排除しようとする
同じ人なのに
同じ人なのに
あの時と同じだった
あの時
机と椅子と黒板
誰もが子供すぎたあの頃
「欲張り」
きっかけなんかわからない
ただ
今考えると
あなたに逢えたあたしは
出会う前より
幸せを知ったし
こんなにも
出会った時より
あなたを愛してる
だから
欲がでるんだね
本当は
あなたとつながってるだけで
幸せ者なはずなのに
「もしも」
もしも
あたしが
死んでしまったら
泣いてくれる人は
どれくらいいるのだろう
忘れないでいてくれる人は
どれくらいいるのだろう
もしも
あたしが
いなくなってしまったら
探しに来てくれる人は
どれくらいいるのだろう
骨になっていても
あたしだと
解ってくれる人は
どれくらいいるのだろう
あたしは
あたしが消えてしまった時の
“もしも”を考える
あたしがいなくなった後の世界
おそらく、ぜったい
世界はかわらない
新聞にも載らない
朝も夜もくるし
地球はまわり続ける
株価は上がりも下がりもしないし
就職難は続くだろう
ただ
ただ
その後
みんなが笑っててくれたらいいなと思う
誰も泣かないように
できたら悲しいことは少なくなるように
あたしが神様に出会えたら
そうお願いしよう
あたしは明日も生きるだろうけど
もしも
明日
不慮の事故なんかに遭遇しても
どこかの誰かがこれを読んで
あたしを
忘れないでいてくれたら良いな、と
心の隅で思ってる
「今」
希望、夢、愛
未来にもっていけるものは
いくつある?
不安なら手をつないで
ぎゅっと抱きしめるから
信じられなくなったもの
汚れてしまったもの
たくさんあるかもしれない
絶望と向かい合って
涙を流したり
消えない傷を
胸に秘めているのかもしれない
それでも
笑っていけたらいいね
小さな幸せを見つけられたらいいね
互いが互いを
想いあえたなら
少し温かくなる
寂しい夜も
少し優しくなれる
奇跡も起きない
過去も変えられない
未来も見えない
なんて残酷
だけど
握った手は離さないで
大丈夫だよって笑うから