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代償と危険性と可能性

治療院を始めてから早くも一年近くが経過した。

かなり遠方から重い病気だったり、動かなくなった体の部分がある人が訪れるようになっていた。


処女に戻して欲しいという貴族なんかや、偉そうに命令してくる金持ちなどとそういう連中も、度々訪れた。


なので、最近は半日ではなくほぼ1日を使って患者を治している状況だ。

今日も朝から頑張ろうと治療院に向かおうとしたとき、父さんに話しかけられた。


「フレード、お前は自慢の息子だよ。お前のおかげでこの街に多くの人が訪れるようになり、街全体が豊かになっているよ。」


「ありがとう、父さん。でも、まだだよ、もっと沢山の人を治したいからね。」


父さんに誉められたので、うれしかった。


「さすがフレード、これからも頑張れな。だが、治療院に入りきらない人の列が出て来て、揉め事や通行の邪魔になる場合が増えてきてる。そこでだ、街の外れに治療院を移さないか?そうしたらそこも発達するし、土地が安いから大きな治療院を建てることが出来るぞ。」


父さんから指摘と提案を受け、考えた結果、俺は街の外れに治療院を移すことにした。

引っ越しだ。


「父さんの言うとおりだから引っ越しするよ、しばらく治療院休みにして、症状が重い人だけ治すようにするよ。」


「わかった、実はな、商業ギルドの方からお礼の話があってだな、元々ある屋敷を改築するだけだから安く早く済むと思うから。よろしくな。」


安く済むなら何よりだ。

さて、今日もいつも通り頑張るか。


今年の誕生日も例年と同じように過ぎたし。

ただ、変わったのはステータスだ。


ターリア・フレード

年齢 《エイジ》12

職業ジョブ治療士

レベル 155/999

種族レイス人間

技能スキル


『異世界言語』 誰とでも会話が可能

『鑑定』 見たものの価値や効果などがわかる

『回復を極めし者』 死んでいなければ、どんな病気、怪我も治せる。

『魔導書』 見た魔法を記録し、使用できる

『精霊の加護』精霊との親密度に比例し魔法力上昇

『奴隷愛』 奴隷を大切にするほど、全ステータス上昇



※レベルに応じて効果上昇


状態ステイト右目、左腕欠損、人間の女性と性交不可

犯罪歴 なし


体力A 魔法力S 筋力D 智力A



これが今の俺のステータスだ。

レベル100を越えれるか心配とか思ってはいたが、俺の限界は999レベルで、普通とは違うらしい。

まあ、チート持ちのレベルの上限が99だったら嫌だしね。


更に成長した魔法力、加わった技能レイスも素晴らしい。

だが、最近はただ回復魔法を繰り返し使うだけではレベルが上がり難くなっている。


レベルをあげるために必要な経験値というのは、同じことの繰り返しよりも色んなモンスターを倒したり、今までにやったことないことを経験すると上がり易かったことに気付いた。


まあ、前からその方がよさような気はしていたが、実際怖いしね。

でも治療院を閉めたら、モンスターを倒してから帰るようにしてもいいかもしれない。




さて、一年の内に色々変わったことはあるが、いつものように治療院を営業した。


今日は、見るからに貴族のお嬢様って風貌の人が訪れた。

金髪ドリルツインテールの17歳の女だ。

肌は白く目の青い、綺麗ではあるが正直あまり関わりたくないと思ってしまった。


「あなたが噂の治療士かしら?本当に子どもね。どんな怪我でも治せるのは嘘じゃないわよね?」


彼女の左右には騎士みたいなのが着いていて、凄く高圧的だった。

上から目線でずっと俺のこと見下してるし。


「ご主人様の魔法は凄いのニャ!どんな怪我でも治せるニャ!」


クロが彼女に向かい、笑顔でそう言ってくれた。

クロ、ありがと!


