11.ヨーグルトとスプーン
「とじる」
思い出してしまったら
きりがないから
過ぎてしまったことは
私には
どうしようもないから
昨日も
たぶん今日のことも
私はしまったまま
見ないようにするのだろう
「素」
晴れているくせに
雨が降っている
何が悲しいの?
そんなに
誰が
あなたの涙の素になるの?
私は
あなたを泣かすことはしないし
バカなことを言って
笑わせることができるのに
だけど
あなたが笑うたびに
本当の笑顔を見ることは
いつまでたっても
できないのだろうなと確信する
「動物園の檻の中で」
動物園にいる動物たちのように
檻に閉じこめられたい
逃げられないように
脱走なんか考えないように
毎日
同じことを繰り返して
たまに
愛想をふりまいて
少し汚れたコンクリートの上で
目の前を通り過ぎていく
私に似た形をした人々の人生を眺めていたい
ただただ
ぼんやりと
別に
干渉するわけでなく
静かにひっそりと
幸せそうな親子連れとか
まだぎこちないカップルとか
行き場をなくした老人とか
あるいは
飼育員とか
私は
そのうち
出されるエサを食べなくなるだろう
心配したスタッフが
何の効果もない
注射やら
薬を飲ませるだろう
そして
ある日
ぱったりと死ぬだろう
横になって
たぶん
小雨の日に
「弱る、そして生きる」
頭痛がやまない
それに
貧血気味
胃痛も腹痛もある
おそらく微熱も
こんな生活を続けるなんて
だるいと思いながら
意外と
しっかり生き延びている自分が
可笑しくなる
ちゃんと
心の臓は動いているという事実
あの人の
左胸に耳を押し当てたら
もう少し頑張れるのに
「島」
もし
あれが現実になったら
私は荷物をまとめて
逃げ出すかもしれない
何もかも捨てて
逃げ出すかもしれない