代償と治療院
母さんとの相談が続いた。
「フレちゃん、私、受付やるわ。」
…どうしてこうなった?
遡ること数分前。
「母さん、僕奴隷の人達も助けたい。しっかりと診察してあげたいんだ。」
「…そうね、フレちゃんは優しいからそういうと思っていたわ。何で奴隷なんか助けるんだって言う人は、この街にはいないと思うけど、いずれは出てくると思うの。」
そんなのは分かってる、覚悟の上だ。
一方的な差別などくそ食らえだ。
「大丈夫だよ、母さん。そんな人間に何を言われたって傷つかないし、面倒としか思わないから。」
「もしかしたらね、何かフレちゃんに危害を与えようと考えてくる輩も出てくるかもしれないの。優秀な護衛でも雇っておかないと。」
母さんの心配は嬉しいが、正直、同じ人間にはまける気がしない。
最悪、そういう連中は海に沈めればいい。
「大丈夫だよ、心配しないで母さん。護衛なんて雇ったらお金がかかりすぎちゃうでしょ?」
「で、でも」
「大丈夫、いざとなったら頼るからさ。それまで待ってて。」
いざって時は多分来ないがこう言っておかないといつまでも心配されそうだ。
母さんは少し考えたあと、急に何かを思い付いた。
「あ、そうだ、常に私がそばで守っててあげればいいんだ。」
「どういうこと?」
「フレちゃん、私、受付やるわ。」
思い出した。
こういう流れで冒頭のようになってしまったのだ。
もちろん、お医者さんをやるときに看護師が母親なのは、個人的に嫌なので断ることにした。
「母さん、母さんにはお腹に子どもがいるじゃないか。僕の為、もとい妹か弟の為にこれから生活してほしい。だから、受付は頼まないよ。」
そう、なんと母さんにはお腹に子どもがいるのだ。
いつ作ったのかは生まれてから逆算しないと分からないがいつの間にか妊娠していたのだ。
見た目にはわからないが魔法で分かったそうだ。
妊娠が分かったときは嬉しかった。
「そ、そう?うーん、心配だけどフレちゃんがそういうならお腹の子どもの為に大人しくしておくわよ。」
この世界では、妹が生まれるまでどのくらいの日数がかかるのかは分からないけれど、妊婦なんだからもう少し考えて欲しいと思った。
大切にされているのは伝わってくるからうれしいけどね。
「ああ、そうしてよ、しっかりと雇う人は決めるから、任せて。」
「分かったわ。フレちゃんの好きにしなさい。あ、それならこれあげる。」
母さんが取り出したのは金貨の沢山入った袋だった。
デジャブだ。
俺は父さんと母さんから貰ったお金を元に、準備を始めた。
「さて、やることは三つかな。一つ目は受付の人材探し。二つ目はルール決め。あとは細かい準備かな。」
受付に関しては交代で休ませたり、治療院の掃除のことを考えると三人雇った方がいいかもしれない。
三人か…あ、そうだ。
思い付いた俺は早速行動に移すことにした。
俺が訪れたのは冒険者ギルド。
一人目はここで募集をかけることにした。
「おっ、ヘルクレードさんとこの坊やじゃないか。聞いたぞ、治療院始めるってな。宣伝ならヘルクレードさんが散々してったから大丈夫だぜ。」
ギルドに入った瞬間、マッチョの怖いお兄さんに話しかけられた。
「こんにちは。父がお世話になってます。宣伝以外のようで来たんですよ。まあ、来週治療院オープンしますので、悪いところがあればぜひ来てくださいね。」
「おう、さすが、しっかりしてるな。それじゃあな。」
頭をポンポンされた。
何人かこっちを見ている人がいたので会釈だけして、ギルドの受付嬢の前にきた。
「こんにちは。ご用件はなんですか?」
「二人治療院で働いてくれる人を探しにきました。」
「かしこまりました。では、採用の条件をお伺いします。」
受付嬢は慣れた手付きで紙をかきはじめた。
「二人とも16歳以上から25歳未満の女性で。読み書き計算がある程度できる人で。片方は人間で、片方は半分獣人の人でお願いします。」
年齢を決めたのは幼過ぎても年上過ぎてもいやだったからだ。
半分獣人の子を入れる理由は、患者さんにそういう人が安心してこれるようにするためだ。
人間、半分獣人、獣人と三人の受付にする予定だ。
「かしこまりました。他になにかありますか?」
「うーん、そうだな、あ、奴隷と仲良くなれるっていう人で!」
「わかりました。最後にお名前や給料、採用期間などをお願いします。」
給料は冒険者所得平均の二十五万クロム程度よりも少し低めに二十万程度、または要相談にした。
面接は五日後に治療院で行うことにした。
大まかなことを話してギルドを後にした。
次にやって来たのは、この街の奴隷館だ。
大きな建物の中に奴隷が沢山いるらしい。
扉から入り、辺りをみまわすと人が大きなペットショップのように展示されていた。
「おい、坊主。ここはガキの来るところじゃねーんだ。とっととママのところへ帰りな。ぎゃあ!」
典型的な輩がいたので、雷魔法で痺れさせて放っておいた。
騒ぎを嗅ぎ付けた従業員に、急に倒れたと嘘をついて運んでもらった。
「お騒がせして申し訳ありません。ヘルクレード様の息子様でいらっしゃいますよね?」
「そうです、父さんをご存知なんですか?」
いつの間にか目の前にいた、少し老けているおじさんが声をかけてきた。
父さんを知っているような話し方だったので、少し嬉しくなった。
「昔、私は荒れていましてね。ヘルクレードさんにボコボコにされてから心を入れ換えたのですよ。」
見るからに育ちが良さそうな、紳士的なおじさんなのに、荒れていたそうだ。
更正して奴隷商をやっているみたいだ。
「それで、本日はどのようなご用件で?」
「読み書き、計算のある程度できる奴隷がいたら一人欲しいと思ってね。」
「今は奴隷が段々減ってきててね。更に読み書き計算できる人材なんて、あっ!一人だけいます。お連れしますので座ってお待ち下さい。」
奴隷が減ってきているのか、それは嬉しい。
いや、亡くなって減ったのなら最悪だが。
…一人でも多くの奴隷が生きていてほしい。
そんなことを考えながら座って待っていると、おじさんが一人の女性を連れてきた。
「はじめましてだニャ。私は前のご主人様に猫奴隷と呼ばれていたにゃ。私を買ってくれるのかニャ?」
黒い髪に猫耳、少し褐色の肌、綺麗な黄色に輝く瞳、鋭い八重歯。
「即金で買います。」
一目見た瞬間、俺は彼女を買うことを決めた。
猫耳が好きなんです。
好きになった理由はアニメ「けいおん!」のあずさの猫耳姿を見たときにドキッとしたからです。
「けいおん!」の良さが分かるお方は、今一度アニメを見直してはいかがでしょうか。