「うるさい!黙ってなさい!奴隷風情が!」


そんなクロの優しい言葉に対し、彼女はひどく罵った。

…カチンと来た。

今まで奴隷に対して嫌だなっていう顔をする人はいた。

そういうのは見なかったことに出来たが、面と向かって言われるなら話は別だ。


「ごめんなさいニャ…。」


クロは酷く落ち込んでしまった。

表情を見て分かる、クロの心は傷付いた。

…俺は静かに怒った。


「この治療院では従業員や奴隷に対する差別的発言をされた方には、お帰りになって頂いております。直ちにお帰り下さい。」


俺は笑顔で出口へ案内しようとした。


「ちょっと、あなたどういうつもり?やっぱり何でも治せるって嘘だったのね!」


「治療出切るのは嘘ではありませんよ。先も申し上げた通り、差別的発言をされたため、退出をお願いします。発言を撤回されれば別ですが。」


金髪ドリルを見ていいなと思っていた時の自分はもういない。

早く帰って貰いたかった。

だが、何か色々文句を言ってきて帰らない。

そして、最終的に両隣にいた騎士が脅してきた。


「おいガキ。お嬢様の命令を聞いて置かないとどうなるかおもい知らせてやろうか?」


胸ぐらを掴んで怖い顔をして睨んできた。

俺は自分に身体強化の魔法をかけまくり、胸ぐらをつかんでいる騎士の手を握り潰した。

自分の手の中で骨が砕けていく感触は、少し気持ちが悪かった。


「ぎゃーー!」

「き、貴様!」


怒ったもう一人の騎士が剣を抜いてきたので、みぞうちを殴り気絶させた。


のたうち回る騎士が死んでも目覚めが悪いので、腕を治療してあげ、気絶した騎士も回復させ起こし、うるさく叫ぶ彼女は魔法で眠らせて外にポイした。


「お、覚えてろ!」


腕を再生してあげた騎士が二人を担いで、帰ろうとした。

これから何かされても困るので、彼女に回復魔法をかけてあげ、二度と来るなと言っておいた。


三人を追い出したあと、治療院を閉め、俺はクロを慰めていた。


「クロ、気にするな。ああいう人もいるんだよ。クロが謝る必要は一切無いから。」

「ありがとうニャ、ご主人様。」


クロは一度落ち込むと、表面では笑顔を見せても心は気付いたままになるので、一度家に帰ったあと、夜になってから治療院に戻り、クロと一緒に寝ることにした。


クロと他愛もない話をしつつ、俺の腕をクロの枕にしてあげていつの間にか眠りに着いていた。

甘く優しい女の子の香りに包まれて幸せだった。


寝てから少しして、はっと目が覚めた俺は怪しい気配に気付いた。

窓から外を見ると、昼間の騎士の一人が俺の治療院を燃やそうとしていた。

あわてて男を捕まえ、傭兵を呼び、連れていって貰った。


俺はゾッとしていた。

もし、俺が居なかったらクロが怪我をしていたかもしれない。

騎士が魔法が得意では無かったから良かったものの、魔法で治療院ごと飛ばされたら、今のクロでは対処しきれない。

俺は心配になった。


「…クロの記憶を元に戻すしかないかな。ずっとそばに俺がいればいいけど、離ればなれになった時とかの事を考えると…怖いな。」


クロが毎日笑顔で迎えてくれるのが当たり前のように感じていた。

だが、治療院が有名になればなるほど、変な輩が増え、クロやメイサやサウに危険が及ぶことがあるかもしれない。

メイサとサウは一様いい宿を紹介しているので、大丈夫かもしれないがおいおい、俺が見ていた方がいいかもしれない。


「とりあえずは、クロのことだけど。どうすればいいか…」


俺は日本で暮らしていた時のように気楽に過ごしていたが、今回の事件で気を引きしめなければならないと痛感した。


その後、俺は夜が明けるまで、治療院の屋根の上で夜風に当たりながら、考えを巡らせていた。



それから10日間じっくり考えた。

新しく強い従業員を雇うこと、そしてクロの記憶を元に戻し鍛えることだ。


治療院を休みにして、俺はクロの記憶を元に戻すことに取り組むことにした。


クロに事情を説明して、回復魔法をかけることにした。


「クロ、俺がついてるからな!どんなに辛くても俺がいるからな!」


クロの賢者の記憶が辛いものである可能性もある。

覚えていないということは、精神的に凄くショックなことだったのかもしれない。

そういうことを踏まえ、念入りに俺はクロに自分の存在を主張した。


「あまり実感がわかないニャ。でも、どんなことがあってもご主人様が側にいてくれれば大丈夫ニャ!」


クロの言葉を信じ、俺はクロに回復魔法をかけた。

光がクロを包み、そして消えた。

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