代償と森の精霊
フロネ街に戻ってきた。
今日は街の近くの森の奥まで行き、魔法を試しがてらモンスターと戦う予定だ。
「母さん、散歩してから遊んでくるから、今日は遅くなるね。」
「分かったわ、フレちゃん。気を付けてね。」
朝御飯を食べ終ったあと、母さんに一言いれてから俺は街に一番近い森へと足を運んだ。
「相変わらず、スライムばかりだな。」
森に入り、少し歩くと、スライムが自由気ままに動いている。
「街から離れたから、そろそろ飛行魔法を試してみようかな。」
魔法使いで飛べる人は結構多いので、俺も飛んでみたい。
早速魔導書を取り出して、魔法名を、タッチしてみる。
「おお!浮いた。これはすごい。」
浮けるかなと思ったら浮くことができた。
高めに浮いたり、速度を出して飛んでみる。
「めっちゃ怖えー。落ちたら死ぬ。無理だ。」
前世から高いところが苦手だったので、怖くて飛ぶのを躊躇してしまった。
だが、コントロールは思いの外簡単だったので、低空非行で木々を避けながら進むことにした。
「おお!こんなに早いスピード出せるのか。」
時速100キロくらいの早さで、現在進んでいる。
木々を交わしながらすいすい進んでゆける。
「すごく動体視力が上がってる。この速度で飛んでも木にぶつかる気配がしない。レベルのおかげかな。」
ぶつからずに進んで、十五分くらいたった。
「けっこう奥にきたし、ここら辺で試してみるか。」
街から離れたので、森の中の少し開けた場所で、魔導書を出した。
「お、すごい。けっこうな数の魔法が書かれてる。」
つい先日の王都での魔法大会をみることが出来たおかげで、色々な種類の、かなりの量の魔法を見ることができた。
そのため、魔導書にはたくさんの魔法名が記載されていた。
「まず、精霊の召喚以外の全ての魔法を試してみるか。」
火魔法から使って山火事になっては困るので、水魔法から試してみる。
「切り裂け、アクアカッター。」
詠唱など俺には要らないが、格好をつけて魔法を発動する。
水の刃がすごい速度で飛んで行く。
スパッと50メートルほど離れていた木々を、半分に切り裂いていく。
ドオォーン
「やばっ。やりすぎたかも。」
20メートルほどあった木々が倒れ、空間が出来る。
もともと開けた土地にいたが、さらにその面積を増やしてしまった。
「魔力を込めすぎたかな?威力が強すぎた。」
日常で使える魔法と違い、攻撃魔法の調整は思いの外、難しかった。
「威力の調整をしながらやってかないと、森が大変なことになってしまうかもしれないな。練習しよ。」
最低限の威力で片っ端から魔法を試すことにした。
「ふぅ、とりあえず、精霊の召喚以外の魔法も半分は試せたな。」
かなりのペースで魔法を使っていったので、さすがに疲れてしまった。
「やばい、そろそろ帰らないとだ。」
長い時間、夢中になっていたため、日が傾きかけていることに気づかなかった。
街から離れているため、急いで帰った。
「そういえば、モンスターにあまり出会わなかったな。」
森の奥に入ったが、強そうなモンスターは現れなかった。
もっと、奥に行かないと、強いモンスターに出会えないのかもしれない。
「ただいまー。」
家についた。
「お帰りなさい、フレちゃん。今日はどこに行ってたの?」
「ん、内緒ー。」
「え?」
母さんからの質問を誤魔化した後、自分の部屋に行き、今日の反省をする。
「魔法がたくさん使えるようになったはいいけれど、加減だったり、どの場面でどういう魔法を使えばいいのか、正しい判断が出来るか不安だ。これは、練習するしかないかな。」
使える魔法が増えた分、練習が必要になるのであった。
一晩あけて、昨日と同じ場所に来た。
今日は昨日出来なかった魔法を試す予定だ。
「加減したつもりだったが、かなりの範囲がさら地になってるな。上からみたらすごく目立つな。」
昨日の魔法を試した爪痕がすごく残っていた。
その時、閃いた。
「あ、そうだ、回復魔法でこの土地を治せないかな。」
回復魔法は人にしか使ったことはなかったが、土地や物も行けるかもしれない。
早速試してみた。
「土地よ、回復したまえ。ヒール」
なかなかの魔力を込めて、さら地全体を回復させる。
「ニョキニョキニョキ」
「おお!成功だ!」
木々がどんどん生えてくる。
回復魔法で土地も治すことが出来るらしい。
うれしい成果だ。
ニョキニョキニョキ
どんどん生えてくる。
ニョキニョキニョキ
「あれ?」
異変に気付いた。
木々が元の大きさに達したのに、成長が止まらない。
ニョキニョキニョキニョキ
「ま、まずいかもしれない。どうにかして止めないと。」
焦った俺が思い付いた選択肢は3つ。
燃やす。
凍らせる。
真っ二つ。
「よし、凍らせて成長を止めよう。」
俺は凍らせるを選んだ。
ニョキニョキ、バキバキ
