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代償と十年



10歳になった。


身長が140㎝くらいにまで伸びて、顔立ちがはっきりしてきた。

日本人というよりはヨーロッパ系の顔つきに近い気がする。

前世では身長が低かったので、このまま成長してほしい。


毎日のトレーニングのおかげでレベルはついに80になった。

この世界の人間のレベルの限界は100らしいので、あと20レベルを上げれば最大だ。

よく頑張った俺、あと少しだ。

たった10年でここまで来てしまった。


最近はレベルが大分上がりにくくなっているので、回復魔法を使う意外のレベル上げを探した方がいいかもしれない。



これまで、俺は父さんに剣術を、母さんには魔法と勉強を教わって来た。

だが、魔法と勉強はもう必要ないかもしれない。


魔法は母さんの出来る魔法を全部見せて貰い、あとは魔導書を利用して、いつでも使えるようにしたらやることが無くなった。


「フレちゃん、計算のやり方でわからないことはない?」

「ないよ!」

「そ、そっか…。さすがね!」


母さんは少し寂しそうだ。

勉強も、前世の義務教育のおかげで余裕だ。

子どもの脳の記憶力もすばらしい。


「あ、やっぱりわからないところあるから、教えて!」

「いいわよ、どんどんお母さんを頼ってね。」


勉強は簡単だが、すぐに出来すぎるのも不自然なので、適度にわからないふりをする。

その方が、母さんもうれしそうだし。


この国の歴史や他の種族の特徴、弱点、国名などを覚えたり、小学生程度の数学や文字の勉強など、この国の大人程度の知識はもう、頭に入っている。


魔法と勉強は大丈夫だが、問題なのは剣術のほうだ。

毎日決まった時間に手合わせをしてきた。

剣術を父さんが俺の為にすごく考えてくれている。


「フレード、なかなか、いい太刀筋だ。だが、甘い!ほら、死角を利用されないようにどうするか、思い出せ。」


俺は右目と左腕がないので、父さんも右目をつぶって左腕を使わないようにして、技術を教えてくれている。


「ほら、二刀流と盾使い対策だ。しっかり覚えろよ。」


けれど、右側は四角が大きいし、両手に剣を持つ人や左手に盾をもって戦う人にはどうしても不利になる。


「待っててな、フレード。今の動きに対してどう動くか、お父さん、考えてるから。」


父さんは俺の為に悩んでくれているのでそれはうれしいが、申し訳ない気もする。


悩みすぎてハゲないでほしい。

あ、もう手遅れだった。



俺は剣術だけではなく、魔法が使えるから魔法も取りいれる戦い方をしたい。

むしろ魔法メインの戦いかたの方が強いと思うが…。


死角を利用されないようにしないとだ。

自分なりに工夫して考えて行きたいと思う。

魔法が使えるからなんとかなる気がしている俺の気持ちに、父さんは気付いていないようだ。


剣術は難しいのでやりがいがある。

早く上達して一人旅がしたい。

最近の俺の目標は冒険者になって旅をすることだ。


父さんのほぼ毎日行っている、冒険者ギルドで登録して、すぐに旅にでたい。

戦争から時間は経ってしまっているが、貧しい子どもや苦しむ人々を救うために。


ただ、冒険者ギルドへの登録は16歳からなので、もう少し待つ必要がある。

まあ、旅に出て死んだら意味が無いので時を待っているが。

正直、まだ旅は怖いのです。



さて、レベルが上がって、魔法なら誰にも負けないのでは無いかと調子に乗りそうになるが、実際に強いモンスターと戦ったことなんてないので、いざというときに魔法が使えるか心配だ。

