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代償と余談

余談挟みました


ルーナ・シアベール視点(女性の獣人の患者さん)


私はガルム獣国の奇襲部隊を率いる司令官だ。

圧倒的な速さと正確さで敵を一網打尽にする事ができる、使う場面によっては戦争の優劣を一気に変えることの出来るほどの部隊ど。


日々部下たちを本気で鍛え、日々精進している。

おかげさまで影で鬼教官や、一生独り身、冷徹女などと、色々と言われているが…。


そんな私だが、休日に自主トレーニングで森に入った。

その時に、熊のモンスターに襲われもう少しで死んでしまいそうな若い女の子を見つけた。


「くっ!間に合え!」


私は急いで駆け寄り、女の子を身を呈して庇った。

グサッと音がしたと思ったら背中に強烈な痛みが走った。


「くっ!死ね!」


私はモンスターの首を落とし、地が足りなくなり意識を失った。



しばらくして目が覚めると、そこは軍の医療室だった。

助けた女の子は側にいて、私が起きた瞬間にお礼と謝罪を何度も何度もしてきた。


「悔しくて悲しいか?それなら、強くなれ。ひたすらに己を磨き続けろ!」


私は女の子にそう伝え、眠りについた。

次の日、立ち上がり動こうとしたが、なかぬか動き辛く大変だった。


血が出すぎたこと、傷が脊髄に達したことにより、私の左肩からうで先まで動かせなくなってしまっていた。


「くそ!動け、動けよ!」


何ヵ月かリハビリをしたが良くなる様子もなく、国で一番の治療士にも頼んだが、違和感と痺れが残る状態になってしまった。


「ルーナさん、怪我良くなって無いんですか?」

「大丈夫だ、だんだん良くなっているから問題ないよ。」


有能な私の部下の一人に気づかれたが、指揮官として弱みを見せるわけにはいかなかった。


それから一ヶ月後、私は森で人間の冒険者が話していた、「どんな怪我でも治る、子どもが治療士の治療院」のうわさを盗み聞いた。


はじめはどんな戯れ言だと流していたが、度々そのうわさを耳にするようになり、少しの可能性でもあればと考え、うわさの街に足を運んだ。


「人間どもめ、獣人を奴隷にしよって!だが…。」


その街に着くと、獣人の奴隷が他の街よりも多く見られた。

しかし、ルーナは気付いた。


「死にかけている同族がいない。どういうことだ?皆、元気ではないか。」


フレードのいるフロネ街は、他の街よりも圧倒的に奴隷の扱いが大分良かったのだ。

路上で死にそうになっていたり、絶望している人がいないという光景は、ルーナにとって驚きであった。


フロネ街は特別だったのだ。

それを知らないルーナは、ひどい扱いを受けていないことに喜んではいたが、釈然としなかった。


しばらく歩き、ルーナは噂の治療院を見つけた。

なかなか人が並んでいたので、人が少なくなったところでルーナは治療院の中に入った。


「こんにちは。まず、お名前等の記入を致しますので、こちらへお願いします。」


中に入ると、おそらくハーフであろう女性に名前など質問をされ、奥の部屋に入るように言われた。


奥の扉を開け、中に入ると噂通りの子どもがいた。


「こんにちは。治療を致しますので、こちらへお座り下さい。」


子どもなのに、妙に落ち着いた雰囲気のそいつに私は疑惑の目を向けた。


「本当に治せるんだろうな?」


「はい、勿論ですよ!」


そういうと、彼は私に魔法をかけた。

私の体がひかり、怪我が明らかに治っているのがわかった。


「んな!?」


驚いて私は声をあげた。

怪我は完全に治ったのだ。

痺れなど嘘のようになくなり、以前よりも調子がいいほどに治っていた。


少し呆然としていた私だが、彼がかけた声に反応して、彼の首にナイフを当てた。

私が獣人であることが何故かバレたからだ。


「何故分かった?」


それから彼は、受付の奴隷の一人を連れてきて話をしてきた。

私が安易に獣人と人間の平等をほざく彼に色々と指摘をすると、彼はなっとくしつつも、奴隷の彼女と自分の関係性を話してきた。


彼の考えは、人間ではとても珍しく、怪我を治してもらった恩もあり、少し私は彼を信用した。


何より、彼と話をしている時のクロ殿の幸せそうな顔や、彼のクロ殿に対する愛情が伝わってきたからだ。

…途中から二人の世界になっていたので、非常に居心地が悪かったが。


それから私は彼に生き残ってほしいと思い、わざと戦争の情報を流し、情報漏洩を防ぐため彼に魔法をかけ、治療院を後にした。


「彼のような人が、人間の王になれば、人間は変わるのにな。…彼が生まれるのがもっと早ければ、あるいは…。」


