表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/37

代償と買い物

俺は今、治療院に来ている。


「ご主人様、ここはどこニャ?」

「看板見て!僕がこれから運営する治療院だよ。」

「ニャニャ!?ご主人様は治療士だったのかニャ。」

「まあ、そのようなものだよ。」


…隣に先ほど購入した彼女を連れて。



遡ること一時間前。


「即金で買います!」


そう言った俺は金貨の入った袋を取り出した。


「ニャニャニャ!?本当に買ってくれるのかニャ。」

「勿論だよ。」

「いきなり決めていただけたので驚きました。では、こちらにサインを。」


この街での奴隷の最低限の生活の保証を契約する書類や、購入の証明書などを書いた。


「では、次に代金のお支払いを。」


…ピンチだ。値段がいくらか聞いていなかった。


「…いくらでしたっけ?」

「そうですね、こちらの奴隷は体も健康的で読み書き計算もある程度できる貴重な人材ですからね。五百万クロムになります。」


五百万クロムだった。

俺は金貨の入った袋を取り出して中を覗く。

金貨の大きさはオリンピックのメダルより少し小さいくらいだ。

それでもなかなか大きいサイズだ。


金貨一枚の値段が十万クロムなので五十枚あればセーフだ。

一枚、二枚と心で数えると金貨はぴったり五十枚あった。

内心ほっとしたが全額なくなるのは困るので交渉に入った。


「どうにかもう少しまけて頂けませんかね?」

「ああ、もちろんいいですよ。ヘルクレードさんの息子さんですし。それに実はこの子は記憶喪失でうろついていたところを保護した奴隷なので、元値はただですから。」


父さんの力でまけてもらえることになった。

さらっと言われたが、彼女が記憶喪失って事実に驚きだ。

あれ?でも、前のご主人様に猫奴隷って呼ばれてたって言っていたが。


「そういって割引いて貰えるとうれしいです。ちょっと、質問ですが、彼女って前まで猫奴隷って呼ばれていたんじゃないんですか?」


「あー、それはつい最近の話ね。一年前に一回俺が保護してから、貴族のお坊っちゃんに一回売ったんだよ。その坊っちゃんに猫奴隷って呼ばれてたんだよ。一ヶ月で返品されたけどね。」


なるほど、一回最近に売られていたのか。

返品されるってなにされたんだろう。


「そうなんですか。一ヶ月で何で返品されたかわかりますか?」

「いやー、それはね、この子は聞かれたことを正直に言う子だからね。坊っちゃんに俺ってかっこいいだろ?って聞かれて、全然かっこよくないニャ、むしろただのデブだニャって言っちゃったんだよ。そしたら、坊っちゃんがこんな嘘つきいらないって返品して来たんだ。」


思った以上に下らない理由だった。

プライド高いやつって自分の非を認めないからね。

でも、まだいい坊っちゃんなのかもしれない、奴隷にそんなこと言われて返品するだけにしたところが。

将来大物になってるかもしれない。


「あ、なるほど、そういう理由なら気が楽なので、よかったです。それで、結局いくらになりますか?」


「そうですね、半額に致しましょう。大サービスです。これからもご贔屓にお願いしますね!」


「わかりました。ありがとうございます。はい、どうぞ金貨二十五枚です。」


俺は半額に内心喜びながら金貨二十五枚を渡した。


「はい、確かに。それでは主従の契約をしますので首輪に血を一滴垂らして下さい。」


そういいながら、針を渡されたので、指先から血を出して彼女の首輪に垂らす。


「忠誠を誓え、アグリメント!」

「ニャァァー!」


おじさんが魔法を発動すると、鉄の首輪に俺の名前が掘られていくのが見えた。

彼女はけっこう嫌がっていたが。


「ふぅ。これで全ての工程が完了です。ありがとうございました。お気をつけてお帰りください。あ、万が一にも主人が死んでしまった場合は自然と魔法は解除されるようにしときましたのでお願いしますね。」


「わかりました。色々とありがとうございます。それじゃ僕についてきて。」


「わ、わかりましたニャ。新しいご主人様。」


こうして、俺は彼女を治療院に連れていったのであった。





猫奴隷視点


「眠いニャ。」


私は猫科の獣人だから一日の半分は寝ていたいニャ。

文句は言いたくなるけど、ご飯をくれるおっちゃんに怒られるのは嫌だから頑張って起きて作業するニャ。


奴隷は日雇いの仕事とか依頼されたり、掃除したり、小物を作ったり仕事が色々あるニャ。

働かざるもの食うべからずニャ!