モンスターと戦うなんて怖いしね。


友達と遊ぶと母さんに嘘をついて街に一番近い西側の森に行ったりしてきた。

だが、近くの森にいるのはスライムくらいなので、あまり参考にならない。


この世界のスライム、ほとんど攻撃してこないし。

森の奥に行ってみるのもいいかもしれない。

近いうちに行ってみようと思う。


旅に出るために必要な物を考えたときに、真っ先に思い付くのはお金だ。

これには考えがある。

このフロネ街で治療院を開くという考えだ。

16歳になったら旅にでるので、それまで俺の回復魔法でこの街に貢献しようと思う。


ただ、父さんと母さんには回復魔法が出来ることを今まで内緒にしていたので、後でお披露目だ。

どんな反応をするか楽しみだ。



さて、10歳になったはいいが、最近困ったことがある。

近所の子ども達と俺は昔から遊んでいたというか、子守りをしていたが、そのうちの一人の女の子に惚れられたみたいだ。


髪が青くて長い、若干つり目のシロナという女の子だ。

友達になって一年たったときから、俺によくなついていて、分からないことをよく俺に聞いてきた可愛い女の子だった。


日課の散歩をしていた時、その途中でシロナに声をかけられた。


「あ!おはよう、フレード君!やっぱりこの時間はこの道を歩いてるんだね!」

「やあ、シロナ。おはよう。そうだね、僕はいつもこの散歩道を歩いているからね。散歩が好きなんだ。」


「そうなんだ!お散歩って気持ちがいいもんねー。」

「お、シロナには分かるのか、散歩の良さが。分かる人には分かるよね。…ところで、どうしてシロナはここにいるの?」


街の中だが、森に近い散歩のルートなので、ここで子どもと出会うことは滅多になかったので聞いてみた。


「ちょっと、フレード君に用事があって!」

「え、僕に?どうしたの?」


「ちょっと、見せたいものがあるから着いてきて!」

「なんだろ?わかった、いいよー!」


シロナに右手を引っ張られ歩いていく。

しばらく歩いて着いた場所は俺の気に入ってる野生の花、コスモンの群生地だった。


「うわぁ!すごい。」

「でしょ!フレード君なら絶対気に入ると思ってたんだ。」


コスモンとは、白いコスモスのような花で、辺り一面結構な量の花が開いていてすごくきれいだった。


「ありがとう、シロナ、すごくうれしいよ!」


例を言った後、しばらく花を見ていた。

いいものを見れた。


「満足したよ、ありがとシロナ。そろそろ帰ろっか。」


結構長い時間、花の魅力の余韻に浸っていたので、帰ろうとした。


「待って、フレード君。実はフレード君に伝えたいことがあるの…。」

「うん?なに?」


まるで告白の前のフレーズみたいだと思いつつ、シロナと向き合った。


「あのね、ずっと前から、フレード君といると、心がぽかぽかしてたの。それで、ね、あの…。と、とにかく好きなの。私、フレード君が大好きなの。」

「………え?」


好きって目を見ながら結構真剣に言われたのですごくびっくりした。

まさか本当に告白されるとは。


「…ごめん、シロナ。今はそういうのよくわからないから、大人になって、気持ちが同じだったら、そのとき、改めてもう一度言ってきてほしいな。」


子どもなら数年たてば忘れるだろうという考えがあり、後回しの最終手段、「大人になったら」を発動した。


「…わかった!私、早く大人になる。その時、もう一度ちゃんと伝えるから!フレード君、待っててね。」

「わかったよ。それじゃ。」


とりあえず、その場は収まった。

……逃げた訳じゃないぞ!←完全に逃げです。

相手が子どもだけど、好意を持たれるのは何歳でも嬉しいと思った。


