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28章  ダイヤを売る

前回のあらすじ

 リクとヘルガは洋服を仕立てました。

 リクは「みだらなネマキ」を手に入れた。


 リクの せいりょく が 5 あがった

 リクの じせいしん が 4 さがった

 ヘルガの みりょくが 6 あがった


 オレとヘルガの服は1週間で仕立て上がるらしい。

 それにしても「みだらなネマキ」とかいう余計な買い物をしてしまった。


 ……後悔はしてない。


「ヘルガ、ちょっと寄りたいとこがあるんだけどいいかな」

「うん。いいよ。そのあとでいいんだけど、私もリクを連れていきたいところがあるんだ」


 断る理由もない。

 オレのほうの用事から済まそうか。

 

 町の中心に『シュミット商会』はあった。

 前にラウラ達ネコ族を捕まえて奴隷にしようとしていた商人たちだ。

 

 悪どいことをしてるなあと思う。

 しかし、ミアに聞くところによれば、シュミット商会は良心的な商会であり、シュミット商会を捕まえるならば商人は全員刑務所行きですとのこと。


 しかし、オレも獣人の地位向上に生涯を費やすわけにも行かないので、ラウラ達に危害が及ばない限り気にしないことにしよう。

 それにせっかくの商人とのパイプであるので、十分に活用したい。


 さて、シュミット商会の若旦那アルベルトはいるかな。


 シュミット商会は大通りから少し外れたところにあった。

 

 正面玄関から入る。

 受付嬢がこちらに出てきた。


「どうしました、ヘルガ様。こちらに御用でしょうか」


 オレではなく、ヘルガに声をかける。

 ギルドマスターってのは有名なんだな。


「ううん、リクが用事があるんだって」

「リク様ですか」


 オレは無名のようだ。もちろん、別にかまわない。


「こちらのアルベルトの若旦那様に用があってきた」

「若旦那のお客様ですか。お約束はしてらっしゃいますか?」

「してない」


 これ、お約束がないと待たされるパターンだな。面倒だな。


「アルベルトの若旦那に、『ミアが砂漠に行きたいか聞いている』と伝えてくれ」

「ミア……伯爵様のご令嬢、ミア様ですか」

「そうだ」

「わかりました」


 受付嬢はがいったん下がると、アルベルトが10秒もかからず、走ってきた。


「やあ、アルベルト殿」

「リ、リク様……」


 アルベルトは急いできたのか息を切らしている。


☆★


 アルベルトに人払いをお願いし、用意された別室へ。


 ここも応接間なのだろうが、町長の屋敷や冒険者ギルドよりも随分派手にこしらえてある。


 まあ、商売上の「箔」ってやつかな。


「それで、ヘルガ様も連れて見えられるとはどういうご用件でしょうか」


 ヘルガは有名なので警戒されてしまうようだ。


「いや、ヘルガとは個人的に仲が良いので連れて来ただけだ」

「そ、そうですか」


 少し緊張が取れた気がするアルベルト。

 ギルドマスターは町長から頼まれて不正現場を抑えるための証人として呼ばれることもあるらしく、突然の来訪は相手が警戒するらしい。

 そうマリーが事前に教えてくれていた。


「今日はオレが用があって。これを見て欲しい」


 用意してあった小袋を取り出すと、そこから豆粒大のダイヤを応接テーブルの上に置いた。


「こ、これは!……触ってもよろしいでしょうか」


 アルベルトがダイヤを観察する。

 

「悪いものではないと思うんだが、どうだろう」

「ええ、ここまで大きいのは、初めて見ましたよ、これだけで大変価値があると思いますが」

「この宝石を売り出したいと思ってるんだ」


 オレは、指輪にダイヤの宝石をちりばめたものを取り出し、アルベルトに見せた。


「加工することもできる。まあ、技術は特殊なので流出させるつもりはないが」


 アルベルトの顔色が変わった。


「この宝石を、これほどにも見事に加工できるものがいるとは!」


 アルベルトはダイヤの指輪をまじまじと見つめる。


「リク様、ダイヤをを加工したものはどこにいるのです!」


 アルベルトが身を乗り出してきた。


「近い」


 ヘルガがアルベルトを制した。

間合いにはヘルガは厳しい。


相手が達人だった場合、それ以上近づかれるとヘルガの護衛が間に合わずオレが殺される間合いなのだろう。


「ああ、すみません。いやあ、この宝石はごくまれに流通するのですが、小さいものが多く、これほど大きなものはあまり出回ってないのです。それに、大変固いため、加工ができずそれほどの値打ちがなかったのですが……」


