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27章  サキュバスのコスプレ

前回のあらすじ

 マリー・シュナイダー。冒険者ギルドのサブマスターはリクのものになりました。

 ギルドマスターであるヘルガに続いてサブマスターのマリーを手中に収めたことにより、冒険者ギルドはオレのものだ。わはは。

 

 先ほど、冒険者ギルドの組織図、業務のフローを確認した。

 大きな案件はヘルガに決裁権があるが、小さなものはマリーのみで片付けることも多いらしい。

 マリーも抑えたので少なくとも、冒険者ギルドにヘルガ討伐の依頼が来た場合は握りつぶせるはず。


 マリーは「機密保持」だのなんだのと言っていたが、ヘルガの安全のためだと行ったら黙った。

 しかし、まだまだマリーには冒険者ギルドに帰属意識がある。

 フフフ、こういう小さなことの積み重ねで元の組織を裏切らせ、こちら側に屈服させていくことで従順なスパイを作るのだ。


「ねえ、行かないのリク。お店しまっちゃうよ」


 オレはマリーに冒険者ギルドの意思決定過程などを確認していたが、ヘルガは退屈そうだ。

 ヘルガは事務能力も高い優秀な副官マリーに支えられており、トップとしては甘やかされていたようだな。


「そうだな、もう行こう」

「マリー。行くよ、準備して」


 動こうとしないマリーに声をかける。


「ヘルガ様。まだギルドは二人とも抜けた状態で回せるほど組織立っておりません。ヘルガ様が外出されるなら、私は残らないと」


 マリーに対しては割とワガママなヘルガであるが、最もなことを言われてしまっては、しょうがないな。


「うーん、それもそうだけど」

「まあまあ。ヘルガ、オレと二人きりで行こうよ」

「そっか。せっかくデートだし、それがいいね」


 ヘルガは嬉しそうにはしゃいでいる。


 ヘルガと一階へ降りると、ルーカスと目が合った。

 ルーカスは掲示板で依頼を探しているようだ。


「ルーカスさん、こんにちは」


 ヘルガがにこやかに挨拶する。


「ヘ、ヘルガ様?……こんにちは」


 ルーカスは不思議そうに会釈をした。


「今日はご機嫌ですね。何かいいことがあったんですか」

「うん、リクとね、服を仕立てに行くんだよ」

「ああ、そうですか。それはそれは」


 ルーカスがオレに耳打ちしてくる。


「お前、ヘルガ様のなんなんだ?あの嬉しそうな顔、見たことねえぞ。いつもむすっとしてるのによ。あいさつされたのなんか初めてだぞ」

「なんなんだって言われてもなあ。……あまり広めるなよ?オレの嫁だ」

「はあ?」


 ルーカスが大きな声を上げて驚いていた。


「って、いまさら驚くまでもないか。さっき、ヴァルキュリア一瞬で転がしやがったからな。まあ、強い奴同士惹かれあうのはわかるよ。……ん?ヘルガ様って婚約してなかったっけ」

「ああ、婚約は破棄させる」

「……相手子爵家だったよな」

「いい情報網を持ってるな」

「あのなあ、ギルドマスターの婚約情報なんてここにいる奴らみんな知ってるって」


 まあ、そりゃそうか。


「最悪、子爵家とやりあうことになる」

「本当なんだな?」

「本当かどうか、伝えたら後戻りできないけどな。ダイヤの分働いてもらうぞ」

「……はあ。聞かなかったことにする。……変な奴らがウロチョロしてたら教えるよ。鼻は利く。それぐらいしかできない」

「助かる。じゃあな」


 ヘルガのもとへ。


「ちょっと話長くなった」

「ルーカスさんと仲良くなったの?」

「おなか鳴らしてたらごはん分けてくれたんだ」

「ちゃんと食べなよ」

「だって、マメしかなかったんだよ」

「なにそれ」


☆★

 

 ヘルガに案内され、仕立て屋へ。

 ヘルガと一緒だと目立つ。

 ヘルガがにこにこしているので、みんな不思議そうにしていた。


「ここだよ」

「ミア様に教えてもらったの。ふふ、ミア様より先に来たら怒るかな」

「怒ると思う」


 特にオレに。


「でも、ここ二日ずっと一緒にいたんだから今日のリクは私のだよ」


 ヘルガが腕を組んで来た。


「お客さん、店の前でいちゃついてると他の客がはいれないじゃないか。入るなら入りな」


 貫禄のいいオバちゃん。


「ヘルガちゃん!ヘルガちゃんじゃないか。あんた、服を買いに来なさいって私が会うたびに行ってたのに、やっと来たね」

「だって、必要ないって思ってたんだよ」

「……おばちゃんの言うとおりだろ?必要あったじゃないか。いい男だね」


 おばちゃんにじろじろ見られる。ああ、これを品定めって言うのね。

 ほんと、知り合いのオバちゃんって感じ。ヘルガも気安く話している。


「外を出歩く服と、家用の服だね」

「うん。なんでわかるの?」

「いっつも戦闘用の服きてたんだからどっちも持ってないだろ。それに持ってたとしても欲しくなるのが恋ってもんだよ」


 おばちゃんは生地を探しながら話しかけてくる。

 オレは吊るしのものを見ていた。


「ご主人も仕立てるだろ?」

「お願いしたいけど」

「リクにはいろいろ似合うと思うよ。どんなのがいい?」

「んー、あまり得意じゃないな。見立て任せていい?」

「任せてよ。いろいろ流行ってるのヴァルキュリアのみんなに聞いてきたんだよ?」


 ベケットが誇る女性トップランカー達もキャイキャイ服の話しするんだね。

 

 店内を見て回る。お、メイド服だ。やはりいいものだな。

 クラシカルなメイド服は清楚な趣がある。


 ヘルガと店主が生地選びであーだこーだ言ってるので、店の奥を見てみる。


「お、ご主人、夜の服もお探しかい?」

「夜の服?」

「わかってるくせに」


 ん?どういうことだ……これは紐ではないか?

 これは、おー、水着か?いや、これ濡れたら透けそうだぞ。


 あー、夜の服ってそういうことかあ。この紐で何すんのよって思ったけど。


「この肩口から背中があいてる奴はなに?」

「ああ、これは成りきりの服さ。最近若い連中に流行ってるらしいよ」


 うーん、素敵な文化がこちらにもあるらしいな。


「何見てるの?」

「……これ」


 先ほどの肩口から背中が開いている煽情的な服を指さす。


「これ何?」

「これはね、別売りのこの黒い翼をつけるのさ」


 黒い翼を取り出す。


「これは……」

「そう、サキュバスに成りきる服さ。背中の羽をつけられるようにしてあるんだ。これを着るといつもより大胆になれるってさ」

「……リク」

「買おうか」

「……ばかじゃないの」


 頬を染めて恥ずかしがるヘルガ。


「買って」

「……いらない」

「買うべきだ」

「……何よそれ」

「買うんだ。買わないとオレは明日から何も着ないぞ」

「風邪ひくよ」


 そこで、優しいのはずるいぞ。でも、オレは諦めない。


「さあ、買うんだ」


 ヘルガは、オレのほうを見て睨む。

 別に怒ってないくせに。


「……おばちゃん、それ頂戴」

「あいよ。羽もいるんだろ」

「……羽はいらないよ」


 ヘルガには自前の立派な羽があるんだから。


仕立ては1週間ほどかかるみたいです。


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