「忘れてるといいけどなー。どの程度まで考えたらいいのかさっぱりだよ。Google先生、子どもの恋愛感情について教えてください。」


人に好意を向けられるのに慣れていない童貞は、小さい女の子の告白にすら動揺してしまった。

今後どう対応すればいいのか、困る出来事であった。



さて、夜になった。

父さんが帰って来て、ご馳走を食べ終わった。


そして、父さんからは真っ黒な日本刀のような剣、母さんには魔法の呪文がたくさん書いてある本を貰った。

ちゃっかり鑑定してみると、両方とも馬鹿げてるくらい高いものだった。

間違いなく10歳の子どもに渡すようなものではなかった。


父さんには、切れ味が良すぎるので扱いを徹底するように念入りに言われた。


母さんには、この国の魔力Bランクの人が使える魔法だけを集めた本ということを教えて貰った。


両方ともすごく為になるのでとっても嬉しかった。

信頼されてるのが分かるし、幸せだ。


プレゼントを貰ったあと、俺はまず、父さんにお願いをした。


「父さん、僕、治療院を開きたい!実は僕、母さんの治癒魔法よりももっとすごい、回復魔法が使えるんだ。だから、この街の怪我や病気になっている人達を助けたい!そのために治療院をお父さんの力で建ててほしいんだ!どうかお願いします!」


滅多にお願いをしない、俺からのお願いに二人は驚いた表情をしていた。


「フレードは本当に回復魔法が使えるのか?」

「もちろん、本当だよ。二人にかけてあげる。」


父さんに聞かれたので二人に回復魔法をかけてあげることにした。

二人の肩に手を当て、全身くまなく良くなれと思いつつ、魔法をかけた。


優しい光が二人を包み込み、ふっ と消えた。

指の先の小さな傷や、大きめの傷痕まで、二人の体の隅々までが治った。

父さんも母さんもとても驚いている。


「信じてくれた?」


俺が聞くと、はっ と意識を取り戻したかのようにして、


「ああ、もちろんだよ。フレードはすごいな。いいぞ、治療院でも何でも全力でサポートしてやる。」


と、言ってくれた。

即決だった。

そして、二人で俺を抱き締めてきた。


「フレード、すごいぞ、さすが俺たちの子だ」

「フレちゃん、すごいよ。いつの間にこんなにすごい魔法使えるようなってたのよ。お母さん、惚れ惚れしちゃう。」


両親にすごく誉められたので嬉しかった。

父さんの抱き締める力が強くて痛かったのは内緒だが。

やりたいことに挑戦させてくれるいい親だ。


次に母さんにもお願いをした。


「母さん、僕は今まで見たことのない魔法をたくさんみたい。大きな魔法や特殊な魔法、強い魔法を見に行きたい。連れていってほしい。お願いします。」


色んな魔法を見て、魔導書の能力で使えるようにしたいからだ。


「もちろん、いいわよ、フレちゃん。丁度いいわ。一ヶ月後に王都で魔法大会があるからそこに三人で行きましょ。」


母さんは直ぐにそう言ってくれた。

思いの外、早く行けるみたいだ。

すごく楽しみだ。


一ヶ月後に王都で行われるの魔法大会を見に行けることになり、近いうちに治療院を開くことになった。


これから、忙しくなりそうだ。

それと同時にやっと、この世界で役に立つことが出来そうだ。


色々と話が決まったあと、大事なお知らせとお願いをした。

楽しい雰囲気を壊してしまいそうなので言っていなかったことだ。


「父さん、母さん、大切な話とお願いがあるんだけど、聞いてくれない?」


珍しく真剣そうに話したせいか、父さんも母さんも真剣な顔つきで聞いてくれる。


「僕、この回復魔法が使えるようになってから、何回か自分にかけたことがあるんだ。でも、僕の右目と左腕は治らないんだ。ちょっと、期待したかもしれないけれど、この魔法は自分には効かないようになってるんだと思う。」