 アルベルトが鼻息を荒くしている。


「この加工した指輪の状態で宝石店におけるなら、何倍もの値段がつくでしょう。いや、これは技術革命ですよ!」

「価値の高さを理解してくれて嬉しい。これを取り扱ってくれないだろうか」


 アルベルトがいやらしく微笑む。よだれがたれそうだ。


「取り扱わせていただけるのですか!ええ、ええ。もちろん、取り扱いましょう。加工の職人ともよろしければ直接、話をさせていただきますが」

「いや、それは出来ない。職人は、現在一人しかいないため、安全上の理由で、正体を明かせないのだ。それゆえ、私が間に立って話をしている。加工についての話は、私を通してほしい」

「そうでしたか、確かにこれほどの技術者は見たことがありませんからな。私は商売上いろんな都市へ行きますが、こんなに見事なものは見たことがありません」


 そうか、良かった。儲かりそうだな。


「それで、価格の方はどれほどになるのでしょうか」

「そうだな……任せる」

「え?……任せていただけるのですか?」


 アルベルトが嬉しそうに笑っている。


「我々は商売が得意ではないのでな、貴殿にお任せしたいのだが。まあ、伯爵家ご用達のアルベルト殿が、我らを裏切ることは無いと思うがな。それに、私は伯爵令嬢ミアと婚約しているが……おいで、ヘルガ」


 ヘルガを隣に座らせ、ソファに押し倒す。


「リク様、な、何を」


 アルベルトがオレの突然の奇行に驚いている。

 ……ちょっと演出だよ、許してねヘルガ。


 ちょっと乱暴に体をまさぐり、唇を奪う。ヘルガは不思議そうにしているが、拒んだりはしない。



「……ん……ぅ……なに、リク。……人前だよ」


 あ、ヘルガの目が赤くなった。【赤い瞳を、魔族化を元に戻せ】

 ヘルガにウインクをしておく。

 

 アルベルトのほうへ向き直り、


「このように、ギルドマスターとは懇意にさせていただいている。もし、我らを裏切るものがいたら、ヘルガが屋敷ごと潰すだろう」

「うん、潰す」


 ずれた服の胸元を戻しながら、ヘルガが頷いてくれる。


「ははは、ヘルガ様、ご冗談を。ギルドマスターがそんな過激なことを」

「まあ、当面は表向きにはできないが、ヘルガは私のヨメに迎える予定だ。私の言うことなら何でも聞くように調教してある」

「うん、なんでもする」


 ヘルガが頷く。アルベルトがあっけにとられている。


「リク、この人悪い人?」

「ん?ネコ族の父親を殺して、ネコ族を襲って奴隷にしようとしてたけど」

「ふーん、殺そう」


 ヘルガがどこから、取り出したのか。抜刀した。


「ヘ、ヘルガ様!」

「ネコ族の中には、私の家族もいるんだ!そんなことする奴は、許さない」


 ん?演技に熱が入りすぎな気がするな。ヘルガの家族って?ネコ族が家族なの?

 貴族の出身でこの町のスラムに捨てられたんじゃないの?


「私の友達を、傷つけるようなことをする奴らは、許さない!」


【紅魔爆炎破!】 あ。ヘルガ、これ演技じゃなくてマジのやつだ。

 いつの間にか、目が赤くなってるもの。


「ひああああああ!」


【ヘルガ、ストップ!魔族化解除!】【ショートテレポート!】


 ヘルガの側へ。手を握ってあげる。


「やり過ぎだよ、ヘルガ」

「ご、ごめん。いつもはこんなにすぐ激昂しないんだけどね。感情って難しいね。抑えようって思わないとこんなに毎日笑えたり、怒ったりできるんだね」


 ヘルガはにこにこしている。

 オレがいるから、感情を解放してるのだろうが、偉いこと荒ぶるなあ。

 

 でも、オレはヘルガに甘いので、我慢しろなんて言わない。

 オレの隣にいるときには思い切り感情を出せればいいと思う。


「ヘルガ、オレといないときは、少しだけ気を付けてね。オレも止めに入れないから」

「そこは大丈夫。リクといないと魔族化するかもしれないって思って安心できないから、抑えるしかないしね」


 そこは、大丈夫か。いままで魔族化を抑えながらずっと生きてきたのだ。

 なんて二人の世界に入っている場合ではない。


 アルベルトは怯え切っていた。


「適正価格で頼む」


 脅しをしようと思ったが、強すぎたな。

 

「ひい、はい。もちろん、リク様を裏切ることはしません、どうか、どうか!」

「約束だよ」

「はい!はいーーーー!」


 ヘルガが話しかけると、アルベルトは完全に怯えていた。


アルベルトはリクと適正価格で商売をするそうです。


※良ければ、ブックマーク、感想、評価ポイントをお願いします。


 もし、もらえたらモチベーションがあがりますので。

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