木々はお互いの間隔が無くなり、一本の大きな木へ変化している。
「全て凍りたまえ、アブスルーリーフリーズ。」
木々の水分を凍らせて、動かなくさせた。
ピタッと木々の成長が見て取れなくなった。
「…成功かな?とりあえず、成長は止めたけど、それでも大分大きくなってしまったな。」
どうやら手遅れみたいだ。
パキパキ、ニョキニョキ
「ん?」
音がなり、木々の成長が再開した。
「……まあ、こういうこともある。」
俺は成長を止めるのをあきらめ、見守ることにした。
それから15分ほどがたち、一本の大樹ができた。
高さはわからないが、半径25メートルほどのサイズだ。
「これは、街から離れてる場所とはいえ、もしかしたら見えるかもしれない。バレて騒ぎになるまえに切り刻むか。」
さすがに問題になると思い、木を切るために魔力を込める。
「切り裂け、エアーカッ「ちょっと、待ってください!」」
いきなり声が聞こえてきた。
「な、なんだ!?」
かなり驚いた。
幽霊かもしれないと警戒する。
「そんなに警戒しないでください。貴方ですね、私を復活させてくださったのは。」
大樹から女の人が出てきた。
…真っ裸で。
「驚きました(色々な意味で)。貴方は誰ですか?」
「私はこの地の木々に眠っていた、ドライアドです。あと数百年は眠らないと回復出来ないはずでしたが、貴方のおかげで早く復活することが出来ました。」
ドキドキしているのを隠し、冷静に会話をする。
女の人はドライアドらしい。
長い髪も瞳の色も緑で、肌は若干小麦色だ。
気になる胸は控えめだ。
「僕は貴方を回復させて、目覚めさせたってことですか?そして、貴方は木の精霊ですか?」
「はい、そうです。人間達の戦争のせいで緑が壊れ、緑を治して精根使い果たした私を、貴方は復活させてくれたのです。お陰さまで、また緑を増やすことが出来そうです。」
俺の回復魔法で精霊まで復活させてしまったらしい。
俺の右手が疼く、くっくっく、これが俺の隠された力!
…なんてことを考えている場合ではない。
「お役に立ててよかったです。もっと回復させましょうか?」
「いいんですか?」
「はい、大丈夫ですよ。」
今度はドライアド本体に回復魔法をかける。
「ふぁぁーっ!」
ドライアドは気持ち良さそうにしている。
「ありがとうございました。お礼になにか差し上げたいのですが。」
「お礼なんていいですよ!しいて言えば、僕がここに来たときに姿を見せてください。それと、この森に強いモンスターが出たら案内してください。」
森の案内と裸を見たい、しゃなかった、ドライアドに会いたいので提案してみる。
「そんなくらいでいいのですか?わかりました。今後、お役に立てるようにがんばりますね!」
「ありがとう、よろしくね。」
話がまとまった。
今日は予定外のことに驚いて疲れたので、もう帰ることにした。
「それじゃ、またね!」
「あ、ちょっと待ってください。図々しいですが、もうひとつお願いがありまして~。」
呼び止められたので話を聞くことにした。
「あのぅ、それは…。」
体をくねくねさせながらドライアドが言っている。
控えめだが美しい形の胸がとても美しい。
「…あれ?なにかおかしい。」
なにか体に違和感を感じつつ、ドライアドと話をしていると、段々とドライアドがどうしようもないくらい魅力的に見えてきた。
「あのぅ、私、貴方の精◯がほしいです。」
「えっ!?」
そのドライアドの変態発言のおかげで気付いてしまった。
これは魅了魔法だ。
だいたいまだ、精◯出る年齢じゃない。
こいつめ!人の恩を受けたあと、調子に乗って俺の大切なものを奪おうとするとは、なんてやつだ。
童貞の価値を舐めるなよ!
「これはまずい。一か八か、植物の精霊エント、我を助けたまえ!」
精霊に困ったときは精霊に頼る。
即座に魔導書を出し、召喚魔法を試してみる。
ニョキニョキニョキ
「きゃあ!」
地面から触手のような植物が生えてきて、迫ってくるドライアドを締め付ける。
「お主か、我を呼んだのは。…ほぅ、お主はかなり強いな。良かろう、お主と契約してやろう。」
今度はドライアドと似ているがつり目で、肌は白っぽく、胸の大きな女が出てきた。
……植物で大切なところは隠れてる。
「契約とか、後にしてこの状況をどうにかして。あっ。」
精霊エントと話している途中で俺の理性が途切れた。
「うぉぉっー!」
縛られているドライアドを襲おうと飛びかかった瞬間、木の根のような鞭が飛んできて、俺の首の後ろに直撃した。
「ぐはっ!」
俺は意識を失った。
「全く、世話の焼ける主だな。さて、このドライアドには少々お仕置きが必要みたいだな。」
気絶するフレードを見ながら、エントは呟いた。
ブックマーク4件とてもうれしいです。
これからエントとかなり仲良くなります。
次回もお願いします。