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代償と作戦

ー 戦争が始まり、一年ほどが経過した。


奇襲されたクロム王国側は、直ぐに王都からも援軍を出した。

激しい戦争が続き、戦場の最前線である国境の森やその近くのフロネ街周辺はひどい有り様になっていた。

至るところに死体が放置され、えぐれた地面や折れた木々があちこちで散らばっており、死体や建物の燃えたせいで異臭が漂っていた。


戦っているのは主に兵士や魔法使い、冒険者が中心となっている。

今はお互いに大きな一撃をいれることが出来ずに、膠着状態が続いていた。


しかし、ガルード獣国とクロム王国との戦いは、ガルード獣国が優勢にあった。

こうなった原因はフレードのせいでもある。

フレードは、炎竜ミスティニアスと戦った際、エント以外の精霊の召喚を行っており、その際に精霊たちは負け、力を回復させるため長い眠りに着いたのだ。

そのため王国の魔術師達が、精霊の召喚をすることが出来ずに、押し込まれていたのだ。


そんな戦禍に巻き込まれた場所の中でも、新しく生まれた命は幸せにすくすくと育っていた。


「フィールちゃん、よしよしママでちゅよ。おっぱい飲みましょうねー!」

「あう!」

「よしよし、フィール。もう!可愛いな、本当。ソフィ、俺にも抱っこさせてくれ!」


フロネ街の一軒家でソフィとヘルクレードは、フィールを可愛がっていた。

フィールはソフィのお腹にいた子どもで、生まれてまだ一年もたっていない女の子だ。

フレードの妹になる。


戦争が始まって直ぐ、ソフィは産気付いたのでヘルクレードはずっとソフィの側にいた。

エントとクロがフロネ街の敵を直ぐに殲滅してくれたお陰で、問題なくソフィは子どもを生むことが出来ていた。


ソフィはフィールが五体満足で生まれてこれることを心から願っていて、生まれた時にその赤ちゃんを一目見て、とても安心していた。

ヘルクレードも大喜びで、戦争が近くで起きていることなどすっかり忘れるくらいにはしゃいでしまっていた。


「おぎゃー!おぎゃー!」


…フレードの時とは全く異なる、本当の育児の大変さを初めて味わうソフィとヘルクレードは、連日寝不足で多少ぐったりしていた。


ー 一方その頃、クロとエントは戦っていた。獣人とも人間・・とも。


ひどく汚れて不潔だが力だけはありそうな男が、剣を抜いて構えて叫んでいる。

男は5人いて、その側にはひどく怯える若い女性がいた。


「お、俺は前線で戦った戦士だぞっ!そ、そんな俺様を癒すのが戦えない女どもの役目だろうが!」

「そ、そうだ!獣人が人間様に口出しするんじゃねぇ!」


そんな男達をゴミを見るような目で見つめるのは、クロだった。

男達は戦争での疲れを癒すために一般の女性をレイプしようとしていたのだ。


「フロネ街のみんなに危害を加えるニャら、お前らも敵だニャ。」


そう言うとクロは、男達には見えない速度で魔法を使い、男達の四肢とイチモツを切り離す。

ボトッと音がして、すぐに叫び声が聞こえてくるが、そんなことを気にも止めず、クロは怯える女性に近寄る。


「大丈夫かニャ?怪我はないかニャ?」


クロは優しく話しかけるが、女性の方は声が出ない様子だった。

クロは女性に回復魔法をかけ、安全な場所まで運び、別れた。


「被害が広がる前に、決着を付けに行くのがいいかニャ?」


空を飛びながら、クロはそんな事を呟いていた。

前線の支援物資が沢山送られたフロネ街では、怪我人の処置や前線で戦って疲れた者が押し寄せていた。


精霊と強い味方の獣人がフロネ街を守っている事を知ったクロム王国は、フロネ街を最大限に利用しようとして、住民の事など道具のようにしか考えていなかった。

そのため、今回のような被害が頻発していたのだ。


これ以上、この街に被害を出さないためには、戦争に決着を着けるべきだとクロは考えた。

また、クロを奴隷にして兵器として使おうとクロム王国の王族は考えてたため、度々夜襲を受けたが全て亡き者にしていた。


「…エントさんに相談してみるかニャ!」


クロは結局、エントと相談して決めることにした。



ー その頃、エントは獣人に攻め込まれないように国境の森で次々と獣人を暗殺していた。


「こいつらでは、相手にならんのじゃ。…ああ、速く強くならねばいけないのに、時間の無駄なのじゃ。」


そんな事を呟きながら、植物で獣人を締め殺すエント。

エント自信もこのクダグタと続く戦争をどうにかしたいと考えていた。

フロネ街を守っていればいいだけの問題ではなく、戦争を終わらせないと行けないことを面倒に思っていた。



ー 夜になった。


フレード治療院の二階で、エントとクロは今後の方針について話し合っていた。


「クロはガルード獣国の王を倒して、速く戦争を終わらせたいニャ。最近はクロム王国側にも敵がいて、このままだと手に負えなくなるニャ!」

「確かにクロ殿の言うとおりじゃな。だが、ガルード獣国が負けてクロム王国が支配すると、沢山の奴隷が出来てしまうと思うのじゃ。主はきっとそれを望まないのじゃ。」


フレードはフロネ街を守りたい。

そして、奴隷も生まれてほしくない。

獣人も人間も大切に思う。


クロとエントは、フレードの気持ちを最優先に考える。

そして、二人は話し合い結論を出した。


ガルード獣国とクロム王国、両方の王を殺せば戦争は止まり、フロネ街は平和になると。



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