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054 亡者の迷宮6

(真上にいるアレが獣ってヤツか?)


エルンストは戦闘のさなかで天井から差し込む光が遮られるのに気づいた。

光を遮っているのは巨大で動く何者かであることだけは理解できたが、戦闘中に確認するわけにもいかないので少し警戒しながらも無視。


ズバァン!


エルンストは轟音と共に目の前にいるボスへ向かって突進突き。

ボスはその場から一切動かずに迎え撃つ。


キィン!


「おっ」


ボスの剣はエルンストが持つ大剣の先端を正確に捉えて上方向へ逸らし、その勢いを利用して剣の柄でエルンストの顔を攻撃。

しかしエルンストがただ攻撃を受けるはずもなく、即座に空中で一回転して攻撃を回避しつつ剣でボスの後頭部に攻撃を命中させた。


(コイツの鎧……)


一撃命中させた時点でなにかを察したエルンストはすぐにボスを踏み台のようにして上へ飛んで逃げ、壁際へ移動してから着地。

手に持つ剣とボスの後頭部を見る。


「アンタのもか」


硬い鎧のヘルメットと衝突させたエルンストの剣は刃が欠けており、ボスのヘルメットも同様に大きな傷がついていた。

そして剣の欠けた部分はすぐに修復され、ヘルメットも自動で修復されている。


(同じ素材の武具を持った敵と戦うのは初めてだ、こいつァ予想以上に厄介だぜ)


圧倒的な機動力と大剣の威力で相手を自分のペースに巻き込む戦いを得意とするエルンストに対して、この迷宮のボスは相手の攻撃を真っ向から迎え撃つカウンター型。

迷宮を消滅させるためにできるだけ早く決着をつけたい現状では好ましくない戦闘スタイルの敵。


「よし、使うか……」


エルンストは大剣の刀身に手を触れて拭うように這わせる。


「起きろ相棒、お前の力が必要だ」


呼びかけに答えるかのように、大剣の刀身は青白く美しい月光のように変化した。

輝きを放つそれは、神秘的ながらもどこかおぞましいものが感じられる。


「一撃で仕留めるぞ!」


その声に反応した大剣は刀身の輝きが増し、それを確認したエルンストは大剣を持つ右手を引き、何も持たない左手を前に突き出してボスに手のひらを見せるように構える。


ズバァン!ズバァン!


今回の轟音は一度だけでなく、複数回鳴り響く。

高速で移動している途中に再び加速して攻撃の威力を高め、先ほどよりも素早く動けば相手が反応できないかもしれないという期待がある。


(だろうな)


常人では目で追えるかも怪しいほどの速度で移動しているエルンストは、ボスがしっかりと構えて自分を迎え撃つために動いているのが分かった。

ボスが自分の速度に反応できないかもしれないという期待は打ち砕かれたが、もとよりそれはアテにはしていない。


ズバァン!


ボスが剣の間合いに入った瞬間。

エルンストは左手のひらから轟音と共に衝撃波を出す。

それによってボスがほんの僅かに仰け反った瞬間。


「い”ぃアぁッ!」


右手に持つ大剣でボスの胸元を思い切り突いた。

大剣の先端は傾斜のある胴体の防具によって上へ逸れたが、逸れた先にあるのは首。

大きな刃で無慈悲にも貫かれたボスの首は体から離れて中を舞い、ソレが地面に落下したのはボスの横を通り過ぎたエルンストが攻撃の勢いを止めて振り向いたのとほぼ同時だった。


「おいおい、元気すぎやしねぇか?」


首から上がなくなっている胴体がエルンストの方を向く。

人間という生物であれば首から上がなくなった時点で活動を停止するはずだが、ボスの体はまだ動いている。


(確かに切った感触があった、元から首が外れてるデュラハンの類じゃねぇ、首を落としたくらいじゃ倒せねぇヤツってことだ)


戦闘経験豊富なエルンストにとっても異様であるため警戒して様子を見ていると、ボスの胴体は持っている剣を上空に掲げた。

その時点で何かをしようとしているのは明白なので、なにかが起きる前に攻撃しようと思ったがそうしなかった。


「くそっ!」


ボスが剣を掲げると同時に天井が一瞬で消滅し、大量の土や草と共に三人の者が落下してきた。

一人は腕に鎖が繋がった手かせをしている少女。

その少女を抱えているもう一人は左腕が異形ではあるがすぐに迷宮に入った直後に出会った人物だと分かる。

そして最後の一人もその特徴的な服装から迷宮に入った直後に出会った人物だと分かるが、落下中でも察することができるほどに重症だった。


ズバァン!


すぐに飛び上がって空中で重症の男を抱え、落下中は重力に逆らうように弱めに細かく多くの衝撃波を発生させて着地の衝撃を和らげる。

落下中に少女と異形の腕の人物も助けようと思ったが、そちらの二人はエルンストが手助けするまでもなく着地している。


「ぐはっ!あ、ど、どうも……」

「お前、初めて会った時みてぇな有様だな」

「あなたは相変わらずお優しいようで……」


そう言いながら微笑むと彼は姿を消した。

伊作たちに何があったのかは次回で

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