「よし、皆良く働いているみたいだね。ご飯にするから一人ずつ来なよ。」


「待ってましたニャー!」


楽しみはご飯の時間だニャ。

家にいる仲間の皆と一緒にご飯だニャ。

料理班の仲間とおっちゃんがつくる料理はいつも美味しいニャ。

魚があるとなお嬉しいニャ。


「猫ちゃん、これあげる。」

「にゃんと!ありがとニャ!」

「…うん、じゃあね。」


仲間のリーナがご飯を分けてくれたニャ。

嬉しいニャ。


「皆、聞いてね。明日からタルス、リーナ、アーヤの三人は新しい主人の元にいくことになった。ほら、三人とも皆に何か一言ずつ言いなさい。」


どうやら、三人ご主人様が出来るみたいだニャ。

ご飯分けてくれたリーナも居なくなるみたいだニャ。

私は前のご主人様に嘘つきと言われてすぐに戻ってきたから、役にたてなくて少し悲しかったニャ。

でも、ここに帰ってこれて少しホッとしたニャ。


三人の話が終わった後、リーナが私のところに来たニャ。


「猫ちゃん、ちょっと、相談に乗って貰えるかな?」

「私にかニャ!?まあ、どんとこいニャ。」

「私ね、知ってると思うけど明日から新しいご主人様のところにいくんだ。」

「それは聞いたニャ。何か問題があるのかニャ?」


「…私ね、怖いんだ。ここに来る前に私が逆らえないからって色んな暴力振って、飽きたら私を捨てて。…そんな地獄のような生活私はしたくない。幸せに生きたい。だから、明日から新しいご主人様に尽くさないといけないって考えると不安で眠れないの」


リーナの言いたいことは分かったニャ。

前の生活が辛かったから、そんな生活に戻りたくないって気持ちと共に、今が幸せってことも伝わってきたニャ。

だけど、私には励ますことしか出来ないニャ。


「ご主人様を理解することからはじめて、失礼の無いように過ごして行けば、きっと何かしらの幸せは与えてくれるはずニャ。そう、信じるしかないニャ。諦めずに頑張って欲しいニャ。」


あんまり上手くは励ませれなかったニャ。


「そうだよね、やっぱりそうするしかないよね。私、頑張るよ猫ちゃん。ありがとね。」


リーナは意を決したようだったニャ。

元気に暮らしてくれるといいニャ。

私は前のご主人様にはすぐに返品されたから、良く覚えてないニャ。

その前のご主人様も…。

あれ?全く思い出せない。


「急に頭が、ズキズキするニャ。痛いニャ。」


なぜか、前の前のご主人様が思い出せないニャ。

生まれてから、18年たったけど、そのうちの16年少しが思い出せないニャ。

早く思い出したいニャ。



そんなことを考えながら、数日が過ぎたニャ。

リーナ達が元気にやれているか心配だニャ。

今日もまた、一日が普通に終わっていくかと思ったけれど、今日は違ったニャ。


「猫ちゃん、お客さんがきたからついてきて。もしかしたら猫ちゃんの新しいご主人様になるから。」

「分かったニャ。売れるように頑張るニャ。」

「ははっ。そんなにはりきらなくても大丈夫だよ。」


おっちゃんに着いていくとそこには子どもがいた。

右目を眼帯で隠した、黒っぽい服装の男の子だ。

腰には袋が着いていて歩くとお金の音が聞こえて来るニャ。

間違くお客さんだニャ。


「はじめましてだにゃ。私は前のご主人様に猫奴隷と呼ばれていたにゃ。私を買ってくれるのかにゃ?」


もしかして私を買いたいのかと思って聞いてみたニャ。


「即金で買います。」


まさかの即決だったニャ!

一目見られただけで買われたニャ。

そこからはすごいスピード感で話が纏まっていったので、心の準備が追い付かなかったニャ。


だけど、新しいご主人様の目はとても優しそうだニャ。

今度は失礼の無いようにに頑張るニャ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