私はいつから人間と獣人がこんなに仲が悪くなってしまったのかを、街をふらつきながら考えていた。

結局考えてもわからないので、その日は宿をとり、眠ることにした。


怪我をした時から感じていた苦しみもなく、久々にぐっすりと眠ることが出来た。

彼との出会えたことを心から良かったと思うことが出来た。


「あの少年にまた、会えるといいな。」


私はそう呟きながら、ガルム獣国に…帰れなかった。


「な、なんだ!?この木は?いや、これはなんだ?」


帰り道、巨大な木、いや、壁が道をふさいでいた。

横にいくら歩こうとも途切れず、壁に穴を空けようとしてもびくともしなかった。



「そんな…。なんだこれは。だがまあ、いずれ通れるようになるだろう。」


きっと国か誰かが動いて直ぐに帰れると考えた。

私はその日、諦めて街へ戻り、しばらくはクロム王国の情報収集したりのんびりする事にした。


4日後、商人達がガルム獣国とクロム王国を行き来が可能になったことを聞き付けた私は、その素晴らしく整備された道を歩いていた。


あの壁のところには、大きな穴が空いており、何人かが灯りを持ちながら通っていた。


「誰がこんな穴を。化け物みたいな人もいるんだな。」


自分がびくともしなかった壁を破った人の存在がいることに、世界は広いと思いつつ、その穴へ走った。


「ビタン!」

「…え?」


穴に入ることが出来なかった。

見えない壁に弾かれ、盛大に尻餅を着いてしまった。

頑張ってはみたが、何をしても通れなかった。

そんな私を見た商人が声をかけてきた。


「この穴は何故か入れる人と、入れない人に別れるのさ。入れないなら諦めな。神が作ったと噂されているくらいだからね。」


私は神などと心で笑い、直ぐに通ることが出来ると思い、何度も工夫を重ねたが、全て無意味だった。


フレードの敵意を持った人は通ることが出来ない障壁は、敵意を持った人が敵国へ入らないようにと作ったものだったが、はじめから敵国にいるものも通れないため、敵国に取り残される形になっていたのだ。


「そうだ!穴は無理だが、壁を登って越えればいいんだ!」


途中そう気付いたルーナは、壁を登り始めた。

結果、無理だった。


登っても途中で木がいきなり動いたり、枝がすごい勢いで生えてきたり、うごめく蔦のようなものに叩かれて落とされたりした。


「もう…無理。木が動くのは卑怯よ。」


心が折れるまで試したルーナは街へ戻り、しばらく様子を見ることにした。


フレードは木を登って越えるなどと考えても居なかったが、ドライアドが気をきかせて、上から越えようとする人の対策をしてくれていた。


「しばらく治った体を使ってリハビリを兼ねて、冒険者としてこっちで働きながらしばらく暮らすか。」


そうしてルーナはフロネ街で生活した。

ルーナはフロネ街で暮らすうちに他の冒険者とも関わるようになっていった。





そしてある時、ルーナは一人の男性冒険者と出会った。

ルーナは、いままでの人生で味わったことのない衝撃が全身を駆け抜けた。

ルーナはその冒険者に一目惚れしたのだ。

そして会話を重ねるごとに仲が深まっていった。


途中から、なかなか素直になれずに、その冒険者に冷たく当たってしまったルーナだが、その男性からサプライズでプロポーズを受け、結婚を決意した。


「人間と恋に落ちるなど、考えてもみなかったな。でも、あなたに出会えてよかった。私は今、人生で一番幸せだよ。」

結婚相手に抱き締められながら、ベッドでルーナはそんな事を呟いていた。


ルーナは指揮官として生きることを止め、一人の人間のお嫁さんとして、生きていくことにした。




「あれ?あの人は、前の獣人の患者さんだ。そういえば、噂でフロネ街で旦那さんと暮らすって聞いたな。人間、嫌いじゃ無かったんだな。」


ルーナは国へ指揮官を止める手紙を国へ送り、自分は旦那とこの地で暮らすことに決めた。


結果フレードは、誰も殺さずに大きな戦力を削いでいた。

偶然だが、人間と獣人が仲良くなるための歩みが一歩進んだ。


人間と獣人が仲良くなれる道が出来たと、フレードは喜んでいた。




????

「おや?人間と獣の戦いでも暇潰しに見学する予定じゃったが、この状態はどういうことじゃ?こんなの面白くないではないか。あの壁のせいじゃな?面倒だが妾が動くか。」


そんな仲、怪しい影が一つ、動き出した。

閑話休題っていう日本語は、本編に戻るという時に使う言葉だと、はじめて知りました。

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