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代償と掃討

ー エントはフロネ街へ到着した ー


「これは…予想外じゃ。獣人どもがもう街に侵入しているだと!?。」


森から戻ったエントは、フロネ街を守るために横に広く連なる城壁が突破されていたことに驚いた。

城壁があるため、直ぐには侵入されないと思っていたエントにとって、それは誤算だった。


城壁が直ぐに突破された原因は、獣人たちが用意した、巨大な投石機だった。

フレードの作った木の壁が無くなった時に、直ぐに攻められるように用意していたガルム獣国に対し、クロム王国は油断をしていた。


「くそ!獣人どもめ!急いで防御魔法を展開しろ!投石から城壁を守るのだ!」

「はい!兵長!」


幅広い城壁の上にいる傭兵達は士気を高め、必死に対抗した。

しかし、そんな傭兵たちは虚しく、城壁の一部を破壊され、敵の侵入を許した。

傭兵たちは投石に潰され、多くが犠牲になった。


いくら魔法がある世界とはいえ、大きな質量の投石を防ぐ事が出来る人間など、そうそうにいないのだ。

兵器の力の前に大抵の人間は無力だった。


「状況はあまり良くないのじゃ。」


フロネ街に多くの獣人が侵入したのは明らかで、制圧されるか、破壊されるかは分からないが、早く行動をしないといけないのは、一目瞭然だった。


「…取り敢えず、クロさんと合流するのが優先じゃな。」


何よりも守らなければならないのは、大切なフレードの愛する人。

その獣人の元へエントは急ごうと思った。

が、その前にあることに思い付き、ドライアドを連れて行動に移った。





ー 一方その頃クロは戦っていた。 ー


「壊させないニャ!大切な街を!フレードとの思い出の詰まった街をあなた達に壊される訳には行かないのニャ!」


クロは街に侵入し、次々と一般人を襲っていく獣人達に対して、叫んだ。

その声に反応した獣人達は、クロのを取り囲む。

クロは10人ほどの獣人を相手に、一歩も引かずに対峙する。


「お前、同じ獣人なのに人間の味方をするか!同族の恥め!」


クロと同じく猫の耳を生やした男が、素早く地面を蹴りクロに切りかかる。

だが、記憶を取り戻した彼女は飛び抜けて強い。


同族だろうと容赦なく首をはねる。

首の落ちた死体が勢いのまま数歩進んで、無い頭を探すように倒れる。

倒れた死体から血溜まりが出来上がる。


「ば、化け物め!お前に獣人としてのプライドはないのか!?」


クロを囲んでいた、一人の熊の獣人がそう問いかける。


「…私にはご主人様、フレードが全てだから。フレードが悲しむことをした奴はどんな相手だろうと…殺す!」


クロの雰囲気がガラッと変わり、静寂が訪れる。

その瞬間、クロの目から光が消える。


「ヒィィッ!」


男は悲鳴を上げ、動けなくなった。

殺意に埋めつくされた深く暗い、心を凍らされるような冷たい目を見て。



「ふぅ、この辺りはもう大丈夫ニャ!」


反り血を魔法で洗い落としながら、クロは一息着いた。

周りにはたくさんの死体が転がっている。

フロネ街の冒険者が強いことも関係したのか、フロネ街の被害は幸いにもそこまでのものではなかった。


クロは戦いの音が聞こえるところを次々と移動し、敵を倒した。

殺されそうになっていた沢山の人も助ける事が出来た。


味方が大勢殺されたことに気付いたのか、残っていた獣人達は建物に火を放った。

火の手があちこちから上がり、クロの怒りは更に膨れ上がった。


「つ!なんて事をしてくれるニャ!!」


クロは急いで火を水魔法で消しまわる。

大切な街が壊れるのを防ぐために。


「ハァハァ、終わったニャ?」


空へ浮かび、クロは息を整えながら辺りを見回す。

なんとか激しく燃えているところは無いようだ。


「ん!?あれば…何ニャ?」


東の離れたところにある城壁を守るかのように、いきなり大きな木が並ぶように映え始めたのが見えた。

その木は一直線に並び、成長し隙間を無くしていく。


これは、エントとドライアドが協力して、これ以上の獣人の侵入を防ぐために行った事だった。

元々あった城壁の外側に、特製の城壁を作った。

ドライアドはその出来たての木の壁に潜った。

そして一人で、城壁の外側にいる適と対峙した。


「ドライアドよ、頼んだぞ!」

「任せください、エントさん!死んでも通さないようにしますからね!」


エントはドライアドに防衛を任せ、クロの元へ急いだ。

クロも木の生えた東側へ飛び急いだ。


ー そして、二人は出会った。


ごくわずかに先に気付いたのは、エントだった。

木を足元に生やし、その上に乗ってクロの飛んでいる高さに合わせる。


クロもエントの存在に気付き、距離を詰めた。

一瞬、クロ鼻がピクッと動く。


そして、二人は向き合った。


「…探したぞ。クロ殿、そなたに大切な話がある。」


エントは単刀直入に話を切り出した。


「…分かったニャ。私も聞きたいことがたくさんあるニャ。先に話して欲しいニャ。」


クロは意外にも、いきなりすんなりと話を聞いた。


「我が主、いや、私たちの最愛の…最愛のフレードは…、フレードは…炎竜…ミスティニアスと…戦って……消えた。」


話ながら自然とエントの頬には涙が流れていた。

気を引き締めたはずなのに、何故か涙が止まらなかった。


「…。…詳しく…教えて。」


そんなエントの様子を真剣な眼差しで見つめるクロ。

エントはクロとフレードが解散した後の話を細かく伝えた。

クロはエントを見ながら静かに聞いていたが、やがて俯いた。


「…という訳じゃ。だから、我はお主に会いに来たのだ。」


全てを聞いたクロの目から、幾つものの雫が落ちていることにエントは気付いた。


「…やっぱり。…やっぱりそうだったんだね。ご主人様は、…死んじゃったん…だ…ニャ…。」

「…我の言っている事を…信じてくれるのか?」


エントの予想に反し、クロはすんなりとエントの言うことを信じた。

クロは歯を食い縛り、顔を上げた。

体を震わせ、その悲しみに必死で耐えながら。


「…信じるニャ!貴女がいつもご主人様と一緒にいたことくらい…知っていた…ニャ。…私と同じ気持ちを、ご主人様に対して持っているあなたが、こんな嘘を言うわけ無いニャ!」


クロは気付いていた、フレードが大切にしているもう一人の存在を。

そして、それが常に左手になっていたと言うことも。


「…そうだったのじゃな。驚いたのじゃよ。…信じてくれてありがとうな。」


エントは少し驚きながらもお礼を言った。


「…後でもっと色々とお話を聞かせて欲しいニャ。取り敢えず、侵入した敵を倒すのを手伝ってくれるかニャ?」


「ああ、勿論だ!二人で守ろう、主の街を!」


クロの意見にエントは賛同し、二人で敵の掃討へと移った。

フロネ街は城壁によって守られています。

国境の森から少し離れたところにフロネ街はあります。

国境沿いの街はフロネ街以外にもあります。


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