父さんも母さんも俺の魔法を浴びたときに全身くまなく治った感じがしたと思うので、少しは希望を抱いてしまったと思う。

が、無理なことは無理なのではっきりと治らないと言っておいた。


自分の体が治せないことを言ったときに、二人ともすごく悲しそうな顔をしてしまったが、もう慣れた俺まで悲しくなるのでやめてほしい。


この話はすぐに終わらせて次にいこう。


「僕の体のことは心配したり、責任を感じたりしなくていいから気にしないでほしい。それはいいとして、父さんと母さんに一生のお願いがある。」


二人とも泣きそうな顔をしていたが、すぐにまた、真剣な顔つきで聞いてくれた。


「僕、妹か弟がほしい」

「……。」


兄妹が欲しいとお願いをした瞬間、二人ともとても複雑そうな顔をした。

そして、黙ってしまった。


多分、俺のように五体満足ではない子どもにまたなってしまうのではないか、悲しませてしまうのでは無いかとか考えているのだと思う。


だが、俺の回復魔法で二人の体の悪いところは治ったはずだ。

というかそもそも、俺の右目と左腕は代償であり、父さんと母さんの体は関係ない。


俺が唯一かけた迷惑がこのことだ。

だから、二人目を作ってもらい、俺が旅に出た後も幸せに暮らして欲しいと思う。


子どもがたくさんいた方が、父さんと母さんの笑顔が増えると思ったからだ。


父さんと母さんに、俺の体のこともあって不安なのはわかるけどそろそろ切り替えて欲しい。


しばらく様子を伺っていると、


「フレードの願いはわかった。考えておく。」


と、父さんは静かに言った。

母さんはずっと黙っていたが…。


話を終わりにして、寝る時間なので寝ることにした。

来月から忙しくなりそうなののでがんばりたい。




ターリア・ソフィ視点


フレちゃんが生まれて早くも十年がだった。


フレちゃんは手のかからない子で、赤ちゃんの時も夜泣きはほとんどなかった。

勉強とか魔法を教えても、いつの間にか出来ていて、天才だと思った。


もう、今ではほとんど教えること無くなってしまった。

でも、フレちゃんは魔法がたくさん知りたいみたいだった。


私はフレちゃんの為になるように、今年のプレゼントは奮発して貴重な魔法の本を買ってあげた。

今年も喜んでもらえたのでよかった。


いつもはプレゼントを渡し終わると、片付けをして寝るだけだったが、今年は違った。

フレちゃんが珍しく、私たちにお願い事をしてくれた。

うれしかった。


魔法を見に行きたいというお願いはすぐに大丈夫と言えたけれど、治療院の話は驚いた。


フレちゃんが私の治癒魔法より質のよい回復魔法を使えることにもとても驚いた。

すごく嬉しかったのでたくさん誉めて、これからの予定を三人で話あった。


一段落したところで意を決したようにフレちゃんが大事な話とお願いをしてきた。


最初のフレちゃんの自分の魔法で自分の体は治せないと言った瞬間、私はどうしようもないくらい胸が痛くなった。


この子は自分に魔法をかけて治らなかったときに、本当に辛い思いをしたんだろう、心の底から落ち込んだんだろうと思って。


何度、私が代わりに慣れればと考えたかは分からないけれど、また、どうにか代わりになれないか、治してあげれないか考えてしまった。


私はとても自分が憎くなり、フレちゃんの気持ちを考えて泣きそうになってしまった。

だが、フレちゃんはそんな私たちを見越してか話を切り替えてお願いをしてきた。


弟か妹が欲しいと。


このフレちゃんのお願いも、私は色々と考えてしまった。

次の子にもまた、辛い思いをさせてしまうのでは無いかとか思って。


フレちゃんが生まれた後、二人目の話はしたけど、その時は怖くて出来なかった。


時間がたった今でも、まだ、責任を感じている。


私はどうしたらいいのか分からなくなり、ゆっくりと旦那と話し合っていくことに決めた。


最愛の我が子のお願いをどうするかは、最愛の旦那と一緒に時間をかけて考えるのが最善の選択だと思って。


全身に回復魔法をかけると処女膜まで治ります。

なので、無理やり処女を奪われた人の役に、フレードは立つことができます。


フレードは自分へ回復魔法をかけるとき、最初は毛布にくるまって光が漏れないようにして回復魔法を繰り返していましたが、すぐに光らないように回復魔法をかけることが出来るようになったので、バレずにここまで来ました。



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